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TPP交渉の是非、国益守り抜く覚悟必要に

 安倍晋三首相は3月15日、環太平洋連携協定(TPP)交渉への参加を表明した。

 日本の交渉参加は、米議会の承認手続きに90日程度かかるため、早くても7月以降になる見通しだ。

 政府の試算によると、TPP参加で日本の実質GDPは全体として3・2兆円(0・66%)増加する。

 一方、コメなどの関税が即時に撤廃された場合、安価な輸入農産物の流入で打撃を受け、その損失は3兆円に上る。このため、農家は強く反発している。

 自民党は昨年の衆院選公約で「聖域なき関税撤廃を前提にする限り交渉参加に反対する」としている。

 ただアメリカもずるいところがあり、自国に有利なもの不利なものをきっちり使い分けて自国の守るべきものはちゃんと守っている。

 だが、日本は資源がなく貿易で成り立っている国柄だ。だから日本だけ入らずにいるより、早く入って有利な条件をつけるほうがいいのも事実だ。

 何より原則10年以内とされる関税撤廃期間の延長や、撤廃対象からの除外を求める駆け引きはこれからだ。日本が「聖域」の確保に向け、いかに挽回するかが課題となる。

 なお安倍首相は「経済的な相互依存関係を深めていくことは、わが国の安全保障にとっても、またアジア太平洋地域の安定にも大きく寄与する」と指摘した。TPPは、GDPで日本を追い抜き世界第二位に浮上し、さらに空母やステルス機、軍事衛星など軍事的にも台頭著しい富強国家・中国に対する安全保障の側面もある。

 特に中国は尖閣諸島の領有権を主張し、中国公船が周辺の領海侵犯を繰り返している。さらに中国は、南シナ海の南沙諸島や西沙諸島でフィリピンやベトナムとの軍事衝突もいとわず、自国の領海だと力で押している。そうした意味でも、民主主義や基本的人権などの価値観を共有する参加国との連携が、中国を牽制する上で重要となってくる。

 自由貿易協定交渉ではASEAN(東南アジア諸国連合)+3(日中韓)とか、ASEAN+6(日中韓豪印、ニュージランド)といった枠組みも存在するが、これだと中国が盟主国に納まるシナリオが濃厚となる懸念ある。このため、中国の平和的台頭を促す意味からも、日本のTPP参加が望ましいとの見解もある。

 だが、民主党がTPP参加に踏み切れなかった理由は、米国から保険や自動車の分野であまりに不公平な要求を突き付けられたからだともされる。その意味では、TPP参加による国民生活への影響に不安が残る。さらに、TPP参加が国民皆保険制度の崩壊につながるとの懸念も示されている。

 関税交渉では、各国とも国内産業への打撃を避けたい重要品目を抱えているのが現状だ。

 その中で、安倍政権には国益を守り抜く覚悟と粘り腰の交渉力が求められる。

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