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インタビュー

日本維新の会国会議員団副代表・選対本部長
下地幹郎氏に聞く

改革信念伝わった大阪ダブル選参議院選、目標は600万票

 4月の大阪府知事・大阪市長ダブル選は、党の浮沈をかけて臨んだ日本維新の会が勝利した。党創設者の橋下徹前代表が提唱した「大阪都構想」実現に向けてどう仕切り直しをするのか、また日本維新の会最大の課題である全国政党への脱皮に向けた展望をどう描くのか、日本維新の会国会議員団副代表であり選対本部長をも兼務する下地幹郎衆議院議員に聞いた。
(聞き手=松田学・本誌論説委員長)

──予想通り、日本維新の会は大阪ダブル選で、府知事、市長の両方を固めたばかりか、大阪12区での衆院補選でも勝利した。その要因をどのようにみておられますか?

 要因としては、日本維新の会の改革に対する強い信念が伝わったのではないか。あきらめずにやり抜こうというのが、1番目に評価された点だと思う。
 2番目には、「維新」といえば大阪都構想だけだと思われていたが、橋下知事をはじめ、松井知事、吉村市長が担ってきた府政・市政の実績として、IR(カジノを含む統合型リゾート)やG20(20カ国・地域)大阪サミット、2025大阪万博の開催もそうだし、さらに住み良い町の世界ランキングでも3位になるなど、「維新」というのは改革だけではなく、経済などもちゃんとやっているとの評価が生まれた。
 3番目は、戦略的にダブル選挙にもっていったことだろう。桶狭間の戦いのように、みんなが11月だと思って油断している中、奇襲作戦で相手がまとまらないうちに選挙に打って出たこと。

──選挙の結果、大阪都構想も新しいステージに立つわけだが、府議会は過半数をとったものの、問題は過半数を割った市議会の方です。公明党をどう取り込むかが決め手になるとされているが、手立てはあるのでしょうか。

 公明党も、この結果を正しく評価してくれるのではないかと期待している。この選挙の結果を重んじなかったらおかしい。
 自民党には、そのままやっていただく。そして、大阪都構想には自民党は相変わらず反対、公明党も立場は変わらないとしても、住民投票を行うことについては、今度の選挙で民意が示された。そうなると住民投票を反対する大義名分は薄れたはずだ。そうやって大阪都構想を進める道筋が立つ。そうした形になってくるのではないか。

──大阪の住民の方々に実際に話を聞いても、大阪都構想のメリットが実感できないという方も結構いらっしゃいますが?

 一番は二重行政を排するということだから、大阪府と大阪市が一つになることで、市民の負担が軽減されることになる。例えば水道料金も、これから上がる可能性があるが、大阪都が実現することで、これが上がらないようになるということなどは、住民の方々に実感していただけるメリットになるはずだ。
 何より、ムダを省くことが目的ではなくて、それで捻出された予算を市民が享受できるようになる。

──かつて維新は、大阪で行ってきた改革を国政レベルでも実現すると標榜していたが、現在でも、そうした基本的な方針は同じなのでしょうか?

 もっと大きく広がれば面白いと思う。ただ、「大阪での改革を」と言っても、それだけでは東京など他の地域にはアピールできない。それよりも、今回の統一地方選でもそうだったが、それぞれの地域に合わせて、「東京なら東京でこういう改革をする」ということを掲げている。
 行政でのメリットがきちんと出れば、そういうことをしっかりアピールする政治家を選びやすい環境になってくると思う。

──日本維新の会は衆院補選でも勝利したが、次は参議院選ということになる。これからの国政選挙の戦略はどう考えているのでしょうか。

 参議院選における目標設定はこれから決めることになる。基本的なわが党の考え方には、大阪、兵庫、愛知、東京、千葉、埼玉、神奈川、福岡は落とせないというものがある。これが選挙区で戦える最大の基準かなと思っている。
 比例は、600万票を目標に、6人当選させたい。夢の数字ではないので、しっかり取り組んでいきたい。
 まずは12人当選を目標にし、18人ぐらいの数になれば、一政党として参議院でも議会で大きな発言権を持てる。

──選挙の顔としては、私もかつて橋下人気のおかげで当選できたようなものでしたが、いずれ橋下さんが政界に復帰する可能性は?

