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「父はりそな銀に殺された」
親子2代にわたり財産強奪

 昨年12月5日、A氏が東京・千代田区霞が関の弁護士会館で記者会見した冒頭、「父はりそな銀行に殺された」と告発した。親子2代にわたって、りそな銀行に財産を強奪され、深い人間不信と不当で莫大な借金を押し付けられたことによるストレスで、A氏の父親はガンになって死亡したからだ。横浜旧家のA氏宅に、銀行が「名義貸し」という罠を仕掛け、身ぐるみはがす不条理がそこにはあった。

名義貸しの梯外し身ぐるみはがす

 事の発端は、りそな銀行(当時は協和埼玉銀行)が、平成3年にAさんの父親に23億円の迂回融資したことに始まる。
 A氏の家は横浜の旧家で、地元の資産家だった。父親は2016年11月に亡くなるが、今回の事件の当事者だ。
 迂回融資は、A氏の父を仲介にして横浜でマンションを建ててきたディベロッパー・浜商建物に流れた。
 バブルの頃、A氏の父と浜商建物、りそな銀行という3者の関係は良好だった。
 とりわけA氏の父と銀行とは古い付き合いがあり、多額の預金を預けてもいた。
 りそな銀は浜商建物に対し巨額の融資をして、積極的なマンション建設に支援の手を惜しまなかった。当初はそれでよかったのだが1990年3月に、大蔵省から銀行に対し総量規制が出る。いわば貸し出しの蛇口を止めにかかったのだ。
 当時は地価が高騰を続け、バブル景気が沸騰していたのだ。銀行が一役買い、これを焚きつけてもいた。不動産業界やノンバンクに資金をジャブジャブ出していたのは銀行だった。どんどんマンションが建てば、地価はどんどん上がり、それに伴い担保価値が上昇。それで借り足して、さらなるマンション建設にまい進するという相乗効果が生まれていたのだ。
 さすがに、このままでは危ないとの懸念が生まれるのは時間の問題だった。株式市場も景気も、いつまでも青天井ではあり得ないからだ。
 そこで、こうした機運を冷やさないとクラッシュが起きかねないということで、大蔵省から銀行に対し総量規制が出た。総量規制とは金融機関の不動産向け融資に対する規制で、地価高騰や土地投機を抑制する目的で大蔵省が実施した行政指導だった。
 具体的にはノンバンクや不動産、建設業界の3業種に対する融資伸び率が、他業界の伸び率を超えてはいけないという、いわば貸し出し規制だ。
 浜商建設もこの総量規制の壁に遭遇したことで、それまでの建築計画の勢いを削がれることになる。あわてたりそな銀行が、上得意だったA氏に狙いを定め、支店長自ら自宅を訪問した上で「銀行を助けてください。名前を貸していただけないでしょうか」と頭を下げて懇願したのだ。
 いわば名義貸しで銀行口座を開設し、その口座を使ってA氏の父に貸した形をとりながら、浜商建設に資金を回すという、総量規制を骨抜きにした典型的な迂回融資だった。
 これまでの付き合いもあったA氏の父は、しぶしぶ承諾した。そして、浜商建設に迂回融資された資金で、マンション建設の2つの大型プロジェクトが進むことになった。
 中国には「上に政策あれば、下に対策あり」との言葉があるが、天下の大局を見て出した政策を踏みにじる銀行サイドの「対策」だった。
 しかも銀行は、事業がうまくいかなくなると、A氏の父を犠牲の燔祭に仕立て上げてしまったのだ。
 結局、2つのマンションは1993年に完成。だが、当時はすでにバブルがはじけていた。そのせいで、全くマンションが売れない。 
 浜商建設は、仕方なく賃貸で貸し、賃貸料で日銭を稼ぎだして、自社の金庫に入れやりくりする資金にあてていた。
 そこで、りそな銀行は、A氏の父に2物件の仮登記を依頼してきた。いわばA氏の父の所有にして欲しいと頼んだのだ。
 本来なら、りそな銀行自身が、担保を取ればいいだけの話だ。しかし、りそな銀行は取っていなかった。あくまでA氏の父への融資だったから、浜商建設から担保が取れなかったからだ。
 結局、銀行の提案を受けA氏の父は仮登記を済ませた。2つのマンションの所有権は、A氏の父に移った。その途端に、銀行は豹変した。
 この融資は、あなたに貸した正式な融資なのだから、貸した金を返してくれと要求してきたのだ。それが23億7600万円だった。
 その巨額債務が一気にA氏の父にのしかかってきた。
 結局、裁判になり、一審、二審ともA氏の父は敗訴となった。このニュースを知った大渕絹子・参院議員(当時)が、財務金融委員会でりそな銀行の不当な債権回収を追及した。
 これで、りそな銀行は態度を変え、和解へと舵を切ってきた。
 結局、分割払いにして、マンション賃貸料金による収益から少しずつ返済してくれればいいということで折り合った。
 ただ、りそな銀行は息子で長男のA氏が連帯保証人になることを条件としてきた。 それをA氏は受けた。
 それから毎年4000万円から5000万円の返済を続けた。
 合意は2003年だったが、ずっと返済は続け、これまでに10億円程度、返済が終わっている。
 ところが2016年11月にA氏の父が亡くなると、銀行は二度目の梯子外しを強行してきた。
 銀行はA氏の父とは約束したが、息子であるA氏とは約束していないと言い出したのだ。だから、貸した資金は全部、耳をそろえて返してくれというのだ。
 それが出来ないのだったら、あなたの資産全部を競売にかけますと脅迫じみた強引さで迫った。
 そして実際、昨年5月には競売にかけてきた。それが、間もなく執行されるような緊迫状態にあるのが現状だ。
 「父をだましたりそな銀行は、今度は我が家の財産を身ぐるみ剥がしにかかっている」とA氏は憤懣やるかたない思いを述べた。

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