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地方に住民税の一部寄付

ふるさと納税で都市力活用

 3年ほど前から、「ふるさと納税」が話題に登るようになった。「ふるさと納税」をした人に対し、多くの自治体が「お礼の品」を用意し、そのラインアップたるやデパ地下の広告のように豪華だ。一例を挙げると、三重県松阪市の松阪牛、新潟県十日町市の魚沼産コシヒカリ、宮崎県綾町の完熟マンゴー、北海道当麻町のでんすけすいかといった具合で、ご当地グルメ満載ぶりが目を引く。

 そもそも都市住民の活力を地方に分散する「ふるさと納税」の発端を開いたのは、経済学者の隅谷三喜男東大名誉教授だった。隅谷氏は4半世紀前、座長を務めていた民間の政策提言機関で、出生地や成育地でなくても、特定の市町村を支援する「選択市民制度」を提案。その構想は、大都市圏の住民が住民税の一部を地方の市町村に寄付することで、都市と地方の格差を是正するとともに、彼らに擬似ふるさとを提供し地方の発展を資金面で支援するというものだった。

 それが2008年の第一次安倍政権で、地方と都市との格差是正を目的に実現された。生まれ故郷をはじめ何らかの理由で応援したい自治体に住民税の一部を寄付すると、居住地で税金が控除される。現在、全国の6割の自治体が参加しており、昨年度の利用者は延べ10万人を超え、寄付額は130億円だった。

 年収などによって上限があるものの、寄付金額のうち2千円を超える部分が居住地の税金から控除され、さらに自治体からお礼の品ももらえる。政府はこの制度を拡充し、2015年度から控除額の上限を2倍に引き上げ、また5つの自治体までの寄付は、これまで必要だった確定申告が不要となる見込みで、ふるさと納税はこうしたブームに火がつく可能性を秘めている。

 ただ住民税を超える寄付金収入で財政が潤う自治体も出てくれば、住民税の減少に加え、事務手続きの増加に悩む自治体も出てくることが想定され、都市と地方の格差是正のはずが新たな格差を生む懸念もある。

 自治体の中には、年7・0%の元本割れなしの高金利貯蓄手段としてアピールする金融機関顔負けのところも出てきているが、さすがに欲得だけの競合では、本来の地方創生には繋がらない気もしてくる。

 「ふるさと納税」は一方で、故郷への恩返しという意味もある。そんな気持ちを持っている都会人は少なくなくい。都会人の心が豊かになり、同時に地方が豊かになる道をどうつけるかが「ふるさと納税」の本道だろう。

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