川柳・俳句3月号 「ひょうたんなまず」 選者・東嶋一刀齋
今月のお題 「家族」「テーマ自由」
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【 天 】 兄の声 1万キロを超え 春近し (東京都) 野木 佳織
- (昔の人は遠くの人に連絡するには手紙しかなかったので、その返事が来るまでは大変だった。今は携帯ですぐに相手の声が聞ける。1万キロというとアメリカあたりだろうか)
【 地 】 父母の墓 すっぽり雪に 埋もれけり (岡山市) 内村 誠司
- (両親の墓が北国にあるのだろう。なかなか墓参りに行けないので、気になっていると、大雪の便りで、すっぽり埋まってしまっているのではという思いがにじむ)
【 人 】 風の色 白さの極に ほの赤し (青森市) 左右田 徹
- (風に色はないと言ってしまえば、この句の妙味が無くなる。要するに、自己の心情を投影しているのだが、作者の気持ちに春が来ているのだろうか)
【 佳 作 】 母の顔 木彫りのごとく 影深し (大和市) 東野 幸三
- (何のてらいもなく言い切るのがいい)
天空や 凧の一つが 吹かれけり (新座市) 柏村 清太郎
- (凧は自分の象徴なのかもしれない)
指先に 水の一滴 春匂う (長野市) 末次 浩司
- (水の温度で季節を知ることができる)
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【 天 】 薄毛という わずかな希望に すがりつく (東京都) アデランスボーイ
- (人間は何事にも少しの希望を見出してすがりつく。もう生えるはずのない頭を鏡に映しているお父さんは、まだまだ数多いのに違いない)
【 地 】 何が出る 政治のドブ池も 抜いてくれ (東京都) 池の水全部抜きます
- (国会という政治の泥水はもはや黒ずみすぎて底が見えない。こういう政治の闇が溜まった池こそ、泥水を全部抜いてキレイにしてほしいもの)
【 人 】 宝くじ 眺めては拝み 夢を見る(神戸市) どうぞ今年こそ
- (困った時の神頼み。大金がほしい、この時とばかりにわか信心で神仏にお祈りして、今年はどうか大当たりを、という夢は宝くじを買えば誰でも見られるのである)
【 佳 作 】 横綱の 引退する日や われもまた (東京都) 定年退職
- (横綱は怪我に泣いた。我は年齢に泣いた)
夜中にも 何度もお辞儀を しているよ (阪市) 頻尿パパ
- (寂しいというより虚しい)
出ていけと 妻が夫に 派遣切り (東京都) 再就職は?
- (何とも言い難い家庭の事情)
妻スマホ ガラケーのわれを 馬鹿にする (横浜市) アナログは健在
- (えらそうな妻のドヤ顔)
【応募要項】 来月のお題 「お茶」なたの俳句・川柳をお寄せ下さい。お題に添ったものでなくても結構です。自作未発表のものをはがき1枚に3句程度まで。住所・氏名(ペンネームの場合は本名も)・年齢・電話番号明記の上で、ご投句願います。投句は返却しません。二重投稿厳禁。天・地・人の句には薄謝ないし粗品を贈らせていただきます。締め切りは毎月末。 住所 〒101─0052 東京都千代田区神田小川町3─7─16 報道ビル6F 「新政界往来」ひようたんなまず係まで。 |