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新春対談 オールジャパンで新党結成を

このままでは米中の狭間で 日本は沈没する

国民新党党首 亀井静香氏/元参議院議員 村上正邦氏

 失望された民主党、一方で期待されない自民党。地震、津波、原発の三重苦に苦しむ日本の悲劇は、政治的閉塞状況にあることだ。どんな国難であれ、リーダーがしっかりしていれば克服できる。その政治の舵がとれていない。こうした政治危機を打開するため国民新党党首の亀井静香氏が、オールジャパンでの新党結成に動き出した。果たして日本の政治は変わるのか。亀井氏と元参議院議員の村上正邦氏が対談した。

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亀井氏が画いた油絵をバックに対談する村上正邦氏(左)と亀井静香氏

財務省は奉行ではなく勘定方レベル 亀井

村上 今、民主党はどうしようもない。だからといって自民党も期待されていない。こうした閉塞した政治の状況に風穴をあける必要がある。変革を求め、新党を立ち上げようという亀井さんを支持したい。

 変革というのは、座して訪れるものではない。やはり行動して流れを自分で作らなきゃだめだ。石原都知事ならば、それができると信じていた。変革の旗印を掲げるには、亀井さんの構想は一番いいと思っている。

亀井 これは村上構想でもある。私は野田総理に「日本の総理というだけではない。オバマ大統領があの体たらくだから、世界恐慌に入るかもしれないという状況下で、世界を救えるのはあんたなんだよ」ということを言った。

 「自分では『どじょう』と言っても、あんたは昇り龍になる運命にある。それをやらねばだめだ。だってそれを中国にやらせるわけにはいかん。欧州の経済状況は破滅寸前だ。連鎖が起きて、放置すればひどい状況に陥る」とも付け加えた。

 まあ、そういう時にアジアだ、欧州だとか言わないで、日本が前に出るんだ。そうした場合、手ぶらで前に出るわけにはいかない。日本はそれだけの力があるわけでしょう。力があるのに、財務省に抑えられてしまっていて、自分の力が出せない。私は野田総理に、「あなたは財務省の金庫を持っているのだから、鍵はあんたが持っている。鍵さえ開ければ、中にはうなるほど金がある」と告げた。

 日本には6千兆円の国の資産がある。

村上 借金返済ばかり言ってはだめだ。

亀井 そのとおりだ。1%だって60兆円。もし10%なら5、600兆円の金が使える。

 そんなの増税なんかしなくても作れるわけでしょう。だから私がいっている無利子非課税国債というのは、利息を払わないのだから財政を圧迫しない。そういう形でやれば、これだけで100兆円を超える金が一気に出てくる。

 野田総理にも言っているが、ただ黙って聞いているだけだ。財務省は、そういうことをやれば相続税1兆円以上がなくなると言う。そういう馬鹿なことを言っている。1兆円少々の相続税がなくなったところで、100兆円を超えるただの金の方がよほど助かるのにだ。こんな子供でもわかる話を、彼らは財政規律とか称して、借金がすべて悪いと思っている。

 今、国家は非常時だ。非常時の時には非常時のやり方がある。私は警察にいたけど、緊急事態には緊急事態のやり方がある。そのことを知らないで、平時が如き財政運営をやっているようではどうしようもない。

村上 財務省の建物自体が防壁ですよ。古いお城のような格好をしている。中にいる人たちは、外で何があろうが分からない。

亀井 あれは浮き世と離れている。ただの勘定方であって、奉行ではない。

村上 永田町で、それをぶち破ってくれるのは亀井静香しかいない。大阪でいみじくも橋下さんが、既成政党と明治以来の規制制度、これをぶち壊そうということでやった。結果はやっぱり、拍手喝さいだった。今はそういう時代に来ている。日本も、そういう古色蒼然とした体制をぶち破ってくれる人物を求めている。

 亀井さんは、それに応えてやろうとしている。これを何で政治家が理解しないのか、判断に苦しむ。

亀井 今の政治家は「金のさじ、金のさじ」で、利権漁りのような政治屋ばかりが跋扈するような時代になっている。

──新党立ち上げのほうは、平沼さんが「亀井さんの一人芝居だとか」、大阪も簡単には乗ってこなくて厳しそうですが?

