編集後記
▽冬休み、ぶらり旅で小淵沢に寄った。神社前の広場で、太陽に溶接用グラスをかざして見ていた地元の老人がいた。
旅友と歩いていると、その老人は我々を呼びとめ、そのグラスを差し出した。
最初は「?」、やがて「!」に変わった。
老人同様に太陽にかざすと、左上が欠けている。丁度、部分日食が始まっていたのだ。感動の分け前を与えてくれた老人に感謝した。
そこで、ふと思ったことがある。
太陽を目で見ても、部分日食は確認できないが、カラーグラスを通すと見える。
中国の実体を見るのも同じかもしれないとの思いがよぎった。
多くの経済学者は、米中貿易戦争ほどばかげたものはないという。関税を掛け合って、共倒れになるだけの意味のない我を張っているだけだというのだ。
なるほど、経済や貿易という側面だけならそうかもしれない。だが、現実は世界の覇権をかけた戦いだ。米国が考えているのは経済的合理性ではなく、肉を切らせて骨を断ち、骨を切らせて心腑にとどめをさす戦いをやろうとしている。
米中貿易戦争の実体を見るには、経済ではなく少々、政治に偏向した「グラス」でしか見れないのかもしれない。
なお、戦いに犠牲はつきものだ。わが国は、その痛みに耐え抜いて、大きな果実を手に入れないといけない。
▽NHK朝ドラの「まんぷく」では、やっと1月半ばからラーメン開発が始まる。
萬平氏のすごいのは、普通の人だと夢想でしかないことを本気で考えることだ。
昔、ラーメンというのは屋台や専門店で食べるものだった。
萬平氏は、そうではなく、家で好きな時、好きな人と食べたいとの欲求を持ち続ける。
結局、その過度な欲望が「人類は麺類」ともいわれる爆発的な即席ラーメンブームを生み出す。
アップル創業者のスティーブ・ジョブス氏も結構、勝手な人だった。マイクロ・ソフトのビル・ゲイツ氏は相当な変わり者だった。
しかし、物分りの悪い、その偏屈さが世界の文明を新しい段階へと引き上げさせる原動力となった。現状に満足しない駄々こねパワーがものをいったのだ。
物分りのいい、いい子ばかりでは、飛躍的成長は望めないのかもしれない。
不満を抱えて悶々とする心を封印する仏教的諦観は、穏やかな人生を保障してくれはするかもしれないが、イノベーションとは遠いものかもしれない。
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国会両院記者会所属 新政界往来社 新政界往来3月号((創刊昭和5年) 2019年2月20日発行 |