日本経営者同友会 政経研究委員会委員 兼子暁吉氏

半導体握れば世界一変

中国の野心、香港の次は台湾

 台湾に対する中国の挑発行為が、日常茶飯事になってきた。今秋の共産党大会で総書記続投を目指す習近平にとって、台湾併合は最大の政治課題だ。日本経営者同友会政経研究委員の兼子暁吉氏は「半導体を中国に握られると、すべてが一気に変わる」と懸念を隠さない。

──大局的に経済はどう動いていると見るのか?
世界経済は米中が中心にある。
米経済はいいと思う。
中国は見えないところが多い。イーコマース(EC)市場は、毎年120%位伸びていて好調だが、国内経済が弱くなっている。
米中覇権戦争がどっちに転ぶのかが分からない状況の中、日本はどちらをとるのか迫られることになる。
世界経済に左右される日本経済は、いい方向に向かっているのかどうか、まだ何とも言えない。

──中国は恒大集団の凋落があったが、展望は?
恒大集団の債務不履行の影響というより、不動産市場が崩れることによって、中国国内の負のスパイラルが始まる懸念がある。
現在、キャッシュフローの面で始まっているとも見える。
ただ、2008年のリーマンショックのような世界的な株価下落・金融危機に陥るとは思っていない。

──理由は?
確かにウォール街が資金を入れ上場させたりして、儲けてきたが、それだけじゃないと思う。
中国が持つ宇宙産業だったりIT産業など軍事産業を含め、そのパイは大きなものがある。
中国の産業力は、先端技術や資金を入れて、しっかり利益を出してきた。恒大が潰れても、それは一部分でそれが全部というわけではない。

──米中新冷戦とも言われるが、その確執の本質は何か?
共産主義と資本主義のイデオロギーの違いだと思う。

──米国は共産党独裁政権の中国を崩壊させる意図を持っている?
米がそういう意図を持っているとは見えないが、中国の一帯一路構想を阻止したいのではないかと思う。

──一帯一路の戦略的目的は何か?
世界覇権を構築するためのステップだ。

──台湾海峡がきな臭くなってきた。
中国は沖縄を含め台湾を必ず取る気でいる。実際に香港は取った。
次は台湾が焦点となる。台湾はとても重要なところだ。とりわけ半導体がメインとなる。
その半導体を中国に握られると、すべてが一気に変わってしまう。

──半導体は21世紀の産業のコメだ。
軍事産業とかIT産業全部に使われる。

──台湾の地政学的価値は?
第一列島線の防御ラインに位置する要衝だ。

──中国はどう動くのか。孫子の兵法では、戦わず取るというシナリオがベストだが、どう読むのか。
台湾を政治工作でかく乱してくる。選挙で中国寄りの政権構築に加担し、橋頭堡を築く。それで統一に向け中台の政治決着に持ち込む。それが中国にとっての理想だ。
ただ何年か待っても、難しいようだったら武力で台湾奪取シナリオも考えておく必要があろうかと思う。

──中国が持つ現在の武力は、台湾の後ろ盾となっている米国の干渉をはねのけるパワーがあるとみているのか?
それは厳しいだろう。
だからこそ、中国とすれば米中の軍事的衝突ではなく、台湾を治めるために中国人民解放軍は必要だよねというところに持っていきたい意向がある。

──台湾側が人民解放軍に来てくれというふうに、持っていくということか?
そうだ。
台湾内部で内乱がおきたりとか、自分でその火種をまいて謀略をやるのが中国共産党のお家芸でもある。

──それではマッチポンプだ。
そこまでの執念があるということだ。

──米経済はこれから金利が上がってくる。
今まで金融緩和策で、お金がじゃぶじゃぶだった。
株高も低金利政策のおかげでという側面があるが、それが全部でもない。
かなり大きな要因ではあっただろうが、金利が上がっても、それでもこれからもっと高値を目指していってもいいのじゃないかと思う。

──米は成長産業を支えていく投資やイノベーションをダイナミックにやる国柄だ。
そうだ。インジェクションというか、いろいろなものを取り入れて競争力を身に着け、企業価値を高めていく手法はすごいものがある。それは企業買収であったり形は様々だが、日本では企業の歴史を大事にする風土があって、乗っ取りとかあまりなじまないのが事実だ。
米はそういう文化ではなく、今より明日が大事。だからより短期間で、成長しようと努力を惜しまず、株価や時価総額をより上げていくことへの執着が強烈だ。

──四半期決算という短期決戦を迫られる米国型資本主義のバイオリズムがある一方、中国は100年の計という歴史的ダイナミズムも持つ。この異質な国同士の米中確執は、何が勝敗を決める決定打になるのか?
共産党がどこまでできるのかというのと、どこで折り合いをつけてやめるのか。ただやめるとは思えないので、習近平がどこまで生きるかにもよるのかもしれない。

──中国のイノベーション力は?
ITに特化すれば、すごいものがあるのは事実だ。
ただ、中国人にゼロから1を生むイメージはない。それでも1を100にする力とか、1を別の1にする能力はたけている。
元の技術は米から買収してきたりとか、盗んできたのか分からないが、それを別の形にする力はある。
より早くて便利な進化系のものを作る能力はある。
中国は現役世代がめちゃくちゃ若く、発想が自由なのかもしれない。

──広州とか深圳といったIT系企業が顕著だ。それは北京の政治的呪縛から離れているメリットが活かされたようにも思う。中国のイノベーション力をそぎ落としているのは、強権を握っている共産党独裁政権そのものでは?
強権を開発独裁的に利用して短期間でインフラを整備したり成長企業を立ち上げたりしてきた側面を見落としてはいけないが、言論の自由を封じるような政権に最終的なイノベーションのダイナミズムを期待することはできない。政治的抑制があると自由な発想は得られないし、得られても限界がある。
そもそも企業を大きく育てても、最終的には共産党のものになるような社会では起業精神もなえてしまう。

──政治家に対する注文は?
政治家として本当に何をしたいか、まずはじっくり考えてほしい。
今は選挙を勝つための公約であったりとかのイメージがある。
本当に日本のために何が一番必要なのか考えてもらいたい。

かねこ あきよし

1993年生まれ。静岡県磐田市出身。2016年、神奈川大学経済学部卒業。2016年、YON437株式会社設立。現在に至る。日本経営者同友会政経研究委員会委員。