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今月の永田町

低迷小沢一郎氏が復活の兆し

共産と連携し野党共闘後押し

 政界再編のキーパーソンとしてかつては豪腕振りを発揮し、最近は衆院2人、参院3人の生活の党共同代表に転落して低迷していた小沢一郎氏の影響力が復活の兆しを見せている。野党共闘を積極的に呼び掛ける共産党の志位和夫委員長と二人三脚となって、夏の参院選での選挙協力の必要性を精力的に説いて回っているからだ。民主・維新の新党に生活の党が合流する可能性も出てきた。


 「7月の参院選で自民・公明を過半数割れに追い込めば安倍晋三首相を引きずり降ろせる。そのためには野党の候補者を一本化することが必要だ」。

 このところ、小沢代表が民主党幹部らと極秘裏に会談して訴えている内容だ。

 3月2日夜には岡田克也代表が輿石東参院副議長の仲介で極秘に会談。その中で小沢氏は衆院小選挙区での約2万の共産党票を効果的に使って野党共闘で勝利できる参院選挙区をひとつ一つ挙げて説明。また、衆参ダブル選挙の場合でも対応可能であることを訴えたという。この会談に影響されたのか岡田氏は「2党(生活と社民)が軸になって他の野党も(新党に)合流を」との声を強めている。

 「小沢氏が民主党時代、消費増税の扱いなどをめぐって党内をかく乱していたときの幹事長だった岡田氏が、小沢氏と寄りを戻して再合流するとは考えにくい。今の党内にも強い小沢アレルギーが残っているため簡単に一緒になることはあるまい」と政界関係者は指摘する。しかしその一方で、「岡田代表は安倍首相を退陣に追い込む最後のチャンスと腹をくくっている。維新の松野頼久代表も『生活』を巻き込みたいと語っている」とし、生活の新党合流はあり得るとの声もある。

 その小沢氏が執念をもって野党共闘を訴え、それが説得力を持つ背景には共産党との蜜月関係があるからだ。言い方を変えれば、安倍政権との対決姿勢を強調し、存在感をアピールしている共産党の選挙戦術を代弁しつつ政権奪還策を説いて回っている小沢氏に、民主党幹部らが魅力を感じているからである。

 共産党の選挙戦術とは、一言で言えば、参院選で32ある1人区の共産党公認候補をすべて降ろしてでも野党共闘を優先させるというものだ。仮にそれが実現したとして、2014年の衆院選得票で試算すると、秋田、福島、新潟、長野、滋賀、三重、沖縄の8選挙区で野党が議席を獲得することになる。こうした共闘に共産党は前のめりなのだ。

 共産党はすでに、県議選で議席を倍増させた宮城選挙区でいわぶち彩子予定候補を比例に回し、政策協定を結んで民主党現職の桜井充氏の当選を目指すことを3月2日に発表。初の5野党(民主、共産、維新、社民、生活)統一候補となった。長野県でも7日、テレビキャスターの杉尾秀哉候補と民主党、共産党が「政策協定書」に調印。それにより、杉尾氏は当選しても「安保法制の廃止、集団的自衛権の行使容認の閣議決定の撤回、立憲主義の回復をめざす」ことなどの〝縛り〟を受けることになった。このほか、共産党は徳島、高知など続々と候補者の取り下げを発表している。

 共産党が候補者を取り下げる背景には、最近の各種の選挙での善戦も影響している。14年12月の総選挙では8議席から21議席へと急増、次期国政選挙の比例代表選挙で「850万票、得票率15%以上」の目標を掲げている。昨年4月の統一地方選では県議席のなかった栃木、神奈川、静岡、愛知、三重、滋賀、福岡の7県で議席を獲得し、全ての都道府県で空白区を解消した。これは党史上初のこと。そればかりでなく、政令市議、特別区議、一般市議、町村議すべてで増加し計130議席を増やしたことがある。

 これが安保法制(戦争法)反対、ひいては「国民連合政府」構想の提示につながっていくのだ。ところが、その構想に他党が乗ってこず、ひとまず「横において」(志位委員長)、「参院選1人区での候補者を原則擁立せず」の戦術に絞ったのである。

 これを最大限利用しているのが小沢氏だ。

 志位委員長と小沢氏との現在の蜜月関係は、初当選同期(1969年)の不破哲三元委員長との親密な関係に遡るが、政権奪取のためなら誰とでも手を組むのが政治屋・小沢氏の正体であろう。「かつては公明党の市川雄一と『一・一(いちいち)ライン』を形成して連立政権をつくったが今度は共産党の志位と『一・和ライン』をつくって政権取りに乗り出した」と語る自民党中堅は、「2月の社民党大会にも二人が参加。志位に続いてあいさつに立った際、小沢さんが志位の肩をポンと叩いたシーンがあったそうだが、そこに二人の近さが表れている」と指摘する。

 「共産党シロアリ論」を展開する前原誠司元代表との極秘会談(2月24日)では小沢氏は、「野党勢力の結集により政権奪還への礎を築く」ことを訴え、その際強調したのが「オリーブの木構想」だったという。イタリアにあった「オリーブの木」という連立政権にちなんだもので首相候補を統一して共闘するというものだ。

 「小沢さんがわざわざ『オリーブの木』を持ち出して訴えた背景には、前原氏に共産党への警戒感を和らげる狙いがあった。1998年の共産党の党勢の急伸の際にもこの『オリーブの木』構想が叫ばれ、共産党は衆参の首班指名で当時の民主党代表菅直人氏に一回目から投票した。その時の協力的な姿勢を想起させようとしたのだろう」(共産党ウォッチャー)。前原氏がどう反応したかまでは伝わってこないが、小沢氏が政権打倒の執念に燃えて動き出したのは間違いない。

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