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インタビュー おおさか維新の会政調会長 下地幹郎氏に聞く

なでしこジャパンの轍踏むな 徹底したい橋下イズム

 台湾で行われた1月の立法委員選では第3勢力の「時代力量」が善戦した。おおさか維新の会政調会長の下地幹郎氏も、永田町で求められているのは第3勢力だと最近、しばしば口にする。その真意は何か。5年後には衆議院の過半数を目標に据えている戦略シナリオは何か。おおさか維新の会の選挙公約や政策立法案の責任者である下地幹郎氏に聞いた。


――次の参議院選挙にはどう臨む?

 おおさか維新の会というのは、政党ができたばかりで、何者だろうかというのが一般的な疑問としてある。その疑問に応えるためにも、自民党との違いをただ突いても意味がないので、民主党や共産党とも同じ熱量で論議を展開していく。

 この何者論でおおさか維新の会は、与党でも野党でもないと言ってきた。そうした既成政党との違いを鮮明に打ち出していく。

――第3勢力というのを強調しているが?

 そうだ。議席数からいうと共産党が第3勢力となるが、共産党は現在、民主党の補完勢力に成り下がっている。おおさか維新の会は与党でも野党でもない、各政策論は是々非々で判断を下す第3勢力として政党としての存在感を浮上させる。

 とりわけ今年の参議院選挙は、おおさか維新の会にとって政党として大きな分岐点になる。

 これで勢力を伸ばし切れなければ、間違いなく第3勢力を作る推進力はなくなる。

 その意味では、次の衆議院選挙でどうなるかなどというのは全く考えていない。今度の参議院選挙でどうするかがポイントだ。

――橋下氏は5年後に衆議院の半数以上取るというが、その目標に向かって今年の参議院選挙というのは「前門の虎」?

 ここである一定の成果を出せないで、橋下さんが言っている5年後の話はない。だから今回の京都3区、次の参議院選挙が浮沈を決定する正念場だ。同時選挙はない。

――同時選挙がないという感触はどこから?

 今の政治は「株価が一番、為替が一番」というものだ。その肝心要の「株と為替」が安定しないという中においては、リスキーな戦いを挑んではこないのじゃないかと思う。

 安倍首相は、自分の政権内に憲法改正をしたいと語っている。その安倍政権にとって、衆議院はあと2年半ある。やはり、今度の参議院選でどういう結果が出るか、全てはそれを見てからだと思っているので、その意味ではどの政党も正念場だ。

――その参議院選挙を戦う戦略は?

 今、わが党は「なでしこジャパン」だ。橋下が党を出た大阪維新というのは、澤誉がいなくなった「なでしこジャパン」だ。

 「なでしこジャパン」は勝てない試合が続いている。私が思うには、あれは澤誉をヘッドコーチにすべきだった。それで、澤のサッカーに対する姿勢だとか、戦略戦術というのを徹底したものにすべきだった。それを「なでしこジャパン」は「脱澤」をやろうとした。やっちゃだめだ。

 うちも脱橋下をやろうとは思っていない。政策顧問なのだから、いつまでも橋下と一緒だ。

 この党は橋下の党だ。橋下が作り、育て、いまでも90%の株主は橋下なのだという党運営をしていきたいと思っている。だから「なでしこジャパン」の脱澤を、私達は逆バージョンでやらない。

 いつまでも澤は10番。橋下も10番。

 そういう戦略が大事だろうと思っていて、そうした橋下イズムを徹底して、人気のある橋下の考え方をコアに据えた選挙にしていきたい。

――橋下さんあってのおおさか維新の会ということだが、そこまで橋下さんを買われる理由は何か?

 あの人以外に影響力のある政治家はいない。私も政治家になって20年間、永田町を見てきたけれど、いいとか悪いとかは別にして発信力があったのは小泉純一郎だった。その次に田中真紀子。彼らは実に面白かった。政治家としていいとか悪いとかは抜きで、抜群の発信力をもっていた。

 今の米大統領選挙でも、正しい発言をしているかどうかは抜きにして、国民が何か期待感を持っている側面がある。

――トランプに対しては、どう思うのか。

 でたらめだ。でも、何ででたらめなトランプがこれだけ評価されるのか。どこかに政治的にも社会的にも閉塞感があるからだと思う。

――オバマ政治への反作用の側面があるのは事実だと思う。

 日本も同じだ。浮気辞任の宮崎が出て、漢字が読めない大臣が出て、丸山さんみたいな発言があって、でもなぜ民主党の支持率が伸びないのか。これは政治の閉塞感じゃないのか。さらにいえば野党の閉塞感だ。野党の閉塞感が破られさえすれば、一気に自民党自壊が始まると思う。

 この野党の閉塞感を破れるのは誰なのかといったら、橋下しかいない。大阪でやってきたことも無茶苦茶に言われるが、橋下こそは日本を変えることができる人物だ。

――維新というのは自民党とくっついて何かやろうとしているのかと思っていたが、そうじゃない?

