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デジタル課税広がり見せる欧州 産業構造適応したルール課題に

 アマゾンやグーグルなど大手IT(情報技術)企業が世界で躍進するにつれて、どうやって税金を徴収するかが議論になっている。
 欧州各国では最近、デジタル課税導入が広がっている。国境を超えてグローバルな企業活動を展開している巨大IT企業の売上高に対して課税するタイプの税金だ。
 その課税を各国が取りこぼしていることから、課税の網をかぶせたいという基本構造がある。
 英国のハモンド財務相は昨年10月29日、大手IT企業を対象とするデジタル税制を来年4月から導入するとしている。IT企業は、その国で稼いだ2%を税金としてかけるというものだ。
 この導入により、英国では年4億ポンド(約570億円)の税収が見込めまれている。続いてルメール仏財務相も12月17日、こうした企業への課税を徴収する意向を示した。仏では5億ユーロ(約640億円)の税収を見込む。
 さらに大きな背景として、これまで国内の営業所や工場などのような物理的拠点がなければ、税金の網をかけるのは難かしい事情があった。
 だがグーグルやアマゾンなどインターネット企業では、米に本社があり欧州に必ずしも物理的拠点がなくても、オンライン販売などを通じて利益を出すことが可能だ。
 そうした収益を大きく伸ばしているこれらの企業に対し、課税が課せられないという原行ルールに対し不満が広がっていた。これを解決しようとしたのがデジタル課税だ。
 1つの道は、EU共通のデジタル課税創設を目指したものだ。これはネット売上高の3%に税金を科すというものだ。しかし、欧州の中は一枚岩ではない。デンマークやフィンランドなどITの恩恵を受け発展してきた国々が反対表明したことで、18年末まで合意するはずだった初期の計画を断念した経緯がある。
 EUというのは、全会一致でなければ課税に関する法律を通すことができず、極めてハードルが高く設計されている。
 このため、英仏などデジタル課税推進派の国々は、合意取り付けは無理と見切り、独自課税に踏み切り始めている。これが最近の傾向だ。
 なお、IT大手の企業が存在する米国や中国は、デジタル課税には反対の立場だ。そのため、国際的な統一ルールの形成にはつながらない模様だ。
 経済協力開発機構(OECD)や20カ国・地域(G20)の場でも、統一ルール作りは難航が見込まれる。
 課税の統一ルールが出来なければ、国境をまたいだ課税の累積問題や税率が違ったりすることで市場のゆがみがでてきたりといろいろ問題をはらむ。
 21世紀の産業構造に適応した課税ルール作りが求められるゆえんだ。 

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