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与野党、国政選挙対策に重点
自民:衆院2補選完敗で強い危機感
野党:候補者調整難航し限定協力へ

 大型連休明けの国会は、6月26日閉会の国会会期を延長してまでの与野党の対決法案がない。そのため、各党幹部の動きは、7月の参院選あるいは可能性が高まってきた衆参ダブル選挙への対策に重点が置かれる。衆院2補選で完敗した自民党には強い危機感が漂う一方で、野党側の候補者調整は難航しており、共闘とは名ばかりの限定的な協力にとどまったまま選挙戦になだれ込む可能性が大きい。

 今年は12年に一度、統一地方選と参院選が重なる「亥年選挙」だ。政党の足腰となる地方議員を選ぶ4月の統一地方選挙では自民党が堅実に議席を伸ばした。特に、41道府県議選では、全議席2277のうち、自民党は1158議席を獲得して過半数に達し、前回選挙の獲得議席を上回った。
 だが、参院選の前哨戦と位置付けられた同21日投開票の衆院2補選(大阪12区と沖縄3区)では自民公認候補が完敗した。第2次安倍政権が発足して以来、自民公認候補が国政補欠選挙で敗北したのは初めてだ。
 これに強い危機感を抱いた自民党および官邸は一策を講じた。事前調査などで補欠選挙敗北が濃厚となった4月18日に、安倍首相の側近である萩生田光一幹事長代行が「消費税増税延期」を示唆する発言をしたのだ。しかも、増税を先送りする場合は「信を問うことになる」と述べた。つまり、前回の増税延期表明の時に「国民の信を問う」として衆院解散・総選挙を実施したが、今回も7月1日に公表される6月の日銀短観の数字次第で衆院を解散する可能性に触れたのである。
 今回の参院選は昨年の公選法改正により、埼玉選挙区2増、比例代表4増の計6増となった。ただ、自民、公明が過半数を維持するためには53議席を獲得しなければならないし、憲法改正に必要な3分の2の勢力を構成するためには野党議員を含めて86議席が必要だ。
 すでに自民党は、参院選の1人区を情勢の厳しい順に「激戦区」「警戒区」「安定区」に分類して人員を配置して取り組んできた。特に、長野、岩手、宮城、山形、福島などの農業県を激戦区に指定。米国との厳しい貿易交渉では、日本の農産品の関税引き下げや撤廃について、「過去の経済連携協定で約束した内容が最大限」とするなど譲る姿勢を示していない。6月上旬に茨城県で開かれるG20貿易・デジタル経済大臣会合にあわせて来日するライトハイザー米通商代表と茂木敏充経済再生担当相との会談でも、農業票の離反を防ぐために「参院選後の大筋合意」を図る戦略で対米交渉に臨んでいる。
 「ただ、自民幹部にとって衆院2補選惨敗の痛手は大きい。もし参院選でも負ければ安倍首相の責任問題になり、引責辞任、首相交代まで考えられる。それを回避するための秘策が衆参ダブルなのだ」と自民党幹部は指摘する。つまり、萩生田幹事長代行の発言は単なるアドバルーンではないというわけだ。
 衆参同日選が実施された場合の安倍自民党の利点は、今回、県議・市議選で議席を伸ばした地方議員がフル活動できることにある。そして、もう一つの理由は、野党が共闘しにくい情勢を作り出せることにある。
 32を数える参院選1人区での勝敗は、野党が一本化できるか否かに大きく影響される。だが、6日時点での野党一本化は、愛媛、熊本、沖縄の3選挙区にとどまっている。その主な原因は、立憲民主党の枝野幸男代表が主導権を握って候補者調整を行う意向を示すとともに、他党に構わず独自に候補者を決定してきたことがある。
 例えば、山梨県では社民党籍の元東京・杉並区議を頭越しに公認してしまい、社民の怒りを買っている。新潟では北海道出身の弁護士を勝手に擁立してしまい、地元の反発を招いている。共産党との調整もこれまでになく厳しい。
 平成28年の参院選で共産党は自党候補を降ろして野党善戦に〝貢献〟したが、翌年の衆院選で比例票を減らした。1小選挙区あたり、1万から2万の票を持つとされる共産党の組織力に立憲民主などは期待するが、党勢後退を招いた共産党内には不満の声が渦巻いている。
 そのため、今回は統一候補の条件として「相互推薦・支援」を挙げ、すでに擁立した24人の候補者を一方的に降ろすことはない姿勢を示している。志位和夫共産党委員長は4月26日に行った枝野氏との会談で「選挙の協力は本来、相互的なものだ」と語り、安易な妥協はしない構えだ。
 志位氏に近い小沢一郎氏率いる自由党が国民民主党と合併したことも問題を複雑化させている。保守系の多い国民民主党の議員が共産党などとの共闘に消極的だからだ。岩手では元パラリンピック選手への一本化で各党が合意したが、国民民主党所属の現職議員が猛烈に反発している。小沢氏はまた比例代表の「統一名簿」作りを要求しているが、枝野氏にとっては受け入れがたいものだ。
 各党党首との個別会談をスタートさせた枝野氏には、参院選だけでも乗り越えなければならないハードルがいくつもある。それに加えて衆参ダブル選挙を念頭に入れて衆院選の候補者調整にも取り組み出してはいるが、時間も限られている。このため、「衆参ともに一本化は厳しく、限定的な対応にとどまるのではないか」との見方が現状では多い。

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