 違う。

 自民党がやらないことをやるのが維新だ。原発の再開するといってやっても、最終処分場はどこにするのか聞かれて、分かりませんという政治はしない。

 沖縄、愛してますといって、沖縄の人が一番欲しいのは、お金でもなければ土地の返還でもなくて、日米地位協定を変えてくれというところにある。

――そうなのか?

 そりゃそうだ。どれだけの人が地位協定に苦しめられてきたことか。ひき逃げしてもつかまらない。最後は人は人としての存在感が認められるかどうかだ。それも70年間、変わらない。

 今、日本には100万人外国人労働者がいる。今のままではみんな日本が嫌いになって帰る。4畳半に6人くらい押し込まれて、環境の悪い中、汗水ながして働き、日本経済に貢献を強いられて、3年やったら帰りなさいだ。

 お前の国より賃金高いのだから、いいでしょうといっても、人には人としてのプライドや自尊心がある。どんなでも、ご飯食べなきゃいけないし、排泄も、大金持ちだろうと低所得者であろうと、みんな一緒だ。お風呂に入りたいという気持ちも一緒だろうし、人間が持つ最低限の欲望は全部、一緒だのに、彼らだけ満足な時間を過ごしているようでは、この国を好きになるはずがない。

 毎年、日本に100万人来ても、今のままででは日本の労働力として使うために敵を作り上げているうようなものだ。だからおおさか維新の会は、移民法を提言している。

 日本に来たいという人は、日本人になりたい思うことが前提で、日本で働いて勉強なさい。その代わり、7年いて犯罪歴ゼロですよ。それに日本語も、トーイクみたいにある程度の基準を満たしてください。そして、日本の文化もしっかり勉強してもらわないといけませんよと。

 使っている会社の社長が、こいつはいいやつだ。このへんの日本人より、よほどしっかりしているし、日本の心を分かっているというふうにしないといけない。

 この人に家を貸したら、家主がいいなーと思い、自治会の会長もいいなーと思うような人は大事な隣人となる。

 様々な条件があって、5年、7年たったら日本に住みたいのか自分の国に帰りたいのか判断してもらう。そういう選択権のある、人を人としてちゃんとして扱う制度が大事だと思う。

 こういうことが今まで政治の場で、論じられなかった。それを論じるということが自民党にはできないし、労働組合の縛りがある民主党にもできない。

 そういうところをやっていこうというのがおおさか維新の会の面白いところだ。

――移民法の改正もおおさか維新の会の目玉になるのか。

 すべきだと思う。

 現状を直視した考え方にしていかないと、この国の未来はきつい。余りに先延ばしばかりが多すぎる。

――人口問題や労働力の確保というのは国力の基礎にあたる問題だ。

 安倍首相は希望出生率1・8とか、多様化していると言っているが、世田谷区などで同性婚を認めて企業が保険の対応もできるというようなことをやっている。

 10年前には、考えられなかったことだ。同性婚が7%まできている。

――その同姓婚問題はどう考える?

 私は反対だ。個人の自由だからという問題ではないと思う。個人の権利だという人がいるかもしれないが、個人の権利といえる範疇ではないと思う。

――人から構成される国そのものの存在が消滅しかねない自己否定の論理にもつながっているようにも感じる。

 だが世の中の流れは、反対の方向にある。

――渋谷区でもあったように、人権と言われればそうかもしれないが、哲学が欠落している。

 私は性として、このことを自分にはあっていると思うこと自体は否定しない。ただ、それを公が認めるというのはいかがかと思う。

――それこそ政治の問題だ。ところで改憲問題だが、どの条項が対象になるのか。

 おおさか維新の会は、統治機構と教育を対象とする。

 地方の権限を強化する道州制の導入は、おおさか維新の会の一丁目一番地だ。それから教育の無償化が改憲の2本柱となる。

――9条は?

 今は論議に入らない。

――2点に絞った理由は?

