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ペマ・ギャルポのアジア時計

「ウイグルでの人権弾圧」欧米でも俎上に

 日本でも最近、ウイグル(東トルキスタン)の悲劇的な現状について報道するようになった。NHKや朝日新聞も、外国の通信社を通してであったりではあっても、比較的具体的事実を報道し始めているような気がする。また、現地の特派員による記事も目にするようになった。歓迎すべき進歩です。それこそ公正公平に国民に対し、世界の出来事を隠す事なく伝えるメディア本来の姿ではないでしょうか。
 このような良い転換に貢献したのは言うまでもなく、あの10月4日のペンス副大統領の基調講演だ。同副大統領が、米国の中国に対する政策の抜本的修正と現状認識を発表し、特にトランプ政権として初めて具体例をあげて人権問題をとりたあげたのだ。中でも現在、「中国のウイグル自治区」において、100万人以上の人々が強制収容所で洗脳教育を受けていると北京政府を批判した。
 アメリカ歴代政権は、今までにもチベット問題には関心と同情を寄せ、いくつか中国を批判する議会決議文も採択してきたが、イスラム教徒が多数を占めるウイグルに対しては今回のような積極的な関心を示さなかった。
 その主な理由は、中国が巧みにウイグルの民族運動をイスラム原理主義に関連づけて、世界を騙してきたからだ。
 ホワイト・ハウスは今回、ドイツに亡命中の世界ウイグル会議新総裁のドルクン・イサイ氏を米国に招いた。中国と世界に対するアメリカの本気度を示したものである。世界ウイグル会議は六団体位あるウイグル民族問題関連諸団体の連合体で最も歴史が古く、包括的で権威ある団体である。
 最近まで、カリスマ性の高いラビア・カーディル女史が総裁を務めていたが昨年、第4代総裁として総会でドルクン・イサイ氏が選出され、またアジア担当代表はイリハイム・マハムティ氏が就任している。
 イリハイム氏は日本国内でウイグルの伝統文化、食生活などを通してウイグル問題の現状を啓蒙する活動を展開している日本人支援者などで構成している民間団体、社団法人日本ウイグル協会の代表として長年活動している。
 世界にはいくつかのウイグル人の団体が、祖国の自由と人権のためそれぞれの立場で奮闘している。国を愛する民族に尽くす事は全ての国民、人民の権利であり、義務であり、誇りである以上、さまざまなグループができるのは当然だろう。
 だが、民族の崇高な目的を達成するためには各団体が団結し協議し、協力する必要がある。そのため、かつて存在した「東トルキスタン」の元首相アプティ・カン氏達が呼びかけて、世界の諸団体が世界ウイグル会議を結成した。以来、チベットやモンゴル、ウイグルで「共同の声」(CV)や「代表なき国家民族機構」(UNPO)という、国家や国連など国際機関などで代表権を持たない国や民族の最大の国際機関の主要メンバーとして加盟している。
 チベット亡命政府とも長い交流歴を保っており、米国やヨーロッパ、トルコなども非公式とはいえ、ウイグルを代表する正当な団体として認識している。その一環として今回、ホワイト・ハウスがドルクン氏をお招きし、また議会関係者、政府関係者が会っている。世界ウイグル協会はチベット同様、非暴力主義に徹しているが、中国政府は彼らの活動をテロリスト活動と決めつけ、徹底的に弾圧している。
 最近、欧米のメディアはウイグルにおける中国の人権弾圧の現状を頻繁に、大々的に報道し、洗脳教育を目的した強制収容所の内情を細かく紹介している。しかし、それらの多くのニュース・ソースは、カザフスタン人など周辺のトルコ系イスラム民族系からである。中国政府は、ウイグル人以外のイスラム教徒に対しても取り締まり対象に指定し、強制収容所に入れているが、彼ら数名が釈放を勝ち取り中国から脱出、強制労働収容所の過酷な実態を暴露している。また、アメリカやオーストラリアなどの国では、ウイグル人の元留学生など数名がメディアに登場している。ウイグル人海外在住者が、メディアに出ることをためらう理由は、中国支配下にいる家族が逮捕され、拷問を受けるからだ。
 中国政府も、最近になって強制収容所の存在そのものは隠しきれなくなったため、認めている。だが、それはウイグル人の若者を社会に出すための職業訓練的なものであるとの方便を使っている。
 しかし、実態は洗脳教育を行なっており、ウイグル人の信仰を捨て、無神論者になることを押し付けている。食事の時のお祈りの時も、唯一神に代わって「国のおかげ、党のおかげ、習近平主席のおかげ」と感謝するように祈るような合唱をさせているようだ。
 また欧米メディアによると、「収容所内、または隣接した工場で長時間の労働を月わずか95ドルの賃金で働かせ、生産された縫製品などは国内のみならず、日本など外国の市場に流しているようだ。
 西側では、このような強制労働で作った製品への不買運動が起きている。自由と民主主義を尊ぶ日本の財界や消費者も、正義と良心に基づく対応が必要ではないだろうか。

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