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今月の永田町

容易でない民維の合流 参院統一会派は1月下旬以降

 民主党と維新の党は、昨年衆議院で結成した統一会派をベースとして、今通常国会の早い時期に参院での統一会派の結成を目指す。その上で、夏の参院選を前に新党を立ち上げて「政権交代可能な野党勢力結集」を図る。だが、そのシナリオ通りに事が進むとは限らない。合併方法や新党の名称、政策面での両党の不一致が露呈しており、合流は容易ではなさそうだ。


 所属国会議員20人の「おおさか維新」と袂を分かった維新の党残留組( 26人)の松野頼久代表は昨年12月18日、民主党との衆院統一会派「民主・維新・無所属クラブ」を発足させた。93人の規模となり「100人いれば次の衆院選で政権交代が可能になる」と維新幹部は期待感を露わにしている 。

 民主党の枝野幸男幹事長、玄葉光一郎選対委員長と、維新の今井雅人幹事長、松木謙公選対委員長は同28日、国会内で「選挙関係調整会議」の初会合を開き、次期衆院選で候補者の一本化を図る考えで一致。衆参ダブル選挙も想定して5月の大型連休までに現職を含め200人以上の擁立を目指すことを決定した。また4月24日投開票の衆院北海道5区補選では、無所属新人の池田真紀氏を推すことで一致。両党を中心としつつ野党勢力の幅広い結集を図ることでも合意した 。

 「問題は衆院選よりも夏の参院選で共闘できるかだ」と指摘するのは政界関係者である。参院では、旧みんなの党出身の維新の参院議員5人が国会法の規定により合流できないため、参院での統一会派結成を1月下旬以降に先送りしたのだ。これができなければ新党結成は遠い話だ。「この問題を解決するには両党の合併方法をまず決めること。解党による新党結成でなければならないだろう」と同関係者は語る 。

 民主党内でこの合併方法(解党による新設合併)を支持するのが前原誠司元代表や細野豪志政調会長ら保守派だ。維新の党の全員が新党に参加できるし清新さをアピールできるというのが主な理由である。ところが、岡田克也代表は「解党と言うのはやめてほしい。新党ならいい」との姿勢を崩さない。つまり、民主党が維新をのみ込む形の合流形式がいいという立場なのだ。他の議員の中からも「少数の維新のために解党する必要があるのか」「民主党内の多数がのみ込み形式を支持だ」「地方組織は解党に伴う手続きが大変」などの声が挙がっている 。

 新党の名称をめぐっても見解の相違が表面化している。民主党名を存続すべきとの立場の議員は「すでに党名が浸透している」と主張するが、新たな支持を広げられるのか不透明だ。一方、「立憲民主党」などと党名を変更すれば清新さをアピールできるが、有権者にどこまで理解されるかは分からない。岡田代表は「看板を変えれば信頼が回復するというような単純な話ではない」と消極的な見解だが、松野代表は「民主党という名前の新党に合流することは500%ない」と言い切っている 。

 「国民が最も注目するのが合流話が野合であるか否かだ。重要な政策で一致していないのに選挙互助会をつくっても支持は広がらないし、政権奪回などできるわけがない」と強調するのは自民党幹部である 。

 確かに新党結成を阻む最大の障害は政策の違いだ。両党はすでに法案審査に当たる各部会を合同で開いており、通常国会開幕後は政調会長や国対委員長の協議を毎週行うことにしている。だが、安全保障関連法への対応として民主党は昨年の通常国会で準備した領域警備法案など3本を提出したい考えだが、維新は先の国会に提出した集団的自衛権の行使を限定的に認める政府案への対案にこだわっており、溝が埋まる見通しはない 。

 今国会で民主党が提出する予定の国家公務員の給与を引き上げる給与法改正案についても、対立したままだ。改正案は8月の人事院勧告に基づき国家公務員一般職(行政職)の2015年度の年収を平均5万9000円引き上げる内容。「身を切る改革」の一環として方向付けたいとする維新側は12月22日、国会内で両院議員懇談会を開き、改正案への対応を協議したが、「社民党に憲法改正に賛成しろと迫るのと同じくらいの内容だ」(井坂信彦衆院議員)などの反対意見が相次いだ。今井幹事長は「知恵を出して良い解決策を見い出すべきだ」と民主党側の軟化を求めたが、「嫌なら統一会派を出ていけということだ」と民主党側は強気の姿勢を崩さない。労働組合を支持基盤とする民主党の限界を露呈したもので、「しがらみのない政党」を標榜する維新と「官公労にものが言えない政党」民主党との対立が解消される可能性は小さい 。

 こうした対立がいつまでも続くようだと新党結成・野党再編は難しい。「一つのメドは2016年度予算案が成立する3月末までだろう」(政界関係者)と見る向きが多い。合併方法が定まり参院での統一会派もでき、政策調整を行って4月か5月に新党結成にこぎつけられれば夏の参院選には間に合う。衆参ダブル選挙になっても準備次第では候補者調整ができよう 。

 維新の松野代表は国会が始まった4日の党の会合で、野党再編に関し「参院選に向けて大きな固まりをつくっていきたい。春先には新党を結成し、来るべき参院選を必ず勝ち抜くという思いの中で頑張っていきたい」と述べたが、気持ち先行の印象だ。保守、リベラルが混在している民主党に維新が加わって一体、どういう政党ができ上がるのか。不透明感は拭えない。

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