亀井 あくまでオールジャパンでやる。

──ポイントはどこになるのか。

大事な大局を見る直観力 亀井

picture 【プロフィール】かめい しずか
1936年11月1日、広島県庄原生れ。東京大学卒。警察庁に入庁。警察庁退官時の階級は警視正。衆議院議員。運輸大臣、建設大臣、自由民主党政務調査会長、金融・郵政改革担当大臣を歴任。国民新党党首。菅内閣(第2次改造)では内閣総理大臣補佐官(内閣の重要政策全般担当)就任。

亀井 国家の危機を突破するために、やるときは大胆に一気にやる。個々の政策は誰が考えてもなるようになる。今も、申し上げたように財源はいくらでも作り上げることが可能だ。

 わが国の都市を緑あふれる森林にし、森林地帯を工業団地にするんだ。

 つまり、地方に工業地帯をつくる。何もタイに行って洪水の被害を受けることはない。中小企業に思い切って補助金を出す。そして何も地方の人が働き場所がないということがないようにする。

 兼業農家でいいんだ。地理的条件が悪い中山間地域が多くある日本では、大規模農業と言って効率をあげろといっても無理だ。米豪のような大平原があるわけではない。

 またベトナムやタイなどに進出して、安い賃金だとか言ってもいずれ高くなる。これは一時のことで、低賃金が長く続いた中国でも、今では高くなってきた。後進地域だっていずれ賃金は上昇する運命にある。

 だから一部のメリットを目当てにして、中小企業が進出して一時的にはうまくいっても恒久的に進出できるわけではない。これが低賃金を目当てに海外進出する渡り鳥企業の運命だ。

 それを政府が大胆にバックアップする必要がある。今度、5000億ばかり助成金を出すことになったが、そんなちゃちなことではなくて、何兆円もつぎ込めばいい。

 そして人件費が高くてかなわんというなら、それを補助すればいい。

 そういうことをやって、雇用を確保していけば、何も今みたいに、生活保護者をどんどん増やして、失業保険で飯を食う人を増やすことはない。働きながら給料をもらうことをやったほうがよほどいい。今だって年間3兆円ほどの生活保護費が出ている。そういう生活保護や失業保険で食っている人たちを、中小企業がワーカーとして吸収していけば経済的活力を取り戻せる。

 また都市は、大改造をやればいい。具体的には都市の立体化だ。何も鉄道だけでなくて、普通の道路も立体交差にすればいい。そうすれば信号機がいらなくなるし、物流からいろんな面で波及効果は高い。

 そして電線を地中化していく。これに本腰をいれればいい。

 住宅街を立ち退きさせるわけにはいかんから、電柱を地下にするだけで道路はうんと広くなる。それを全国規模でやる。

 これはゼネコンの仕事ではない。中小の零細の仕事になっていく。そういうことで、内需が出てくる。建設業、土建業というのは、裾野が広い。材料屋から流通まで動く。そういう意味で日本経済に動きが出てくる。

 こうした内需が出てくると、デフレが解消する。デフレというのは需要、供給のバランスが崩れているからだ。需要がぐーっと伸びると、自然とデフレは解消していく。

 私が総理に言っているのは、「財務省の理論だ統計数字だと並べられて、つい引き込まれてしまいがちだが、総理! そんな小難しいことはいらない」ということだ。「高き屋に登りて見れば煙立つ民の竈(かまど)はにぎはひにけり」と詠んだ仁徳天皇にしても、そんな調査をしたわけではない。国にたち上るかまどの煙を見て民の暮らしを計り、善政を敷いたのだ。

 江戸時代だって、隣同士でも藩がうまくいっている藩といない藩がある。それは家老の違いだ。家老が経済学者をブレインで置いていたわけではない。優れた家老は、藩内の民の生活ぶりから、経済的な大局を見る直観力と分析力をもって、ちゃんとした財政をやっていた。何も精緻な理論に基づいてやったわけではない。実態を見る直感力があるかどうかが大事となる。

 だからそういう意味で、野田総理をして、ちゃんとした政治をやる力学をつくるしかない。総理候補を結集しようと私が言っているのは、こういうことなんだ。

──その点で、東京、名古屋、大阪とうまく連携できそうですか。

亀井 いくと思います。私は親米だけど、従米ではいけないと常々思っている。先回りして、米国の機嫌を取るようなことをしていたら、日米関係がうまくいかなくなる。

 それなのに日本の保守というのは、米国の機嫌をとって、米国の言うとおりにするのが保守だと思っている。本当は違う。反米じゃいかんが、従米でもいかん。独立した親米でないとだめなんだ。

 対米関係をちゃんとしないと、これは対中外交がやれなくなる。中国というのは、日本が米国のいいなりになっている状況を見たら、日本を独立国家として相手にしなくなる。今、現にそうなっている。だから尖閣列島でも昨年のようなことが起きてしまった。日本に対し敬意を払う、対等に扱ってくるということがなくなってくる。中国とすれば米国だけ見ていればいいわけだから。

