トップページ >

暴排条例と暴対法改正に異議あり

田原総一朗氏「マスコミがだらしない」
鈴木邦男氏「これは政治の問題。議連立上げを」

参議院議員会館

picture 参議院議員会館での院内集会風景

 「暴排条例と暴対法改正に異議あり」とのテーマで5月31日、参議院議員会館で院内集会がもたれた。司会は東京管理職ユニオンの設楽清嗣氏が務め、労組の出席者が目立った。

 労組関係者が多数参加したのは、いずれわが身にという懸念があるためだ。治安維持法でも、適用範囲は最初の共産党から、最後は国家権力に近かった宗教団体である大本教やキリスト教にまで弾圧を受けるようになって拡大され、日本社会全体が息苦しくなっていった経緯がある。

 さらに労組の団体交渉にも最近、天下りの警察が出てきて介入するようになっている。また、企業取引の中に警察が土足で踏み込んで、あれが悪いこれが悪いと介入してくる。

 労組が一歩、前に出たのはやがて危険な時代がくるというのではなく、すでに始まっているという時代認識があるためだ。

 1992年の暴対法施行のときに警察官僚が手にしたのは、パチンコの景品交換の利権だった。ヤクザがグレーゾーンでやっていたのを合法化して、その代わりプリペイドカードに替えていった。その運営会社の大半は警察官僚だった。総会屋を締め出す商法改正では、上場会社の総務に大量の警察官が天下りした。

 今回の暴排条例はヤクザを対象としていない。むしろ一般の人が対象だ。特に建築関係や役所の仕事をもらっている会社は、「勧告を受けて、公表されればそれで指名が停止される」とし、警察の顔色をうかがわざるを得なくなる。これでまた警察官の天下り先が増えることになる。

 同集会の口火を切ったのは、ジャーナリストの田原総一朗氏だった。

picture 田原総一朗氏

 田原氏は「マスコミがだらしなさ過ぎる。朝まで生テレビで、暴力団排除条例を取り上げた。ただ暴力団側の出演は断固、局が阻止した。ところが、日本のテレビ局で暴力団排除条例をやったところは全くなかった。これに対する反応もなかった。どこも、まともに取り組んでいない。新聞でも全くない。これほどマスコミはだらしない。何でこうなんだと思う。これは怒りであり同時に、危機感でもある」とジャーナリズムがこの問題に頬かむりしている現状を突き上げた。

 そして同じジャーナリストの青木理氏は「法の下の平等に例外を作ってはまずい。暴力団排除条例第3条に基本理念が書かれている。そこには、暴力団を恐れないこと、それに暴力団を利用しないこと、そして暴力団と交際しないことと書いてある。これは母親の小言みたいで、だれそれと付きあうなと言っているようなものだ。余計なお世話以外の何ものでもない。

 僕はヤクザという組織は肯定してないどころかむしろ嫌いだが、誰と付き合い、付き合わないかというのは僕が決めることで、警察ごときに誰それと付きあうなと言われたくはない」と述べた。

 さらに青木氏は「もうひとつ、同15条には都民の責務として『暴力団排除に取り組むこと』と明記されている。暴力団と交際しないということが都民の責務になっている」と問題提起した上で「暴力団排除に名を借りた、警察の天下り先量産には反対だ」とした。

 そして青木氏は「最近、警察が振りまいている『安心、安全』というデマゴーグが拡散している。ただ基本的に、日本社会の治安は悪化していない。ここ20年間ぐらい、年間の殺人事件件数も1000件ぐらいのままずっと横ばいで、全く治安が悪化していないにも関わらず、警察利権が異様な形で拡大している。

 今、検察が批判されている。しかし、これまで警察をチェックしていた検察がたたかれて弱くなると、警察がのさばりかねない。権力が権力をチェックする格好だが、一方が弱り一方が肥大化するのでは懸念している側面もある」と警察権力の肥大化に懸念を示した。

 そして一水会顧問の鈴木邦男氏は「個人的にはヤクザに脅されたこともあるが、これは治安維持法と同じで、次には右翼、左翼にくる。

picture 鈴木邦男氏

 それで右翼と左翼がヤクザと一緒になって暴力団排除条例反対の集会をもち、デモをやったことがある。ただ新聞にはこれを『漫画だ』と書かれたが、少なくとも三派連合の中で、いろんな討論ができた。

 ヤクザは自分たちは暴力団ではないと言う。あくまで日本の義を守るために、弱きを助け強きをくじくためにやっているんだと言う。ただ、そんな風にはみえない。だったらヤクザという名前を変えて、名前を市民運動に変えたらいいとその時、言った。

 だからこれは、いいチャンスだ。これを契機にヤクザも変わらないといけない。任侠道の道を歩み、一般市民には迷惑をかけないというなら、それは第三者機関をつくって、ヤクザにいろいろ文句を言えるようにしたらいい」と述べた。

 こうした院内集会の空気を変えたのが、フロアから発言した元「参議院の法王」村上正邦氏だった。

 村上氏は「三階から目薬を点すようなことをしても仕方がない。隔靴掻痒以外の何ものでもない」と前置きした上で、「単刀直入に申し上げれば、議連を立ち上げてもらいたい。これは政治の問題だからだ。

 昔なら、議員にこれやっとけと言えば出来たが、今は皆様にお願いしたい。権力というのは、国民を圧迫していいのですか。だらしないのは国会議員だ。ここは何としても、国会議員連盟を決議してもらいたい」と議連立ち上げを要請した。

この記事のトップへ戻る