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沖縄地場金融リポート第五弾 本誌編集部特別取材班

「杓子定規の返済義務を課し傷口に塩を摺りこむ非情」

 今、2008年のリーマンショックで金融危機による世界不況に陥った二番底を伺うような構造的不況に陥ろうとしている感がある。ギリシャやスペインなど国家財政破綻危機は継続中だし、欧州の金融機関の経営危機も顕著だ。

 世界が病に侵されたような状態だが、健康を損ねると体の一番弱いところがまずやられるように、弱い地域がまず苦境に立たされるようになる。日本でいえば失業率の一番高い沖縄がその典型だ。

 だが、現状の沖縄の地場金融機関は、企業が求める金融の蛇口を閉めている側面がある。新しく起業したくても融資が受けられないばかりか、「貸しはがし」行為が横行している。これでは、水をかけなくてはならない火事場でガソリンをかけるようなものだ。

一方で系列会社に甘い融資

 今春、改めて延長が決まった金融円滑化法の金融検査マニュアルには、経営に苦しんでいる企業と密に交流、意見交換、相談し、いかに経営を好転させるか、アドバイスしていく事が指南されている。

 ところが、文言をそのまま実行している銀行は少ない。それどころか傷口に塩を摺りこむような地場銀行による非情の仕打ちが横行している。

 那覇市のある老舗企業の社主は、「整理担当と思われるわが社担当の行員の口癖は、『山が大きすぎて前に進まない』『実抜計画(実行可能な抜本的計画)が必要だ』というものだ」と言う。山とは、債務超過、簿外債務、業界の将来性が乏しいことなどを指す。

 そして、その行員は捨て台詞(せりふ)のように、いつもこう言ってプレッシャーを掛けてくると言う。

 「借金を返せ、それが不可能なら、業績が好転しているうちに、会社の売却に踏み切れ。毎年、同じ交渉をするのはもう限界だ。破綻寸前の会社とはお付き合いできない」

 これでは、金融円滑化法が説く経営に苦しんでいる企業の立場に立って、経営改善の相談に乗るよう指導した政府の精神が生きていないどころか、あざ笑っているかのようだ。

 こうした心の伴わない銀行の姿勢に疑問を持つ中小企業経営者は、延長された金融円滑化法が期限を迎える来年4月以降を、戦々恐々として見ている。

 那覇市内のある経営者は「今でも銀行から貸付金が丸裸(担保の保障がない)だ。返済延長の承認には動産担保の差し入れが必要だと言われ、親族や支援者から資金調達するか、M&Aなどの抜本的な再建計画を求められている」とし、銀行への牽制がいくらかきいている金融円滑化法が切れた後は、大手を振るって強硬な取立てや無理やりM&Aに押し込まれていくことは目に見えているとして懸念を抱いているのだ。

 なお銀行が不良債権で危機に陥るケースには、「返済不能」ケースと「流動性の不足」ケースの二通りがある。

 流動性危機の場合、借り手は時間の猶予があれば債務を全額返済できるが、手元に現金がないため差し迫った債務の返済ができない。この場合、繋ぎ資金を貸すか、債務返済の延長で借り手は助かるし、銀行側も企業を生かすことで資金は返ってくるし利息もとれる。

 だが、銀行は、蘇生の希望がある企業にも杓子定規の返済義務を課し、往々にして潰してしまうことがある。

 銀行は系列化にある関連会社には、いろいろ口実を付けて融資をしている。だが、苦しい経営環境の中、融資を必要としている中小企業からは、貸付金の回収を強要しがちだ。

 沖縄の地銀では、「ケガはするな」という言葉が不文律となっている。不良債権になる可能性がある案件は、取り扱わないという意味だ。また「ケガは他行にさせろ」という言葉もある。ババ抜きは他行にさせ、競争相手を弱らせろというのだ。さらに「余計なことはするな」というのも、銀行のカウンターの奥に存在する隠れた言葉だ。顧客に親切心は必要はないというのでは、県外銀行に比較し沖縄地銀で目立つ横柄な態度が改まることは期待できない。

実名報道への要望も

 なお沖縄金融特集は新年1月号は集中取材につき、お休みします。

 ただ、貸しはがし防止の陳情や署名運動も熱を帯びつつある中、見過ごせない苦情や陳情があった場合は、直ちに筆を取り、緊急特集を組む準備はしておりますので、沖縄の金融機関が襟を正すような読者の皆様の積極的な提言や情報提供をお待ちしております。また、たちの悪い金融機関の横暴に対して、読者からは銀行名だけでなく支店、担当者名など実名報道を要請する声が多く寄せられておりますが、公正な立場を堅持する必要があるため、公表に関しては状況を見た上で判断します。

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