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中小企業等金融円滑化法の出口戦略を語る

亀井静香元金融担当大臣「日本人の生き方を取り戻せ」

原口一博元総務大臣「貪る資本主義から育む資本主義へ」

 衆議院議員の亀井静香氏(元金融担当大臣)と原口一博氏(元総務大臣)はこのほど、中央大学駿河台記念館で「中小企業等金融円滑化法案の出口戦略を語る」のテーマで対談した。主催は過剰債務者の負担を軽減する立法措置を求めている椎名麻紗枝弁護士が事務局長を務める「銀行の貸し手責任を問う会」。

 まず口火を切った原口氏は「整理回収機構(RCC)に巨大な力を与えた。債務者の皆さんが、ハゲタカファンドに破産に追い込まれ、時に命さえ奪われている。電気会社の粉飾決算では、東証は本来、管理ポストに入れるべき事柄だった。そうした意味で中小企業との不公平を感じる。マネーは元来、市民のものだ。平等にアクセスできなければ、市場そのものが壊れることを警戒しないといけない」と述べた上で、ハゲタカファンドの活動を規制し「貪る資本主義から育む資本主義」にしていかないといけないと総括した。

 一方、亀井氏は「日本人が大事にしてきた生き方を取り戻す必要がある。米国とも対等でないといけない。安倍さんとは新党も作ろうという仲だった。しかし、右バネが効いて、なれないと思っていた総理になった。経済から外交、防衛、待ったなしだ。だが米国の言う通りにする必要はない。TPP(環太平洋連携協定)というのは、米国の生活に日本を合わせるということだ。安倍さんには『右バネで生まれた総理は、右バネで跳ね飛ばされるぞ』と警告している」と述べた。

 亀井氏はまた「大学の研究室で政治は動かない。政治の世界は理屈じゃない。政策でもない。原口先生、せめて『窮鼠猫を噛む』で行け」と喝を入れ、政権取りへの執念を語った。

 「いくら学者がいい知恵を出しても、実行する権力を作り変えない限り、意味がない」というのだ。

 さらに、亀井氏は「金融大臣の時、借りた金を返せるまで返さんでいい金融円滑化法案を通した。鳩山総理もびっくりしていた。自民、公明党も反対した。だが、当たり前のことをやった。金貸しというのは貸した金で商売して儲けて、返してくれて成り立つ商売だ。借りた先が返せない時もある。それを差し押さえてしまえば、商売はできない。だから待ってやる。これは貸したほうもいい話だ」と回顧した。

 これに対し原口氏は「その意味でも、米サブプライムローンの返済では、オバマ大統領は公的資金を投入したことは参考になる。ただ世界では3年に一回、金融危機が来るような時代になっているが、過剰流動性に金融危機の震源地があるように思う。また公共というのは、何も官だけの世界ではない。公益にかかわるNPOやNGOも公共に関与するものだ。佐賀県では、条例で半分まで、NPO税制として認めている」と語った。

 なお政府は金融円滑化法の出口戦略を発表している。その一つが昨年5月に成立した「株式会社地域経済活性化支援機構法の一部改正」だ。

 同法は金融機関主導で見込みのない企業は潰し、利益の見込める企業だけ民間投資家などに買い取らせ、「企業再生」を図ろうとする動きをさらに加速させるものだ。

 歴史を回顧すると、1990年、バブルが崩壊し不動産価格が大暴落した時、銀行はすべからく膨大な不良債権を抱え込んだ。以後20年、日本経済は低迷を続けた。

 しかし、銀行は政府から補助金に匹敵する優遇策を受けた。ほぼ預金金利はゼロに固定し、貸出金利の利ザヤを抜くことで銀行は大体、年間総額5兆円規模の業務純益をあげたのだ。金融庁は、それを銀行への補助金として渡したようなものだ。それで20年間、そうした補助金を出し続けて100兆円もの不良債権を処理したのだ。

 失われた10年、失われた20年というのは、そういうことだった。

 少なくとも、勝ったものはすべてを奪い、負けたものは死んでも構わないというジャングルの掟が横行するような新自由主義は問題が多い。

 何よりバブル崩壊時に、膨大な不良債権を抱えた銀行を政府は温情で助けるが、その恩恵を被った銀行が、今度は不良債権を抱える個人や法人に冷酷な仕打ちを与えるというのは傲岸不遜な話だ。

 その意味でも、債務者だけが救済から除外されているというのは筋が通らない。過剰債務を身の丈にあった借金にすべきだと訴える椎名弁護士の主張は、社会的合理性がある。

 債務者というのは責任感が強いばかりに、切羽詰まって自殺したり夜逃げ同然でホームレスに落ちていく人もいるが、困った時はもっと助けを求めてもいい。何よりそれに応える経済制度が必要だろう。

 「このままいけば亀井氏が警告する通り、日本の企業は外来資本主義に乗っ取られかねない。しかし、日本経済を支えているのは、全企業の99・7%を占める中小企業だ。その中小企業が潰され、あるいはハゲタカファンドなどに乗っ取られて、日本経済活性化の道はどうつけるというのか」

 集会は、同会の事務局長を務める椎名麻紗枝弁護士の憂いを共有する場となった。

 会は椎名弁護士など、血の涙が流れる不良債権回収の現場に立ち会っている経験から、これ以上の金融被害者を出さないようにするため整理回収機構(RCC)の解散や連帯保証人に対する取立ての規制、金融サービサー法の改正などを実現することが不可欠とし、行政や国会に働きかけている。

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