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維新最年少衆院議員 丸山穂高氏に聞く

我が国が高めるべきインテリジェンス力

 現在の国会議員は、80歳の最長老議員の石原慎太郎氏から29歳の最年少議員まで幅が広い。3人いる29歳の最年少議員の一人である丸山穂高衆議院議員に、政治家を目指した生い立ちから、わが国が抱えている安全保障の課題まで聞いた。丸山氏の持論は、国際的緊張が高まる中、インテリジェンス能力を高めないと危機管理は難しくなる、というものだ。大阪弁がぽんぽん飛び出し、本音で語る丸山氏の将来が楽しみだ。


──特に政治家を志した背景は。

 関西の出身で阪神大震災が起きたのが小学校5年生の時だった。当時、私立高校の教員だった父に連れられてボランティアという形で震災現場に入ったが、そこで聞いた政治や行政に対する不信感と不満の声がきっかけ。ちょうど、村山内閣の震災対応の不備や大蔵省役人の汚職だとかがあった時期で、それを子供ながらに聞いて、何かおかしいのじゃないか、違うのじゃないかと思うところがあった。おかしいなら何がおかしくてどう変えれば良いのかを知る必要がある。そして何よりそれを変えるように行動しなければ意味が無い。幼いながらにそう思って、そこで政治や行政に興味を持つようになった。小学校ではよく「将来、なりたいものは何か」という質問が出るが、それで私は「政治家になりたい」と答えるようになった。

──それこそ筋金入りだ。昔は「将来は博士か大臣か」と言われたものだが、今時、珍しい。

 今は「なりたくない職業ランキング」の方に政治家が入っているなど、政治家やリーダーを目指す人が少ない。目指そうという人がそもそも少なくなっているし、出ても叩かれてしまう。本来は国のリーダーがしっかりしていて、決断できてなおかつ責任感があるリーダーがいないといけない。

──理想の政治家は?

 吉田茂と岸信介が好きだ。両者の共通項の一つは役所出身だということ。岸氏は商工省出身だし吉田氏は外務省だった。私は経済産業省にいたので、そういうシンパシーがあるのかもしれないけれど、もう一つの共通項は、吉田ドクトリンや日米安保体制といった戦後の政治の形を決めた「決断できる政治家」像であるということだ。彼らの業績についても、その善し悪しはいろんな説があるが、「責任をもって決断した政治家」だと思っている。「決断できる政治家」が理想の政治家であり、尊敬する政治家は誰かといわれたら、躊躇(ちゅうちょ)なくこの2人となる。

──中国問題だが、日本はどう対処すべきなのか?

 中国というのは恐ろしいほどしたたかな国だ。日本はしたたかさが弱いと思う。特に軍事力という面で、中国がかなりのスピード感で台頭してきていて、現に尖閣で日本は脅かされている。

 中国の防衛関係文書を読んでいると明確に、いわゆる「列島線」を意識している。日本列島を含んだ第一列島線、第二列島線と、その先にあるアメリカで見ているので、軍事的に大きなものではないにしても、いずれにしろ衝突、もしくは対立が生じるのは地政学的必然だと思う。

 その意味で、日米同盟の強化という形で対応していくということが重要になってくると同時に、日本独自の軍事力をある程度、上げていく必要がある。

 さらにもう一つ、キーポイントとなるのが情報戦だ。世界大戦もそうだったが、今はもっと進化した情報戦のなかで、日本が打ち勝てる力を強めていく必要性を強く感じる。防御面のカウンターインテリジェンスを見ても、日本の場合、とてつもなく脇が甘い。「戦わずして勝つ」という孫子の兵法じゃないけれど、情報戦は極めて重要であり、インテリジェンス能力を高めるため、政治が主導して資金も投入し人材も育てていく必要性を感じる。

──インテリジェンス問題だが、情報戦でポイントとなるところはどこなのか。

 第4の戦場といわれるサイバー空間や宇宙といった、視野を広げた安全保障体制を組まないと難しいような気がするが。情報戦は2つの切り口があると思う。ひとつはテクニカルな技術力の問題と、もう一つは対人関係だ。

 まず技術力だが、日本は、これだけの技術力を持っていながら、軍事衛星もようやく今、打ち上げがそろって、地球上で一日、一箇所は写真が撮れるといった状況のレベルでしかない。まだまだ世界的なトップレベルの基準からすれば、遅れをとっている。

 そういった意味で、ご指摘のサイバー空間の防衛問題も含め、テクニカルな防衛力は上げていく必要がある。

 一方で外交上、最重要な機密情報というのはテクニカルな部分だけでなく、対人的な関係で重要な情報を入手してくるところが多い。そういった対人人脈、政治家もそうだが、それだけでなく、いわば諜報員の育成や増強がおそらく今後、より重要性を増すことになるだろう。

