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石原都知事は自民復党で政権奪還目指せ

親子鷹で選挙は圧勝できる

日本経営者同友会会長 下地 常雄

 率直に言うと、石原新党の展望は難しい。「立ち上がれ日本」の平沼さんは72歳、国民新党の亀井さんは75歳、東京知事の石原さんは79歳と高齢だ。いずれにしても最後のチャンスだ。それゆえに第3極作りに向けた執念は感じるが、立ちはだかっている壁は高く厚い。

 第3極作りに向けた基本構想は、「大阪維新の会」の大阪と名古屋の河村氏、東京の石原知事などと既成政党との連合だ。だが「大阪維新の会」がフィーバーになっている状態で、橋下さんがあえて自分からトップを降りて、連携することはあり得ない。詰まるところ、石原新党に「大阪維新の会」が参加するシナリオは考えられない。協力はするかもしれないが、「大阪維新の会」は独自に動くことになる。

 トップになるというケースは自民党に石原さんが復党して、総裁に就任するのはもっと収まりがいい。幹事長の伸晃氏と総裁・幹事長を親子鷹でこなせば、次の総選挙で自民党は圧勝だ。

 伸晃氏には自身が自民党総裁という話もあるが、まだ若くこの先、いくらでもチャンスはある。しかも親子鷹で自民党の幹事長として、総裁を支え実績を積んでいけば、次の総裁は必然的に自分だ。チャンス到来の時期はさらに早まる。

 結局、誰がみても、収まりがいいのは石原自民党総裁だ。問題は自民党に、そこまでの度量があるかどうかだ。自民党長老には相当な抵抗があるだろう。

 元自民党の亀井さんや平沼さんが一緒にやろうというのも、そもそも彼らはうまくいっていた関係じゃない。そうした溝を超えて一緒にやろうというのだったら、細事にこだわっている場合じゃない。

 どうせルビコン川を超えるなら、牛に引かれて善光寺じゃないけど、石原さんに引かれて亀井、平沼の自民党復党というシナリオが描ければ、自民党だって歓迎せざるを得ない。

 昔の政治家と今の政治家が違うのは、昔の政治家はどしっとした腹があった。今の人は、すぐばれるような腹芸をする。それが一番の違いだ。しかも、何かびくびくしながら、スキャンダルにおびえ、昔みたいにどーんと腹が据わって懐が深い政治家は、少なくなった。

 とりわけ自民党にリーダーといえるリーダーがいない。すべからく角が取れていて丸いが、小粒でイクラのようだ。何で自民党かというと自民党には現在、親分がいない。自民党には谷垣総裁がいるが、谷垣総裁を親分と思っている人は少ない。だから次の選挙で負けるからと、総裁を代えようとしている。

 まさに石原都知事を担ぎ出して、誰が見ても収まりのいいのが自民党だ。維新の会に石原さんが冠だと違和感がある。

 民主党政権の失敗で、「失望された民主党」だが、一方で「期待されない自民党」でもある。

 こうした政治の閉塞状態がある。しかし、リーダーを代えて石原親子鷹による復権構想というのは現実的だ。自民党が蘇生のパワーを持つためには、死中に活を求める以外にない。

 昨年8月の世論調査では、自衛隊を評価するが82%、ボランティアを評価する73%、消防を評価するが52%、自治体を評価するが42%と高いが、一方で政府を評価すると答えた人はわずか6%、国会を評価するというのは3%と惨憺たるものだった。何が問われたかというと国の信頼が問われた。国の信頼が地に落ちたのだ。それをどうやって回復し蘇生させていくかというのは切実な永田町の課題となっている。

 そもそも政治家の定年制なんておかしい。国民が選ぶのだから90歳のおじいさんであろうと、元気で国民がやってほしいというのであれば、それでもいいはずだ。

 会社でもボードに入れば定年はない。さらにこれから社会は高齢化していく。そうした中で政治家の定年制そのものが、あまり意味を持たない。

 何より指導力とか見識、勇気、こうしたものを長老として若い政治家にいろいろ教える必要がある。そういう環境を作るためにも、政治家の定年制は撤廃したらいい。

 民主党の小沢さんと石原さんを結ぶシナリオを言う人がいるが、石原さんと小沢さんじゃそもそも合わない。ずっと親分できている人が、新しい親分を探して、それを担いでいくというのは、普通じゃやらない。プラスとプラスの反作用がある。

 いずれにしても次の総選挙は、本物のみがクリアできる選挙となる。昔のタレント議員とかではなく、本当に能力があり、国を憂える本物の政治家だけが残る。だって、これだけ5年間で総理が6人も代わって、ぐじゃぐじゃの状態で、地震、津波、原発の三重苦で、国民も政治家というのは大事だとわかってきた。

 新党結成では参加者の基本政治哲学となる「船中八策」が求められているが当然のことだ。基本指針となる政治哲学不在では、欲ボケした単なる野合でしかない。とりわけ新政党に求められるのは、経済と外交、安保だ。

 TPPに加盟するにしても、加盟したらどういう弊害があり、どういういい面があるのか。これを国民にわかりやすく説明する義務がある。ただTPPといっても普通の人はわからない。

 普天間の問題もそうだ。反対派ばかり表に出て、いろいろとりあげられているけど、それと同じだ。

 外交にしても、総理が朝言ったら、晩には変わっているという朝令暮改じゃだめだ。そういう国とはどこもまともに付き合おうとしなくなる。何かある度にぶれるようだと、本音で付き合えない。

 外交関係も馬鹿にされたような状態だ。勉強もしていないし、備えもない政治家が、すぐ底が割れるような人が大臣を務めているようじゃどうしようもない。

 本物の政治家が出てこないといけないのは切実な問題だが、何かあるとマスコミがすぐあげ足をとるというのも問題だ。

 ただ、本当に自分のことは考えずに国のことだけ考えて誠心誠意を尽くせば、道は開けてくるものだ。それを自分の自尊心や名誉欲などを織り交ぜるから、政治が小さくなる。

 昔、田中角栄が大蔵大臣就任の時、愛人の子供が急に病気になったことがあった。そのとき、側近は「先生、今日は病院に行かんでください。スキャンダルになると困るから」と止めに入ったことがある。

 それに対し角栄は「何を言っているんだ。大蔵大臣というのはまた頑張ればなれる。だが、子供に何かあったら自分は生涯、後悔する」と真情を吐露したことがある。マスコミも側にいたが、「これをマスコミが記事にするんだったらしなさい。俺は辞任してでも行く」と凛として出かけて行ったという裏話があるが、結局、この時、一行の記事にもならなかった。

 ジャーナリストも人間の血が流れている。角栄が何の打算もなく、一人の人間としての筋を通したから、これに圧倒されて書く気力がなえたのが実態だ。

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