 だから基本的に対中外交は、対米外交なんだ。対北朝鮮外交も同じことだ。六者協議で日本というのは存在感がない。だから北朝鮮だって日本を相手にしなくなった。

 これは日本の状況を見ているからだ。米国とも交渉しないといけないけれど、日本ともちゃんと交渉しないといけないという、そういう判断を北朝鮮にもさせないといけない。

 ところが、日本がそれをさせないようなことばかりをやっている。それじゃだめだ。

 そういう意味で、ここでちゃんとやらないと、沖縄の問題でもおかしくなると思う。

──沖縄はどうすればいいのか。

亀井 米国がいうような基地のあり方にする必要はない。米国の極東の軍事戦略には協力しないといけないというのは当然のことだ。日本だけでは、全面的に自分の国を守れないのだから、米国の力を借りているのだから、米軍に対して協力するのは当たり前の話だ。

 だからといって、米国がここに基地が欲しい、あちらにも欲しいといったことを、自由にさせることはない。その地域の人たちの同意と日本国政府としての意思、米国はそうした前提の下に基地を展開していかないと、反米の基地は使えなくなる。

 米国は分かっていないわけではない。ところがさっき言ったように、先回りして、これよろしゅうございますかとやるから、おかしくなる。元来、米国の極東軍事戦略自体が変わってきている。

 かつては仮想敵国はソ連だった。それが中国、北朝鮮に変わってきている。その中で米国がソ連と対峙していた冷戦時代と同じような感覚で、日本の基地を米国が考えていると思ったら大間違いだ。

 新しい時代に合った日本の基地の運営ということを、腹を割って話し合えば、何も普天間問題で辺野古に海上基地を作らないといけないということにはならない。

 あれははっきり言って、日本の国内の利権が絡んでいるだけの話だ。それに米国は妥協した。それだけのことでしかない。

 今、刑務所に入っているけど、この前、守屋武昌元防衛事務次官に面会に行ったが、そういうことなんだ。 

 そんな利権屋にとらわれているようじゃだめだ。それで県民感情を逆なでして、反米感情を盛り上げる必要はない。もっとリーズナブルな解決がある。米国も我慢しなくちゃいけないが、我慢させればいい。ただ別な面で、サービスすればいいだけの話だ。それが外交交渉だ。一方的に向こうのいうメニューをこなすというのは外交交渉でも何でもない。


NOと言える日本 村上

picture 【プロフィール】むらかみ まさくに
1932年8月21日、福岡県嘉穂郡生れ。拓殖大学卒。80年に参議院議員。「タカ派の武闘派」として頭角を現し、影響力を参議院全体に拡大した。86年、中曽根首相主導の衆参ダブル選挙では自民党全国組織副委員長として、中曽根の全国遊説すべてに同行し、首相演説の前座を務めた。労働大臣、自民党参議院幹事長など歴任。

村上 ひとつボタンを掛け違えて、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)問題にも影響し、日本が米国に強いことを言えなくなっている。

 石原慎太郎さんがかつて「NOと言える日本」を書いた。これはどういうことかというと、「NO」というのは何も反米になれということではない。言うべきことをちゃんと言うということだ。

──従属保守ではなくて独立保守ということだが、安全保障の基本構図として中国の核がある中で、米国の核なしには日本は安全を担保できない現実問題があるのでは。

亀井 みんなそう言うが、ある面で架空の幻影におびえながら現実の利益を捨てているんだ。

──中国は核を使わないということか。ブラフでは使うのでは?

亀井 中国も日本に対して核攻撃したら最後だと分かっている。米国が戦後、いろんな戦争をやったが、一切、核を使っていない。あれだけの犠牲を払いながら、本来ならば、あれだけの犠牲を払わないで、軍事的には核でやる方法もあった。それをやらない。やったら最後だと分かっているからだ。使えるのに使わないのが核兵器だ。

──マッカーサーが朝鮮動乱のときに、核を使うよう提言したがトルーマンがこれを拒否した経緯がある。そういう伝統的判断が米国に残っているとしても中国は別ではないのか。

亀井 やろうと思ってもできない。国家としては使えない。核を保有していても、それを行使する場合というのは、まずあり得ない。そういう現実を見据えないのはあほだ。

 あり得ないことを前提にして、現実の外交を構築していくというのは意味がない。あり得る現実を前提にして、外交しなければ無駄な徒労であり、ばかげた話だ。中国だって分かっている。日本と中国でトラブルが起きた場合、日中間のことで米国が核を使いますか。あり得ないことだ。