 国民にとって何が大事かというのと、何がこの国を元気にしていくかという2点に尽きる。

 統治機構改革は、まちがいなく、地方が元気になることでこの国を元気にできる。そういう風な意味合いになっているので、地方がどういう権限を持つか、しっかり決めたい。米国もそうだ。州によっていろいろ違いがある。

 それと同じように、憲法で国家がよって立つ基本原理を決め、細かい法律は州で決めているように、県の条例で決めていく。消費税にしても取らないといった県は、それに見合ったものを国に納めないといけない。そうした条例を地方につくって自分で決めていく。

 だから消費税があっても、3%というところがあったら、10%のところもあるという風になっていく。

 教育の無償化は、26条で義務教育は無償化と書いてあるが、そうじゃなくて教育全体を無償化する。高校、大学教育、専門学校も含む。

 それによってこの国の問題が解決される。人に金をかけることで、この国でよりよい人材を育てるために、教育をどの層も徹底的にできるようにする。これができるというのが一点。さらに国力をつけるというのが一点だ。

 さらに何で子供を産まないのですかと聞くと、教育費に金がかかるという30代、40代の女性を支援する。

 これから可処分所得が完全になくなって、人口問題も大きくなる。この国を輸出の国から、個人本位の国に変えるには、30代、40代の層が子育てに関わる教育費がなくなることで個人消費に回るようにする必要がある。これは大きな経済効果をもたらす。

 沖縄では一人大学を出すのに、1200 万円かかる。

――沖縄の大学ではなくて本土の大学?

 そう。

 もっと高いのが、与那国で生まれた子供だ。中学まで与那国、高校から石垣にいかなければいけない。そうなると、一ヶ月5万円のアパートを借りたら、食費などを含めると年間1 2 0 万円。3 年間で360万円かかる。

 それで大学にいくとなると合計1200万円ではすまない。

 そこで、これがなくなると必ず住宅に回る。消費、購買力が増すことになるから経済的にも大きな意味がある。

――財源は?

 今回、1兆2千億円が無駄だというものを出したから、まずこうした無駄を省く必要がある。今年度の予算は96兆円組んでいるが、それにキャップをはめて、3兆6000億円を予算化する。

 二点目には、500兆円を資産に持つ特殊法人を民営化することで財源にまわす。

 それでも足りないというなら消費税の1%分を教育費に回す。消費税10%、11 %にするけど教育費にするからと国民に問いかけてでも1%回す。

 こうしたことをやっても財源は十分に担保できる。無駄を省き、官から民へという新たな財源を作って、それでも足りなければ増税してでもやる価値がある。

――こうした例は世界ではない?

 それを憲法に書くというところが、わが政党の面白いところだ。

 これを憲法に書かなかったら、この総理大臣の時はやらないとか分かってくる。これを憲法に書くこと、そこから変えてやっていきたいと思っている。

――モデル国家は?

 ない。そこまでやっている国はない。

――無償化の弊害だが、大学の質が落ちてしまうとかの問題は?

 弊害はない。

 米国などに統計が出ていて、貧困層の子供に補助金を出し学校を出ると、一番、納税するというデータがある。

 親は納税していなくても、子供が学力をつけて就業すれば納税率は一気に高まる。補助金の何十倍のものが返ってくる。

――沖縄の問題は?

 沖縄の地政学的な魅力は軍事的な魅力だと言われてきた経緯があるが、これが経済的な魅力に変わってきている。クルーズ船とか飛行機のアジア便とか、着実にこれが伸び、観光客も伸びている。沖縄はこれから着実に成長していく。

 また基地問題については、基地の返還など普天間問題が第一番のように言われるけれど、一番は地位協定の改定にある。それをまずやって、それから基地の返還をやっていくことが肝要だ。そういう順番からいうと、今は間違えていると思う。

 人というのは感情がある。現在、沖縄には騒音以上の被害がある。先だってひき逃げ事故があった。3日ぐらいたって、自首してきたが、飲酒運転ではなかったとされている。それでも誰もが飲酒運転と分かっている。そういうことが沖縄県民はたまらないということを理解しないといけない。

 集団的自衛権も認めながら、思いやり予算もやっている中で、信頼をしていると言いながら、地位協定は改善されない状況というのはおかしい。その意味で直すべきところは直さないといけない。

――ユニバーサルスタジオの沖縄誘致の展望は?

 USJも沖縄が一番いい。

 日本中が人口減少の波を被っている中、東京とか大阪の人口もこれ以上伸びない。昔は伸びたが、これから減っていくばかりだ。

 一番、人口が伸びているのはアジアだ。42億人の人口が52億人になる。

――そのアジアに近いというメリットがある?

 そうだ。

――上海デイズニーに顧客を奪われないか?

 サービスが違う。日本人のサービスは上海デイズニーではできない。これははっきりしている。

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