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誰が中国系物理学者を殺したのか?
米中技術覇権戦争の陰で死体累々!

 中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ)問題など、米中新冷戦というグレートゲームは、先端技術覇権戦争の感を強くさせている。
 中国は開発独裁の強みを活かして、ダイナミックに21世紀の安全保障や世界経済で決定的な力を握ることになる宇宙やサイバー技術に、人材も資金も集中投入できる。
 事実、中国は現在、安徽省合肥に投資額100億ドル(約1兆900億円)の量子情報科学国家実験室を建設中で来年にも完成する。
 量子とは、原子や光子などのごく小さな粒子の総称で、波動と粒子の2性質も併せ持つ。現在のコンピューターが「0」と「1」のどちらかの状態を表す「ビット」を使って計算するのに対し、量子コンピューターは「0」と「1」の両方の状態を同時に取れるという量子特有の「重ね合わせ」を利用し、多数の計算の並列処理が可能だ。
 その能力はスーパーコンピュータの1000万倍。数々の難問を一瞬で解くとされる次世代コンピューターだ。さらに量子コンピュータは、他者からのサーバー攻撃に強靭で、しかも他者の暗号を簡単に解いてしまう能力を持つ。
 もし中国がこの量子コンピューターの開発に成功すれば、ペンタゴンの暗号解明も可能となるかもしれないのだ。
 先端技術は日進月歩の世界で、あっという間に新技術も骨董品になりかねない。そうした先端技術開発は、軍事転用も可能だ。丁度、オセロのコマをひっくり返すように全てを入れ替え、国家の未来をも決定しかねないパワーを発揮する。
 何より暗号を破る技術開発は、国家の死命をも制するものだ。第二次世界大戦の時、ナチス・ドイツが用いたローター式暗号機エニグマを英国が解くことに成功し、第二次世界大戦終結を早めたというのは有名な史実だ。英国の頭脳を結集して取り組んだ暗号解読作業は、血を流した連合国の戦争の活動より最終的な勝利に間違いなく多くの貢献をした。
 その焦点となる量子物理学研究者だった中国系米国人の物理学者・張首晟氏が昨年12月1日、飛び降り自殺をした。その直前、連邦捜査局(FBI)は、彼の実験室で事情聴取を行っている。その日は、華為副会長の孟晩舟氏がカナダで拘束された日だった。
 上海生まれの張氏は、15歳で復旦大学に入学。さらに若干30歳で米名門スタンフォード大学の教授に就任した天才だ。
 張氏は、中国国有企業の中関村発展集団と組み、シリコンバレーで丹華資本(ベンチャー・キャピタル)を創設し、代表は張氏の助手の谷安佳氏が就任。張氏は顧問的な立場で関与していた。
 その丹華資本は「中国製造2025」の柱となるAI(人工知能)、ビッグデータ、ブロックチェーンなどへの投資を行い、丹華資本と華為とが、複雑な関係で結ばれていたことが判明している。
 米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は11月20日の報告で、張氏が設立した丹華資本が中国の産業政策「中国製造2025」に関与していたことを指摘。トランプ政権は、2015年に開始された中国製造2025を、米国の技術を盗み出すためのものとみている。FBIは、その詳細の詰めに入っている。
 だから、自殺するしかなかったのか、それとも口封じにあった可能性も否定できない。
 これまで多くの中国政府関係者が「異常な死」を遂げている。マカオ連絡弁公室主任の鄭暁松氏が昨年10月にアパートから転落死、7月には、中国複合企業、海航集団(HNAグループ)の創業者で会長の王健氏が、観光でフランス南部の教会を訪れ、転落死している。
 覇権志向という強力な磁場は、時に竜巻のような災いとなって関係者の命を天に巻き上げるのだ。

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