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「太平洋に浮かぶ不沈空母にしない」 米国が鮮明にする台湾を守りきる気迫

 中国国家主席の習近平氏は1月2日の年初演説で台湾に対する5項目の要求を出し、「武力行使をも排除しない」という不気味な底意を感じさせる圧力を台湾に科した。
 台湾総統の蔡英文氏は直ちに反論し「我々は一国二制度を断じて受け入れない」とはねつけたうえで「中国は民主主義を受け入れるべきだ」と主張した。
 こうした中国側の焦りとも思わせる姿勢に出ている背景には、米国が台湾を強力に支え始めたことに対する反発があるのは自明の理だ。
 トランプ大統領は就任早々、台湾の蔡英文総統との電話会談に応じた。また昨年には、米上下両院がいずれも全会一致で「台湾旅行法」案を可決、同年3月に大統領が署名した。
 さらに同年、追加する形で19年度の国防権限法が制定された。同法は、米国の台湾政策が台湾関係法と保障6原則に基ずくと再確認したうえで、米台共同軍事演習など防衛上の連携を強化すると明記された。
加えて同年12月31日に成立した「アジア再保障イニシアティブ」では、米台間の高官による相互訪問や台湾関係法に基づく台湾への武器供与、米艦船の台湾海峡の航行などが担保された。
 とりわけトランプ政権の台湾政策は、昨年10月4日に行なったペンス副大統領の演説で鮮明に浮き彫りにされた。ペンス副大統領は「中国は先端的武器の設計図などの技術を盗み、陸海空、宇宙における米国の軍事的優位を脅かす」と糾弾した。
 「米国は中国に対し一歩も引くことはない」と言い切ったペンス演説は「現代版ハル・ノート」を彷彿させる。
 中国が台湾への圧力を高めれば高めるほど、トランプ大統領の台湾傾斜は著しくなって当然だろう。
 トランプ政権の世界戦略はシンプルだ。イランやアフガニスタンからの撤兵にみられるように中東から手を引き、アジアに焦点を絞ろうとしている。その要は中国包囲網の形成だ。世界第2位の経済力を軍事大国化に振り向け、米国覇権に挑戦しようとしている中国の野心を打ち砕こうというのだ。
 台湾への支援もこうした対中戦略に基づいたものだ。いわゆる「台湾を太平洋に浮かぶ中国の不沈空母にしない」という、アジアの安全保障の要石である台湾を断固守りきるという気迫がそこにはこもっている。
 その意味からすると昨年、北京を訪問した安倍首相が、日中スワップ協定締結や中国の一帯一路の第3国での協力を打ち出したのは、少々軸足を中国にずらし過ぎの感が強い。
 米国が台湾を守る意思を鮮明にしている中、その国際政治情勢を読み切れていない永田町の脇の甘さが露呈している。 

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