沖縄銀行糾弾第4弾 本誌特報取材班

地場産業育ててこその金融機関

マチ金的回収法を問う

M&Aの強要

下地常雄氏は平成21年、久米仙酒造㈱の全株式を創業家から引き継いだ。
それは久米仙酒造が中国進出でとん挫したことで資金難に陥り、出資要請があったからだ。
下地氏がその出資要請を引き受けたのは、地域の産業振興により故郷の再建につながると思ったからだ。
だが現実は、銀行からとんでもない鞭を当てられ久米仙酒造は、存続の危機に立たされ続けることになる。
平成22年以降、沖縄銀行の法人部担当だったK、S、Kが、創業家で当時の代表取締役平良正諭輝に対し、「破産手続きに入るように」と強引に迫ったばかりか、社主となった下地氏の株主責任までも追及した。
結局、事業体再生どころかM&Aを強要することで、老舗の久米仙酒造が新興酒造会社に吸収合併されるシナリオが描かれるようになった。
これでは銀行による融資先の企業から債権回収を優先する貸し剥がしの犠牲になりかねないと、中小企業再生支援協議会を通じ再建案も協議したものの、沖縄銀行と折り合いがつかず、やむを得ず断念した経緯がある。

新設設備競売の危機

近年では、沖縄銀行の子会社である美ら島サービサーが窓口となり、沖縄県信用保証協会、沖縄振興開発金融公庫との連携により債務を返済してきた。だが平成31年1月、この枠組みそのものが沖縄銀行によって一方的に解除され、新設したばかりの工場設備などを含めた工場、根抵当物件すべてを競売にかけると宣告された。
さすがにやりすぎとばかり、信用保証協会や振興開発金融公庫も再生途上の地域産業を切り捨てるのは如何なものかと困惑、窮地に立った久米仙酒造は、沖縄銀行と直接話をしたいと度々持ちかけたが、拒否され続けた。
第一抵当先である信用保証協会も「なぜ任意整理の方向性を探らないのか」と沖縄銀行に相談を持ち掛けてくれたものの却下されたとのことだった。
仕方なく窓口の美ら島サービサーを訪問、同席した地元取引先から億単位での任意売却の支援を申し出てもらうことになったが、窓口担当者から「取引先の○○さんに法的に競売に参加してもらえばいいのでは」と事実上、門前払い扱いだった。
結局、投資済みの新設備を含め工場を競売にかけるという沖縄銀行の手法に対し、一昨年10月23日、那覇地方検察庁へ告訴状の提出、同年12月25日、検察庁は刑事事件として告訴受理に至った。
それを受け沖縄銀行は同日、突如として久米仙酒造の債権を根抵当権ごと沖縄債権回収サービサーへ売却。いわゆる一般的に債権飛ばしという挙に打って出た。

一方的な強要

その沖縄銀行が株主であるサービサーとは昨年7月、常勤顧問のT氏や上席調査役・弁護士のM氏、ソリューションビジネス部のY氏などとの話し合いが持たれた。
その時の話では、久米仙酒造は債務超過の状況ではあるものの、コロナ禍の中においても売り上げは年々伸びており、企業再生の価値があるとの判断ができることから、共に再生の道を探していこうとの内容だった。
また同月、サービサーからは沖縄振興開発金融公庫、沖縄県信用保証協会を伴い、事業再生案の基本的枠組み(1~5)が提示された。何と沖縄銀行と同じ手法であった!!
1、中小企業支援協議会の利用(他公的機関活用)
2、一定額の債務免除(公庫及び保証協会の場合、支援協スキームでなければ債務免除は困難)
3、株主責任⇩全株式の譲渡(事前に確約書や覚書が必要)
4、経営者責任 (既に創業家の代表は退任している)
5、新たな取引金融機関の確保
また、突如としてサービサー・ソリューションビジネス部のY氏より債権返済を開始してほしい旨連絡が入り、支払いを始めるに至った。
ただし、この返済項目は元金に対するものではなく、あくまでも損害金に充当するとのことで返済を始めている。このような手法はサービサーとして如何なものであろうか。

別途事例ではあるが、沖縄銀行の子会社美ら島サービサーで債権回収に関して、損金で処理されているにもかかわらず、元金、利息、損害金まで回収された実例もある。これらはサービサー業務ではなく、まるでマチ金手法ではないか。このようなことが横行されている現実を金融庁は知るべきである。

反「新しい資本主義」

久米仙酒造は2年来の厳しいコロナ禍で、生き残り策を講じ徹底した業務改善や新市場拡大に動き、他産業が委縮を余儀なくされる中、売り上げ増を果たし往年の赤字体質から脱却し、成長軌道への道を担保しつつある。
そうした成長の芽を伸ばしてこそ、未来は開けていくし地域の産業力は底力を持つようにもなる。
それを債務者の犠牲の上に利益をたたき出すことのみを追求するような現実があれば、それは岸田新政権が看板に掲げる「新しい資本主義」にも反した行為でしかない。

銀行の公的役割

これまでたびたび本誌は、沖銀のサービサー問題を糾弾するリポートを示してきた。
何も沖縄銀行が憎いわけでも、業務妨害したいわけでもない。
地域共同体を1つの身体に例えれば、銀行は手足や臓器など各組織に栄養と酸素を供給する心臓に匹敵する。銀行が健康、健全であってこそ地域が活性化する。銀行が地域経済活性化のための最大のパワー源であることに誰も異論を唱えることはない。それだけ公的な役割を担っているということだ。

特権の上に胡座をかくな

沖縄は戦後27年間、米国に統治された歴史的背景があり、沖縄の経済を守るとの大義名分から地域金融機関に対する特権が認められている。具体的には本土の大手金融機関が入れないような政治的バリアに守られている。
だが、そうした特権の延長線上に位置する銀行は特権に胡座をかくことなく本来の公的な役割を遂行して欲しいと願う。銀行が病むことは、すなわち沖縄の経済が弱体化することを意味する。
それだけは避けたいと願うばかりだ。

次号に続く(本誌特報取材班)

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