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香港の「雨傘革命」に見る中国共産党体制終焉の兆候

 昨年、香港の学生などが道路占拠などで中国への抗議活動を展開したのは、このままでは中国に飲み込まれてしまうという強い危機感があったからだ。香港は中国に返還された後も、一国二制度の下、言論の自由や独立した司法制度など高度な自治が保障されるとされた。

 だが現在、人口700万人の香港に中国本土から年間4000万人もの観光客が訪問する他、巨額な投資マネーが落とされるようになった。それとともに、中国本土からの日用品の買い占めや観光客のマナーの悪さ、それに投機マネー流入による不動産価格の高騰などが社会問題になっている。

 さらに、香港では中国式の愛国教育が行われるようになるなど「香港の中国化」が市民の懸念を増幅させ、危機感にまで高まったのだ。

 今回、学生たちの抗議活動は表面上、収束したかに見える。

 しかし、香港と中国との軋轢は、さらに今後、様々な形で転化していくのは必至だ。道路のバリケードは撤去されたが、香港市民の心の中にくすぶっている本質的問題はそのままだからだ。

 一方、中国共産党独裁体制維持を至上命題とする中国政府としては、香港の抗議活動を放置すれば、国家の屋台骨を揺るがす命取りにもなりかねない危惧があった。

 中国では「新富人(ニューリッチ)」の言葉に象徴される通り、すさまじい貧富の差が出現している。また「貪官(たんかん)汚吏(おり)(賄賂を貪る悪徳役人)」という封建時代から存在する言葉が蘇るほど、官僚の腐敗蔓延も深刻だ。毎年、多くの腐敗幹部が莫大な資産を携えて海外に逃亡する事件が後を絶たない。

 さらに、耕作地の強制収奪などによる暴動は年間20万件にも達し、国民の不満は爆発寸前だ。その不満の矛先が共産党独裁体制そのものに向かうことを極度に恐れているのだ。

 香港の学生運動に少しでも譲歩する姿勢を見せれば、中国本土でも同様の要求が燎原の火のように広がりかねないという危機感があった。それで中国政府は今回、道路を占拠した学生たちに対し、違法だとして要求を聞き入れる姿勢は微塵だに示さなかった。

 同時に中国本土では、香港の抗議活動について報道統制を徹底し、国民の目から隔絶させている。

 中国では昨年、著名な人権派弁護士や学者、ジャーナリストが相次いで逮捕されたり、投獄されたりしている。いずれもネット上での言論活動が問題視された模様だ。

 習近平体制になって、顕著なのは言論統制と権力の一極集中だ。

 経済力を身につけた中国は、外から見ると自信を深めているように見える一方で、国民からの不満や要求を力で封じ込めようとしている習近平指導部の姿からは、権力維持のためなりふり構わない切羽詰った状況も垣間見える。

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