 橋下氏の性格からして、弱い「維新」を助けるために義侠心を発揮するような形で出てくることはない。今回のように「維新」が勝って、参議院選挙でも一定の勝利基準が立ったところに、存在感を示そうとすることはあり得ると思う。
 橋下氏は、「国政政党である日本維新の会をつくったのは間違いだった」とまで言う人だ。私も橋下氏が絶大なる創業者であることは分かるが、明日から来てくださいとなると、「維新」そのものが崩壊する。
 松井代表の下で、ある一定の力をつけ、成果を出した。今度は参議院でも成果を出し、中央政党としてやれるようになり、「政権奪取のために来てくれませんか」という時に、彼は来る。

──維新の会は、大阪では人気があっても、東京とか関東ではどうなのか。何を売り物にするのかが問われてきます。

 今回、東京区議会議員選挙でも19人中、12人が当選した。橋下氏がいない中で、「維新」が評価された。東京で口をすっぱくして訴えたのは、「教育無償化」と「財政再建」だった。

──では、これから国政では何を維新の政策目標として掲げることになるのでしょうか。

 一丁目一番地は憲法改正の中に、教育無償化を明記することだ。
 これまで私たちが声高に申し上げていることで、これをやっていきたい。

──教育無償化ということでは、安倍政権は今般の消費税率引上げで得られる財源を充てることとしていますが、維新の財源案は?

 今回の消費税の軽減税率の対象の中に、教育費を入れ込むとなっている。
 戦後まもなく憲法をつくった時、あの当時に義務教育の無償化を入れたというのは勇気があった。
 あれだけの戦争の後で、国庫は空っぽだった。ましてや食うことが精いっぱいで、就学意欲などない中において、義務教育の無償化を入れたということは、今、私たちが保育園から大学まで教育の無償化だと言うのと、あの当時に言うのとどっちが難しいかと聞かれれば、恥かしいくらいだ。
 しかし、あれを言い切って今の日本がある。あの時、財源を確保してから言ったのかというとそうではなく、まず義務教育無償化という目標を設定して、予算は後から何とか集めて来て義務教育の無償化をやった。「国家百年の計」と言われる教育の大黒柱を据えるには、こうした覚悟が問われる。
 だから、その考え方でスタートしないといけない。しかし、それだけでは国民の理解を得ることは難しいから、財源に関しては、しっかりと示していく。まず増税をして財源をつくるということはしない。今、100兆円規模の国家予算を組んでいるが、ムダを省き、国有地などの国有資産整理や官から民へ業務を移すことで財源をねん出する。

──国有資産などは収益性のあるものをきちんと評価して、うまく活用する、インフラの運営にはコンセッション方式を導入するなど、財政の運営自体を改革していくという方針なのでしょうか?

 国有地の売却では年間3000億円から5000億円。公社公団など、様々に持っているものを売りぬいたり、ムダを省くところでは1兆円規模とか、税収部分の予算はこれだけ充てましょうとか。これをまとめていけば、財源は十分に手当てできる。

──維新として、財政全体の財源案の姿をまとめて示すということになるのでしょうか?

 そうするつもりだ。

──憲法改正について、維新は改憲派だが、どのようなロードマップを描いていますか?

 とにかく、500日近くも憲法審査会が行われていないという、非現実的なことはやってはいけない。これから論議を深めていくことになってくる。
 憲法改正の発議には総議員の3分の2以上が両院で必要という3分の2条項があって、改憲ロードマップは選挙結果と絡んでくる。
 結局、今度の参議院選挙がどうなるかで、ロードマップはできる。その選挙結果を勝手に皮算用するわけにはいかないから、7月の参議院選挙の結果が出たところで、具体的なロードマップがつくられることになると思っている。
 自民党、公明党だけで3分の2を確保できるのか、あるいは3分の2を取れなかった場合、維新との組み合わせになるのか。憲法改正を中心軸に据えながら、永田町が大きく動くことになる。
 立憲民主党はどうなるか分からないが、国民民主党が賛成についてくるとなれば、いろいろな道筋がたてられる。そこをじっくり見ていく必要がある。

──今度の参議院選挙では、憲法改正はテーマになり得るのでしょうか?