 こんなことは国家対国家であれば、分かりきっていることだ。そこまで米国が日本の忠実な部下で、番犬みたいな行動を国家として取るはずがない。それを覚悟しないといけない。ただ、米国との関係をよくしていかないといけないが、そうだからといって日本は米国の言いなりになる必要はない。卑屈な態度をとる必要はない。だからといって、どういう対応ができますか。何もできない。軍事占領をやるわけにもいかない。日本は同盟関係を解消しようといいますか。その日本がしょうがないから中国と結ぶとなれば、米国とすれば大変な話になる。こんちくしょうと言っても、米国は少々言うことを聞かないからといって、そういうことはできない。日本列島は米国の極東における軍事戦略上、最前線の基地の島なんだ。日本というのは米国にとってかけがえのない軍事基地だ。そういう基地の島と、彼らは敵対関係になれない。基地を撤収するわけにはいかない。だから基本的な立場においては、日本の要求は聞かざるを得ない。日本人というのは、得てして、そういう大きな構図が見えない。これだけの基地を提供しているのだから、日本はえばってりゃいい。こちらの言うことを聞けと言えばいい。それをよう言い切らん。日米安保を破棄すると言えば、米国は基地を撤収しないといけない。現実問題として、これはできない。外交交渉における基本的なことを忘れてしまっている。


あるべきことをあるべきように 村上

村上 日本の地理とみると、中国とロシアのあるユーラシア大陸に向かって弓のような島になっている。地政学的には、防壁の役目をはたしているのが日本だ。

 亀井静香という人は八方破れで奇想天外の発想をすると思われている。今回の新党結成や政界再編もそうだ。そう取られがちだが、実は理にかなっている。

 亀井さんの部屋には革命家チェ・ゲバラの肖像画がある。亀井さんが尊敬する大塩平八郎にしても、西郷隆盛にしても、彼らに共通しているのは決して天才的な人物ではないということだ。亀井さんも何も革命児じゃない。それは大塩や西郷さんにしてもそうだ。

 あるべきことをあるべきようにしていくという普通の人に過ぎない。そういう見方をしていけば、今日の亀井静香が何をやろうとしているかは私は理解できる気がする。

亀井 私は先回の参議院選挙の出陣の時も、勝ち戦を期待して出陣したわけではない。私は地獄の底で、綿貫さんなどと結党したり、選挙は三回やった。それが全部、連戦連敗だ。総大将の綿貫さんを落として、負けっぱなしだ。先の参議院選挙にしても、選挙戦の火蓋が切られた日、「いざ湊川に出陣だ」と一席ぶったら、下地幹事長が「負け戦をしようという総大将がどこにいる。せめて千早城にこもると言って欲しい」と叱られたが、私はこう答えた。

 「勝てる保障は何もない。だけど、おれたちは商売人じゃない。商売人はもうからんことは手を出したらいかん。当たり前の話だ。

 だが大塩平八郎や西郷南州は勝てると思って挙兵したのか、彼らがあのときに決起しなかったら日本人の大事な魂、一部でも今日まで生きながらえてないんだぞ。今度の選挙では勝てっこない。それでもやるんだ」と語った。

 見事、国民新党が取れたのはゼロ。それでいいと私は思っている。

 だけど、この二年間、わずか6名の国民新党ながら、連立を組んでいる430人の民主党が何をやりましたか。マニフェストだけ作って、実は何もやっていない。

 経済が大変な折、中小企業や零細企業、商店や金繰りに困るサラリーマンもローンが返せない。そんな状況のときに国民新党は、モラトリアム法を通した。あの時は袋叩きになったが、決然として民主党を口説いてやったじゃない。

 あれで多くの人が助かった。だけど、景気を良くしかなったから終局的解決になっていない。

 夫婦別姓と外国人参政権問題にしても、いくら右翼が騒いでも、自民党の中で反対反対と言ってもだめだった。私は毎日にように鳩山首相や小沢さんにも言い続けた。NOと言ったからできなかった。これも選挙やっても負けてばかりの国民新党が連立の中に入って、そういうことをやったから実現できた。これは事実だ。だから何も選挙に勝つということだけが政治じゃない。

 民主党が308議席をとったって何もできない。それじゃだめだ。だが大変な状況の中で、国民新党だけで突撃しようたって土台無理な話で、オールジャパンで日本の政権を取りにいく。

