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霞ヶ関ファイル

山下貴司法相 記者会見 4・16

在留資格「特定技能」

【大臣】今朝の閣議において、刑事訴訟法等の一部を改正する法律の施行期日を定める政令が閣議決定されました。これは、平成28年に成立した刑事訴訟法等の一部を改正する法律についてのものですが、この法律は、捜査・公判が取調べ及び供述調書に過度に依存している状況を改め、刑事手続を時代に即したより適正で機能的なものとし、国民からの信頼を確保するため、刑事手続における証拠の収集方法の適正化・多様化及び公判審理の充実化を図るものです。

【記者】労働力不足に対応する在留資格「特定技能」の技能を測る試験が先日の土日にかけて初めて、国外では介護、国内では宿泊業の分野で行われました。ですが対象分野のうち、技能実習生からの移行が可能な業種では、大半で日程すら固まっておらず、二国間協定が未締結のために試験がまだ実施できていない国もあるようです。こうした状況について、制度全体を所管する法務省としてどう受け止めていますか。

【大臣】在留資格「特定技能」における技能試験については、4月13日及び14日に、フィリピンにおいて介護分野の技能試験を実施し、14日、日本国内において、宿泊分野の技能試験を実施しました。
 また、日本語試験についても、フィリピンにおいて、4月13日及び14日に実施したものと承知しています。
 今後の試験実施予定についてですが、外食業分野の技能試験については、4月25日に国内2箇所(東京・大阪)で実施予定です。
 他の分野の技能試験についても、年度内に、準備が整い次第、速やかに実施される予定であると承知しています。
 先ほど、「二国間協定が未締結のために試験がまだ実施できない国もある」との御指摘がありましたが、協力覚書の作成は試験や特定技能外国人の受入れを適正かつ円滑に行うための環境整備の一つとして重要であることから、その作成に取り組んでいるところであり、本日までに4か国との間で署名交換を行うに至っています。
 4か国というのは、フィリピン、カンボジア、ネパール及びミャンマーです。
 なお、ベトナム及びモンゴルとの間では、内容についての実質合意に至っています。特にモンゴルについては、近日中に署名するという段取りができています。
 法務省としては、引き続き、その他の国についても、できる限り早く協力覚書を作成することができるよう、関係省庁とともに取り組んでまいります。また、各分野所管省庁と緊密に連携し、速やかな試験の実施に向けて準備を進めてまいりたいと考えています。

【記者】先ほど冒頭で御発言がありました、本日施行日政令が閣議決定されたことにより平成28年に成立した刑事訴訟法の改正が全面施行ということになりましたが、この点を受けて改めて御所感をお願いします。

【大臣】刑事訴訟法の改正は、捜査公判が取調べ及び供述調書に過度に依存している状況を改め、刑事手続を時代に即したより適正で機能的なものとするために、大きな意義を有するものと考えています。私自身も検事の経験もあり、今回の改正の意義については、新しい時代の刑事手続として大きな意義を有するものと感じています。
 改正法に盛り込まれた各制度については、着実な運用が必要であると思いますし、こうした運用を積み重ねて我が国の実務に定着していくということがまずは重要であると考えています。
 警察その他の捜査機関がこの改正法について、その趣旨等を踏まえ適切に対処していくものと承知しており、法務省としても適切な運用がされるよう引き続き尽力してまいりたいと思います。

記 者コラム

証拠による真相解明を

 改正刑事訴訟法の執行日を6月1日とする政令が閣議決定された。これで裁判員裁判対象事件と検察独自捜査事件で、逮捕・勾留された容疑者の取り調べの全過程が録音・可視化されることになった。
 「捜査・公判が取調べ及び供述調書に過度に依存している状況を改め、……証拠の収集方法の適正化・多様化及び公判審理の充実化を図る」と、山下法相が記者会見で述べたように、これまで容疑者の取り調べが自白に過度に依存することで、容疑者の人権を侵害するだけでなく、真相解明を妨げてきた部分があったことは否定しがたい。
 自白が真相解明に資することが多いのも事実だが、自白偏重はえん罪を生む恐れもある。それは、2006年から試行が始まった可視化を本格的に義務化すべきではないか、との議論が沸き起こるきっかけとなったのが、大阪地検特捜部による郵便不正事件のえん罪発覚だったことをみれば、明らかだ。
 捜査現場からは、取り調べの可視化で真相解明が遠のくとの声も出ているが、改正法では、取調官が十分な供述を得られないと判断した場合、実施しないなどの例外規定も設けられている。公平な取り調べを行いつつ、適正な証拠収集によって真相解明を図ることが時代の要請である。

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