 憲法で国民の信を問うというのでは、自民党に勝ち目はないだろう。  しかも、イデオロギーが絡む9条問題などいろいろある。私からすると、憲法改正選挙というのはやってもらいたいが、自民党にとっては有利ではない。むしろ、憲法改正は公約にしてはいても、もっと身近な問題で信を問わないと勝てない。

──今度の消費税の増税も先送りされるのではないかという観測が一部に出ており、自民党要路からもそんな発言が飛び出しているが、どのようにみておられますか?

 消費税は10月に10%に引き上げられる予定だが、参議院選挙は7月だから、上げないということにしておいて、選挙後に上げる。これは従来からの自民党のやり方だったと思う。
 だけどマスコミが書くから、選挙の時は、消費税はそのまま予定通り上げると言いながら、本当は上げないと匂わす。これは計画的にやっているとしか思えない。

──沖縄では基地問題がいつも選挙の争点になるが、実態はどうなのか? どのような解決策を考えておられますか?

 選挙で沖縄3区補選の結果を見ると、暴風だったオール沖縄勢力の風が強風注意報ぐらいに変わってきた。米軍基地問題では普天間基地を辺野古に移すのに賛成か反対かだけではなく、嘉手納基地周辺の騒音もあるし伊江島での飛行訓練もある。これはどうするのか。普天間の辺野古移設を潰したら、これらもすべて解決するのかというと、そうはならない。
 この問題を解決できる人が必要だ。以前は100対0くらいの勢いで辺野古移設反対一色だったが、今では70・30ぐらいまで話ができる雰囲気が出てきている。
 普天間基地に反対し、変えるというだけでなく、総合的な合理性がもう少し必要になっている。
 23年前、橋本総理とモンデール米大使が普天間返還で合意した時、普天間は大体、7万回の離発着を繰り返していた。それが今、8000回だ。これに貢献したのは安倍総理だ。飛行訓練を岩国に移転したりして。それで今、嘉手納基地が5万6000回、岩国が4万回、厚木が5万回ぐらいだ。
 離発着回数が一番少ない普天間基地について、安倍総理は所信表明演説で、幾度となく「世界一危険だ」と言っているが、その根拠を示さないといけない。

──住宅地と近接しているという問題があるのでは?

 住宅地近接では嘉手納も同じだ。
 岩国だけは少し違うが、厚木も横田も一緒だ。
 今度、私たちが提案している馬毛島への訓練移転などがうまくいくと、普天間での離発着回数は3000回にまで減少する。安倍総理は、離発着回数3000回の飛行場を世界一危険だと決めつけて、一兆円規模の辺野古をやる合理性を説明しないといけない。
 沖縄県の玉城デニー知事にも言っているが、辺野古をやめろというのだったら、代替地を探すまでのしばらくの間は普天間の使用を認めるべきだ。
 ただ、これを認めるとなると、玉城知事の支持母体である共産党や社民党は離れる。
 しかし、辺野古反対のための反対ではだめだ。
 安倍総理が対案を言うわけにはいかない。誰が対案を言えるのかというと、玉城知事しかいない。
 もしも玉城知事が、「辺野古をやめてもらったら、普天間の10年間使用を認める」というようなことをおっしゃったら、安倍総理もそのことを検討する価値が出てくる。
 それができないところに、今の政治の問題がある。

──そのような動きは現実にあるのでしょうか。

 この話は丁寧にやらないとだめだ。まずは私は馬毛島への訓練移転に決着をつけてからだと思っている。

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