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中国をのさばらせる米大統領の弱腰外交

 オバマ米大統領は昨年12月、半世紀に渡って国交を断絶してきたキューバとの関係改善を目指し国交正常化交渉を開始すると発表した。

 実績のないオバマ大統領が、残り2年の任期期間中に自分なりの足跡を残す積りと受け止められている。

 とりわけオバマ大統領を悩ませているのが、シリアやイラクで急速に勢力を拡大したイスラム過激派組織「イスラム国」への対応だ。

 オバマ大統領は当初、イスラム国への攻撃には慎重姿勢を保持した。イラク戦争に終止符を打ち、イラクから米軍を完全に撤退させたことを自負していたオバマ大統領にとって、イラクに再び兵力を投入することは、自己否定につながり自尊心を傷つけられるからだ。

 しかし、イスラム国が米ジャーナリスト殺害映像を相次いで公開し、米国内に大きな衝撃をもたらすと、オバマ大統領は結局、軍事行動に踏み切った。

 米国は今も、イラクとシリアで空爆を継続しており、中東からの出口戦略を見いだせずにいる。むしろ地上部隊の投入など、軍事関与を強める必要があるとの指摘があるほど、今年も、オバマ政権は難しい決断を迫られることになる。

 さらにロシア問題でも、オバマ政権は難しい問題に直面している。ロシアによるクリミア編入を阻止できず、ウクライナ東部の戦闘でもウクライナ政府と親ロシア派との停戦に向けた有効策を講じることができなかった。

 オバマ政権の外交は後手に回っているとの批判を受け、内外から弱腰外交とまで言われた経緯がある。

 そうしたオバマ政権の外交姿勢に、アジアでも不安が広がっている。

 中国がロシア同様、増大してきた軍事力を背景に、東シナ海や南シナ海で強行的な行動に出るのではないかとの懸念が広がっているからだ。

 中国の覇権的行動を牽制する重しとして期待されている米国。その米国が「世界の警察官の地位を降りる」といった弱腰外交に陥れば、力の真空地帯に出てくる中国を抑える梃子を失ったも同然だ。

 アキノ比大統領は昨年「チェンバレン英首相の融和主義がドイツの侵略を招いた」と述べ、対中外交で毅然とした米国の対応を求めた。

 チェンバレンの融和主義とは、第2次大戦を防ぐため、ヒトラーをなだめて1938年にチェコスロバキア・ズデーテン地方をナチス・ドイツに割譲した融和策を言う。結局、チェンバレンの融和主義は奏功せず、英国の弱腰を見てとったヒトラーの本格的な侵略が始まることになった経緯がある。

 米国が比大統領の警告を無視するようだと、中国を東アジアの覇権国家として浮上させ、法治や人権を無視した力で現状秩序変更を試みる国家へ押しやりかねない。

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