 日本には内調があるけれども他国からみれば、予算も人員もしれており、対人的な情報収集力も増強していく必要がある。そうしない限り、日本は国益を左右する大事な情報をとって来られないままだ。

──積極的な対人情報収集力強化の意義は分かるが、一方で外国からくるスパイを防止する機能は、日本は極めて脆弱だ。

 その通りだ。先日も、中国人女性と恋愛関係に陥った米軍将校の問題が出てきているが、昨今はそういった対策への意識は高まっており、それに対する備えを講じる必要がある。しかし、こうしたことを改めて意識するようなシステムや研修といったものが現在、明示的にあるわけではない。その意味でも、機密をもっている中枢の公務員に対する意識の高揚なり、カウンターインテリジェスをシステム化していくことが必要不可欠になっている。

──中国に対しては、どういう体制で臨むべきか。

 本当は対中包囲網じゃないが、ある程度、米国以外の仲間を作っていく必要がある。世界に目を向けると、経済的な利益から中国との関係を強めている側面はあると思うが、一方で東南アジアのフィリピンやベトナムなど、南沙諸島や西沙諸島の問題などで中国の領土的野心に対し警戒感をもっている国々とも上手く連携していかないといけない。今は包囲網も緩く、包囲網というよりは逆に、すでに中国に突破、包囲されつつあるようにさえ感じる。

──海外はあちこち行ったのか。

 旅をするのが好きで、また松下政経塾でも、台湾とかベトナムなど海外の多くの国々に行かせていただいた。やはり現地に行くと、中国には複雑な気持ちを持っていることが分かる。中国の経済的・軍事的台頭は無視できないけれども、一方で、本当に信用できる国なのかという警戒感を持っている。その部分は、日本とかなり共有できる部分だ。

──維新の会は、参議院選はどういうふうに戦っていくのか?

 維新の会は、地方から日本を変えていく。各地方で日本を変えていくリーダーを出していくというのが維新の基本方針だ。そのため、道州制も踏まえた上で、地域の統治構造自体を変えていこうとしている。それを実現するには、参議院でもある程度の影響力を発揮できる議席数が不可欠となっている。

 どう選挙を戦うのかという点に関しては、参院選で1人区というと、今の自民党パワーを考慮すると、いささか厳しい状況でもある。複数人区中心に、取れるところをしっかり取っていくことになるだろう。国民への訴え方という点に関しては、自民党が改革を進めているので、同意できるところでは同意し、是々非々で対処しながら、自民党が弱いところを追求していく必要がある。

 とりわけ、地方分権だとか経済成長・規制改革に関わってくるところがポイントとなる。いわゆる3本の矢の「アベノミクス」は、1本目の金融政策、2本目の補正予算を含めた大幅な財政政策でおそらく参院選までの、もしくは今年一杯ぐらいまでの景気のある程度の良い数字は出てくるかもしれない。だが、息の長い本当の意味での日本経済の成長や復活は、3本目の規制緩和をどう進めるかが、民間の活力を引き出す決め手となる。

 しかし、それを進める自民党には後ろにどうしても業界団体などのしがらみがある。参院選までも、与党の動きをきちんとチェックしていきながら、果たして日本の活力を取り戻すのに必要な規制緩和ができるのかというところに切り込んでいかないといけない。維新の会の役割は、そこにあると私は思っている。参議院選は、そこが大きな争点になるだろう。

──そうはいっても小泉改革での規制緩和は、二面性があった。

 その通りだ。何でもかでも規制緩和すればいいという話ではない。小泉政権では、格差社会という言葉が生み出されたように、やり過ぎた感もあったように思う。そこをちゃんと見極めることが重要だ。

 役所にいて思ったのだが、霞ヶ関は何か事故や問題が生じると批判されるので、多め多めに規制を決めておこうとする保身の傾向がある。また、あらかじめルールを定めておいて叩かれた時、これはこういうルールに基づいて、さらにこういう専門家に聞いてという弁明を用意しているきらいがある。

 今の世界情勢や日本の産業構造を見た時、若い人がどんどん新しいことにチャレンジできるようにし、民間企業がダイナミックに出ていけるようなところがないと、日本の未来がなくなってしまうのではないかと危惧している。要はバランスだ。行き過ぎた規制も放縦をもたらすような過剰な自由もダメだ。

 そのバランスの取り方が肝心なところだが、今のアメリカや中国もそうだし、シンガポールだとか北欧とか、新しい産業を起こしていこうという底辺からの活力を活かしていくところと比べると、日本はどんどん内向きになっているのではないかと危惧している。

