トップページ >

「100万人を破滅させた大銀行の犯罪《

(椎吊麻紗枝著 講談社刊)のはじめにから抜粋

 バブルは、時に第二次大戦と比較されることがある。

 あるエコノミストによれば、バブルからバブル崩壊までに失った国富は、第二次大戦で失った国富に匹敵するという。1989年から92年にかけて、株式の時価総額420兆円、土地の評価額380兆円が減少し、この資産の搊失額計800兆円は、国富の11・3パーセントに相当する。第二次大戦での物的被害の対国富率、約14パーセントに近い数字であるという。

 私には、これほど長期に日本の社会、経済、文化に深刻な影響を与えておきながら、今もってバブルをもたらした者の責任が問われていないことが、第二次大戦の戦争責任が問われなかったこととオーバーラップして見える。

 そして、何よりも問題なのは、被爆者をはじめ、戦争被害者が長年放置されてきたのと同じように、バブルの直接の被害者が放置されていることだ。

 バブル期に、金余り現象の中で融資先獲得に躍起となった銀行から、相続税対策を吊目に、変額保険、上動産投資などの提案融資を押し付けられた多数の個人が、その後のバブル崩壊で銀行の提案した返済スキームが破綻するや、銀行に彼らが長年働いて取得した自宅をはじめ、すべての財産を根こそぎ奪いとられようとしているのに、国は何ら救済しようとはしていない。自らバブルを煽り、バブルに狂奔して経営危機を招いた銀行に対しては、国民の血税で経営危機を救っているのに、だ。

 銀行被害も、サラ金被害同様に金融被害ではあるが、サラ金被害者のばあい比較的若年者が多いのに対し、銀行被害者は圧倒的に高齢者が多い点がまったく異なる。若ければ人生をやり直すことも可能だが、銀行被害者のばあい、生活を再建する余力も時間も残されてはいない。加えて、銀行被害のばあい、被害金額が高額である。サラ金では、貸金業規制法第13条で過剰融資が禁止されているのに、銀行にはこれを規制する法律がない。この法的規制の上備が、銀行被害を増大し、かつ深刻化した。多くの被害者は、数億円という高額の被害のため、精神に異常をきたしたり、家族崩壊にまで至るケースも珍しくはない。

この記事のトップへ戻る