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記者コラム

裁判員制度 理解深め辞退率増加に歯止めを

   裁判員制度が司法改革の目玉としてスタートして今年5月で10年を迎える。制度導入の狙いは、司法に対する一般国民の理解を深めるとともに、庶民感覚を反映させることだった。裁判員を経験者した国民からは、「貴重な体験だった」など好意的な感想が聞かれるが、その一方で、辞退率が年々上昇し、制度を根付かせる上での課題も浮き彫りになっている。
 裁判員候補者は選挙人名簿から無作為に抽出され、事件ごとにくじで選ばれた人が選任手続きに呼び出される。しかし、正当な理由があれば、辞退できることになっている。その理由というのは高齢(70歳以上)であることや重要な仕事があるなどだが、個人の事情に委ねられているのが実情だ。
 辞退率は、制度スタート時は53・1%だったが、2016年64・7%、17年66%と、年々増加傾向にある。審理予定日数が長かったり、非正規雇用者が増えたりしていることが影響しているものとみられる。
 このため、参加率を高めるには、制度に対する国民の理解だけでなく、従業員の参加に対する企業の責任意識を高める努力も必要だろう。また、辞退者からは被告が出所した時の「逆恨み」を心配する声も聞かれることから、安心して参加できるよう、裁判員の安全確保策の強化も求められる。

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