トップページ >

今月の永田町

参院選公約づくりでゴタゴタ、会期延長なく閉幕へ

 終盤国会は、7月21日投開票の参院選対策のモードに入っている。6月26日が会期末だが、与党側には会期を延長してでも成立させたい法案はなく、野党側も何が何でも反対する対決法案がない。そのため、各党は参院選公約づくりに腐心しているが、特に参院第1党、同2党の民主、自民両党は党内の見解をまとめきれずにゴタゴタを露呈している。


 平成25年度予算が成立した後の終盤国会の重要懸案は、衆院小選挙区定数の「0増5減」を実現する区割り法案(公職選挙法改正案)や自衛隊法改正案などだ。

 いわゆる「0増5減」案は4月23日に衆院を通過して以来、1カ月以上も参院で棚ざらし状態が続いているが、それでも与党は余裕だ。参院で審議入りしなくても憲法の規定により衆院通過から60日過ぎれば「みなし否決」となるため、6月22日以降に衆院で再可決できる。

 一方、民主党などの野党は、「0増5減」案が早々に成立してしまうと、1カ月の周知期間を経て解散・総選挙が可能となるため衆参同日選挙に持ち込まれることを非常に警戒している。「参院選が7月4日公示となれば、6月4日まで成立させなければ衆院解散、つまり衆参同日選を回避できるので、アレコレ言い掛かりを付けて引き延ばしを図っているのだ」と自民党幹部は指摘する。

 自衛隊法改正案についても、野党側の不正常な審議運営などの妨害があるため、与党側は無理をせずに継続審議にする方針だ。つまり、国会運営では無理をせずに参院選に突入しようと考えている。それ故、与野党対決のエネルギーは参院選対策に向けられていると言っていいだろう。そうした中、民主党は、自民党や日本維新の会が参院選の主要な争点として憲法改正を据えようとしていることに強い危機感を抱き、論戦になった場合にどう対処するかの党内論議に多くの時間を割いている。一度は、改憲案を条文で示すことを検討したが、護憲勢力の反対で見送られた。

 ところが、5月10日の全国幹事長・選挙責任者会議で「護憲のイメージでは戦えない」といった声が相次ぎ、改憲案を逐条で示す案が再浮上しているのだ。

 「民主党は、8年前の2005年に『憲法提言』を公表し、国連の多国籍軍や国連平和維持活動(PKO)への自衛隊の参加を明文化することなどの見解を明らかにしたが、その後、改憲案作成に向けた動きはない。輿石東参院議員会長も『憲法問題が参院選の争点の一つになるだろう』と認めているのだから、自民党と論戦できるための逐条案をつくる声が強まっている」(全国紙政治部デスク)というわけだ。

 それだけではない。細野豪志幹事長による集団的自衛権の限定容認発言を機に、「憲法に自衛権を盛り込み、集団的自衛権を一部認めること」や、「知る権利」、「知的財産権」などを盛り込むべしとの案も出ている。その一方で、「条文化はやめて、『憲法提言』の解説書ぐらいは書かざるを得ないのではないか」との見方や、護憲を貫くべしといった声が混在している。

 現在は党憲法調査会で議論をしている段階だが、深入りを避けて統一見解を出せない可能性も否定できず、結局は「憲法を活かし、国民主権・基本的人権の尊重・平和主義を徹底」するといった昨年12月の衆院選公約に回帰することが考えられる。

 一方の自民党。憲法改正の発議を可能にする衆参国会議員の「3分の2以上の賛成」が必要という憲法96条を、「過半数の賛成」に緩和する96 条改正案を先行処理することを公約に掲げることを決めているが、日本維新の会の失速により与党公明党の出方が大きく影響する可能性が強まっている。

 そのため、安倍首相は「憲法改正、96条の改正については、まだ十分に国民的議論が深まっているとは言えない。やはり憲法改正なので、十分な議論が必要だろうなと思うし、友党である公明党の皆さんとも、丁寧に議論していきたいと思う」とトーンを落とし始めた。その上で首相は「国民投票法の宿題をやる」とし、18歳以上が投票できる国民投票と民法や公職選挙法との整合性をつける作業などを先行させる必要性を指摘した。

 環太平洋連携協定(TPP)交渉や沖縄普天間基地移転など地域に直結する「地域版公約」づくりでは、党中央に対する地方の異論が噴出している。それが露呈したのが、5月22日に党本部で開催された全国政調会長会議だ。

 高市早苗政調会長は「参院選で勝ち抜いて初めて、日本を取り戻すことができる。まず真っ先に全国の政調会長からご意見を頂きたい」と会議の冒頭、こう強調した。全体的な雰囲気としては、「アベノミクス」の奏功による円安・株高の経済効果を歓迎するムードに包まれたが、個別政策では注文が相次いだ。例えば、TPP交渉参加問題だ。

 北海道、山梨、高知の道県連の代表から「本当に重要5品目などの聖域が守れるのか」と疑問が出され、沖縄県連は普天間基地の「県外移設」方針を改めて表明した。地域版公約にも明記することになれば、党本部の方針とは異なることになり「バラバラ感では民主党と同じだと批判される」(党幹部)との懸念も出ている。

 両党とも、公約を作成して一体感を全国的に醸成するのは多難なようだ。

この記事のトップへ戻る