村上 天下を取るというが、今の6議席だけの小さな国民新党を握っているようじゃ天下は取れない。一遍、握ったものを離さないといけない。握れば一点、開けば無窮、手を開かなければ大きなものは取れない。そういう意味で、亀井さんの今回の決断は、自然の理にかなっている。理にかなわないとこをやれば天罰にあう。原理原則主義者はだめだというけれど、その原理原則をわきまえた上でやろうとしている。だから私は支援する。

 このままいったらアメリカ大陸の52番目の州になる。そうなったら「NO」と言えといっても言えない。

亀井 このままだとアメリカ大陸と中国大陸の狭間で日本は沈没してしまう。東北の大震災どころの話ではない。

村上 大東亜戦争でロシアと米国と中国で日本を3分割しようという時代に戻ってしまう。それが今、日本の政治家というのは小さなことばかりにこだわっているばかりだ。財源どうなるの、無駄なもの省けという話になる。

 そんなものは重箱をつつくような話だ。私なんか、政界の中にいたから政治が見えなかった。しかし、政治を離れてみて政治が分かるようになった。何が分かるのか、例えば財源にしても、そこらへんにごろごろしている。

 宗教税なんてそうでしょう。税は国民が公平に負担しないといけない。宗教関係は優遇されて、税金がかからない。創価学会ひとつとってもそうだ。矢野絢也さんの本を読んでみても、宗教法人だけでも通常の税をとれば4兆円にもなる。組合は今、ストライキをやらないが、ストライキをやるためにいまだに給料から天引きしている。

 それを銀行に預けている。それに税をかければいいじゃないですか。

 私は参議院に身をおいていたけれど、今の政治に二院制はいるのか疑問だ。逆に政治の足かせになっている現実がある。政党政治と言いながら、党で縛りを衆参かける。だったら衆参同じことで、参議院の役割はなくなる。参議院を切ってしまえばいい。一院にしていくという抜本改革で大きな財源が確保できる。そうすれば、タバコ税だとか庶民のささやかな楽しみを切る必要もなくなる。

亀井 課税対象と言ったら例えば、大企業の内部留保は3000兆円以上ある。遊んでいる金だ。これを設備投資にも使わない。それから下請けに分けてやるわけでもない。遊ばしているだけだ。これをほっといている。その金を使うには税金でとるか借りるしかない。これで法人税でとられるのがいやなら、貸してということになる。無利子非課税国債ではないが、利息はつかんけど、その金貸せとなる。その代わり、非課税にすればいい。3000兆円のうち1割にしても300兆円が手当てできる。

 そういう広い視点で考えれば、消費税なんて大衆いじめなどしなくても、いくらでも方法はある。

村上 バッジがなくなれば永田町の路傍に捨てられていくのが国会議員の宿命だ。永田町というのは、そうして捨てられた草履をけ上げるのが通常だ。しかし、亀井さんはその草履を拾うだけではなく、木下藤吉郎じゃないが懐であっためる。そういうやさしさがある。

 かつての武士は己を知る主に命を捨ててもいいと思ったが、最近はそういう気持ちだ。おれを知ってくれている人のためには、たとえ縁の下の力持ちでなくても、最近、そういう思いでいる。

 かつて亀井さんは、私にこう言った。「村上さん、俺の背中に乗ってみろ。竜宮城に連れて行くぞ」と言ってくれた。私は自ら竜宮城に行く前に、亀の背中からずるっとこけ、海の藻屑と消えたのだ。

亀井 村上さんというのは大悪党だ。みんなそう思っている。大悪党でないと合点がいかない。地下1000メートルから這い上がってこられて、それは生長の家があったからかも知らん、玉置さんがあったかもしらん。だが村上さんは大悪党であるが故に、単身でぐっとのし上がってきた。私は党の役員をしていたから知っている。 

 何の背景もない。中曽根さんの派閥があるかもしれないが、村上さんを盛り立ててやろうという所じゃない、みんな俺が俺がという所だ。そういう所で、自民党時代はみるみるのうちに政治を完璧に動かした。私はその生き証人だ。そういう人間は、悪党でないとできるわけがない。

村上 悪党は一人でも悪党と言う。今の悪党は小沢一郎だ。

亀井 善人じゃ政治を動かすことも、歴史を動かすこともできない。それでいい。塀の中に入ったのは冤罪ですよ。ところが、村上さんが偉いのは、塀から出てきたら国家に対し、この野郎がと言うのが普通ですよ。それが国家の有り様を見て、知らんぷりができない。この日本をどうにかしようとしている。

村上 もがいてるだけだ。そのもがきの中に救いを求めている。ともかく政治が、今の永田町にはないことだけは分かった。「道心の中に衣食あり。衣食の中に道心なし」だ。

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