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オリンピック組織委トップは石原慎太郎氏こそふさわしい

日本経営者同友会会長 下地常雄

 年末恒例の10大ニュースは各紙とも「2020年夏季五輪・パラリンピックの開催地が東京に決定」をトップにもってきた。

 アジアでは初となる夏季五輪2回開催を実現したのだから、昨年の国内トップニュースとしての扱いは当然の事柄だ。

 6年後に迫ったその東京オリンピック・パラリンピック開催に向けてJOC(日本オリンピック委員会)と東京都は、1月中にも組織委員会を発足させる方針だ。2020年の東京オリンピックとパラリンピックを運営する組織委員会は、招致決定から5ケ月となる来月7日までに発足することがIOC(国際オリンピック委員会)との取り決めで決められている。

 注目されるのは東京オリンピック組織委員会トップの人事だ。

 先の東京オリンピックでの組織委員会会長は、安川電機社長であった安川第五郎氏が選出された。今回もトップは財界からという基本方針がつぶやかれてはいるものの、選考は難航しており、与党内には(公益財団法人)日本体育協会名誉会長の森喜朗元首相を推す声も挙がっている。

 だが、本筋からすれば東京オリンピック組織委員会の会長職は、世界の壁に阻まれながらも起き上がりこぼしのように、気を取り直して当初の目標に向かって再起していった不屈の魂を見せて闘いを始めた石原慎太郎氏こそがふさわしい。

 何より昨年のIOC総会でのプレゼンテーションで大きな力を発揮したのは、滝川クリステルさんの「おもてなし」精神だった。その「おもてなし」は昨年の流行語大賞をも受賞した。

 だが、「おもてなし」を言うなら、そもそも道なきところに道をつけていった石原慎太郎前都知事の決断とその労に報わないというのは筋が通らない。

 とりわけ世界情勢が未だ混沌としている中、6年後の東京オリンピックを成功させるためには、それなりの腹がある人物でなければならない。ただ祭り上げられて椅子に座っているだけの人物ではなく、逆風をも利用して前に進める手腕と力量が問われるポストだからだ。

 組織というのは、トップの資質如何でがらりと様相を変える。愚鈍なトップでは、リスクの沼に足をとられて身動きがとれなくなったりしがちだ。それが優れたトップだと、マイナスの逆境にあってもプラスに転化する能力を発揮することも可能だ。

 福岡県立中学修猷館に学び、同期に緒方竹虎、一年先輩に中野正剛がいた安川は、在学中に玄洋社の明道館において柔道を学んだスポーツマンだ。石原慎太郎氏も何度ものヨットレースに挑んだスポーツマンでもある。

 いずれにせよ、2月7日を期限とした組織委員会立ち上げによって、東京オリンピックの基本コンセプトの策定や必要な資金調達などが具体的に進められることになる。

 同時に、今年は施設整備もスタートする。メインスタジアムとなる国立競技場を改築するため、7月から現在の建物の解体工事が始まる。国立競技場は収容人数を5万4000人から8万人に増やし、開閉式の屋根が設置される計画だ。周辺整備も含めたトータルコストは1852億円で改築され、2019年3月の完成を目指す。

 だが、外的インフラ以上に内的なモチベーションこそが肝心だ。

 わが国の「おもてなし」精神や「和」の文化をどう形に表し、世界へのメッセージとするのか、それこそが獲得金メダル数を越えたテーマで、東京オリンピック組織委員会トップの最も力量が発揮されるポイントとなろう。

 そのトップに、私は石原慎太郎氏を推したい。

 石原氏が東京オリンピック組織委員会の会長に就任すると、反日色を濃厚にしている中国や韓国からの嫌がらせに遭遇するリスクを語る人がいるが、中国嫌いの石原氏ながら北京オリンピックの開会式の招待状を受け取り参加している。石原氏は凝り固まった教条主義者ではなく、柔軟な政治家だ。政治家としても文化人としても、その集大成として東京オリンピック組織委員会の会長職は、彼にとりふさわしい花道だ。

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