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ITは進化し脳は退化するネット依存症中高生93万人

 インターネット依存症が疑われる中高生が、5年間でほぼ倍増、全国で93万人にのぼることが、厚生労働省の調査で明らかになった。男子はオンラインゲームの利用率が高く、女子はSNSの利用率が高いとされる。5年前と比べて約40万人増え、とくに中学生で倍増した。睡眠不足や昼夜逆転生活による授業中の居眠りや遅刻など学校生活にも支障が出ているとされる。
 IT(情報通信)は進化しているが、人間の脳は退化している事実が浮き彫りになった格好だ。
 このネット依存症問題に関しては、『ゲーム脳の恐怖』を書いた日本大学文理学部元教授の森昭雄氏に話を聞いたことがある。
 森氏は当初、高齢者の認知症の研究で脳波を使った研究に入っていた。基本的に認知症の人は、ベータ波がかなり低い。その時、たまたま調べた学生の脳波が、認知症と同じ波動を示していた。その学生は、ゲームにはまっていたことから「ゲーム脳」という言葉が生まれた。
 ゲームで複数の子供が遊んでも、ほとんど会話がない。こうした非言語性のコミュニケーションだけでは、ものを深く考えるとかが苦手だし、人の話が聞けない。
 何よりゲーム漬けになると、脳の前頭前野が破壊される。ゲームをやらないと何も手がつかなくなる。勉強も仕事も食事も、すべて放棄してでもネットゲームにはまり込むケースが目立つ。
 前頭前野は善悪の判断とか自己コントロールする機能があり、創造性や将来の計画、とっさの判断など、すべて前頭前野が決定している。脳の3分の1が前頭前野で占められ、この機能があるのは人間だけだ。北京原人はおでこが平らでゴリラと同じだ。
 ネットやゲームをやっても我慢できる程度ならいいけど、我慢できない状態になると、禁断症状を伴う麻薬と同じ状況になる。
 日本の場合、死者は出ていないが中国や韓国、米国、ロシアでは死者が出ている。米国の場合は、銃乱射などで殺人に及ぶケースも目立つ。
 韓国ではネットゲームにはまった24歳の男性が、86時間ゲームをやり続けて死亡する事件や、ゲームに熱中した夫婦が生後3ケ月の子供を餓死させる事件、果てはネットで殺人依頼する事件など後を絶たない。
 他方、掲示板で騒がれたくて動物虐待事件を起こした福岡の猫虐待事件や、ネットアイドルを標榜していた者が自分のブログに注目を集めたいがためだけに連続放火を行った諏訪連続放火事件も報じられている。
 また、ネット上の各種サービス利用料金も問題を発生させる事があり、韓国ではネットゲーム上の商品であるアバターに着せる服のデータを電話料金に上乗せして課金され、親に内緒で安易に買い過ぎた11歳の女児が、母親に叱られたショックで自殺するという事件も起きている。
 ネットやゲームというのは、21世紀の禁断の果実みたいな側面がある。
 未来を担う中高生のネット依存症が急増していることに関し、家庭にだけ任せるのは限界がある。
 参考になるのは韓国や中国など隣国の対応策だ。
韓国のゲーム中毒者は約100万人。IT(情報通信)先進国に浮上した韓国は、多くのネット関連事件やネット引きこもりなど様々な弊害がいち早く起こった経緯があり、ゲーム脳対策の先進国でもある。
 韓国では「シンデレラ法」と呼ばれている青少年のオンラインゲームの接続について規制法が施行されている。16歳未満は午前0〜6時までオンラインゲームを禁じられているのだ。さらに18歳未満の青少年のオンラインゲーム利用時間を保護者が管理する「ゲーム時間選択制」を導入。青少年がゲーム会社に会員加入を申し込めば、親に子の会員加入事実を知らせ、親の承諾を経て初めて会員に加入することになっている。また親が申請すれば、子供をゲーム会員から強制的に脱会させる申し込みもできる。
 一方、中国では国家レベルで、18歳以下はお金をかけたゲームは禁止となっている。

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