──原発問題では国内が割れている。

 端的に言うと、いますぐに原発を止めることは不可能だ。エネルギーは、急に構造を変えるのは難しい。今すぐ、止めろとおっしゃる方もいるが、現実的に不可能だ。ただ世論を含め、時代の流れを考慮すると、3・11が日本の構造を変えていくキーポイントになると思う。

 そういった意味で、原子力依存を減らしていく方向にはなるだろう。何で原発の穴を埋めるのかとなると、環境問題を考慮すれば火力では難しく、新エネルギーを開発していかざるを得ないだろう。そこに資金を入れて、開発のスピードをあげていく必要がある。

──維新の会もそういうスタンスなのか。

 維新の会は、そういう方向だ。例えば、核融合も夢物語のように思われているが、技術力が上がれば、夢ではなくなる。そうすれば、人類が太陽を自ら作り出すことになる。なぜ、米国の軍事技術が伸びているかというと、良くも悪くも実践があるからだ。わが国も研究開発の場は失ってはいけない。それをどう維持発展させるかがひとつの課題となる。

──大阪は日本を変えられるのか。

 大阪は昔から反骨精神の強い町だ。それが今これほど維新の会が伸びてきた背景でもあると思う。大阪の府民性というか土地柄として、判官びいきだとか反体制という精神がある中で、今、東京にばかり一極集中している現状があることに対する懸念が強い。大阪の企業も東京に本社を移している。

 その中で橋下さんが登場したということだが。もちろん、その登場に対し最初は疑問の声もあった。弁護士でテレビに出てくるタレントで果たして本当にいけるのか、という率直な疑問だ。しかし、橋下さんは「日本は東京一極だけやあかん。東京と大阪をダブルエンジンで持っていく。これを日本の底上げパワーにする」と言って、大阪のマインドをがっちり捉えたということだと思う。

 ただ改革を成し遂げようと思ったら、そこから一皮むけないといけない。今は、大阪カラーから抜け出してあらゆる地方の代表になれるのか、その先に日本全体の代表になれるかが、改革を成し遂げられるのかの勝負どころだと思う。国民の信頼感をどう熟成していけるかが、その試金石になるのではないか。

──橋下さん自身が国会議員になる気はないというのは致命的かなと思うが。

 今はそうかもしれないが、時間の問題だろう。特に今は大阪都構想を抱えていて、それが一朝一夕にできるものではなくて、段階を踏まないといけない。ただ、構想の実現の目処が見えたとき、あるいは完成した時、次のステップに入ると思う。地方分権を進めるのは、国政に駒を進める必要がある。それは明確に維新の会みんなが共有している意識だが、それがどのタイミングかというと、まだ時間がかかる。

──それが見えた段階で、橋下さんは国政に出てくるということか。

 そういうことだ。十分に可能性はある。

──これまで遭遇した人生の危機というのはあるか。

 実は片耳が不自由で難聴を患っている。25歳のとき一時、突然両耳が聞こえなくなった。歌手の浜崎あゆみさんも、原因が不明で突然、耳が聞こえなくなる突発性難聴にかかったそうだが、それと同じ突発性難聴だった。

 さすがに、その時は「お先真っ暗」だと感じたが、ただ、幸いなことに片方の耳はすぐに戻ったので日常生活には何とか不自由はしない。しかしながら、左耳の聴力は戻らなかったので、未だに片耳は常に耳鳴りがして、かなり大きな音が聞こえるのみだ。

──不安を感じる?

 そういう経験も、自分の糧になるものだと思っている。人生山あり谷ありで、人間、谷の時にどういう行動をとるかが重要だ。

──どう克服されたのか。

 もしかしたらまた、聴力が戻るかもしれないと希望を持ちつつも、聞こえないものは仕方ない。逆に「聞こえないから、きちんと人の話を聞け」との自分に与えられたメッセージだと受け止めた。それまでの自分は、お恥ずかしい話、政治家によくある自分の意見を話したがるタイプで、聞いてくれ、聞いてくれということはあっても、人の話に耳を傾けるのは苦手だったように思う。それをきちんと自分のなかで受け止められるようになったことが大きいのではないか。

 聾唖の聾の字は、「龍の耳」と書く。お聞きした話だと、龍は耳が聞こえないという。下界のくだらない話は聞こえないけど、人の心や、逆に聞こえないからこそあらゆるものを見通せるのが龍だということだ。俗世間の話は聞こえなくても、人の心の良い部分を見、時代のメッセージを受けとめられるようになれば最高だと思う。

 教育も、安倍内閣の目玉だが、現代こそ人に対する思いやりだとか、内的な道徳だとか重要になってくる。そういう教育なしに、ただ良い大学に行けだとか、ただ良い会社に就職しろというのはもはや限界があるのではないか。

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