霞ヶ関ファイル

記者会見 7・8

木原稔防衛相

日比防衛装備移転

【大臣】フィリピンとの防衛相会談を実施した件でございます。本日12時05分から約55分間、フィリピンのテオドロ国防大臣との間で、日比防衛相会談を実施しました。会談では、日比防衛協力・交流の近年の深化を象徴する日比円滑化協定の署名が、マルコス大統領立ち会いの下、実現したことを歓迎しました。また、二国間協力については、警戒管制レーダーの移転といった日比間の安全保障面での協力が近年進展していることを歓迎するとともに、今後も様々な分野で両国間の防衛協力・交流を進めていくことで一致いたしました。防衛省・自衛隊としては、二国間及び日比を含む多国間での防衛協力を一層深めていきたいと考えています。

【記者】今おっしゃった防衛装備移転についてなんですけれども、具体的な進捗状況について伺いたいと思います。また加えまして、今後のフィリピンへの防衛装備移転に関して、フィリピン側のニーズや地域情勢などを踏まえて、日本としてどのように防衛協力を進めていくのか、教えていただけたらと思います。

【大臣】今般の会談では、警戒管制レーダーの移転の進捗を歓迎するとともに、今後の防衛装備・技術協力の強化に向けて幅広い協議を行いました。他方で、具体的な内容については、相手国との関係もあるため、お答えできないことは御理解を願います。その上で、我が国にとってフィリピンは、基本的価値を共有する戦略的パートナーでありまして、フィリピンとの防衛装備・技術協力を推進することは、我が国及び地域の平和と安定の確保において重要であります。また、一昨年に策定された国家安全保障戦略において、防衛装備移転は、力による一方的な現状変更を抑止し、望ましい安全保障環境を創出するための重要な手段とされました。さらに、防衛装備移転三原則においては、同盟国及び同志国等との安全保障・防衛分野における協力の強化、ひいては地域における抑止力の向上に資するものとされています。このような考えの下、防衛省としては、フィリピンとの防衛装備・技術協力を更に進めていく考えです。

【記者】海上自衛隊で特定秘密を、資格がない隊員に長年扱わせていたとして、酒井海幕長が引責辞任するとの報道が相次いでいます。事実関係と、陸や空の自衛隊も同様の事態が確認されているか教えてください。また、あわせて、内局の幹部でもパワハラ・セクハラなどで処分されるとの一部報道がありますが、それについても事実関係をお聞かせください。
【大臣】防衛省におきましては、今年の4月26日に公表しました2件の特定秘密漏えい事案を受けまして、私の指示の下で、省全体として、類似の事案の有無について調査を行っているところであります。今も進行形であります。現段階で、その内容を申し上げるのは困難であることを御理解ください。また、後段の内局部局の件については、報道があることは承知をしておりますが、内局部局の幹部職員をハラスメントにより懲戒処分する方針を固めた事実はございません。

【記者】近年ですね、南西地域の防衛体制の強化、これに注目が集まっていますが、ウクライナ侵略を続けるロシアが中国軍との軍事的連携を強める中、北方の防衛、北の守り、これをどのように進めていくか大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】ロシアによるウクライナ侵略は、国際秩序の根幹を揺るがすものです。また、ロシアは、我が国の固有の領土である北方領土を不法占拠し、極東地域においても活発な軍事活動を継続しており、特に近年は中国軍と爆撃機の共同飛行や艦艇の共同航行、各種訓練を実施するなど、中国と軍事面での連携を強化しています。
このような戦略環境の変化や我が国の周辺国等の軍事動向を踏まえ、北海道においては、高い練度を維持した1個師団、2個旅団、1個機甲師団を保持、そして、我が国に飛来する弾道ミサイルに加え、極超音速滑空兵器HGV等の新たな経空脅威を探知・追尾し得る固定式警戒管制レーダーを備えた警戒管制部隊の保持、そして、弾道ミサイル攻撃への対応も含め、多様化・複雑化する経空脅威に対応し得る高射部隊の保持、さらに各種無人機の導入、活用による情報収集・警戒監視・偵察・ターゲティング、いわゆる「ISRT能力」の強化、90式戦車の10式戦車への換装の推進、火薬庫等の整備、そういったあらゆる取組を通じ、北海道において、引き続き隙のない防衛体制を保持していく考えでございます。

【大臣】海上自衛隊ヘリコプターの墜落についてであります。4月20日に発生した海自ヘリコプターの墜落事故について、行方不明者7名について、死亡と判断するに至りました。懸命な捜索活動を行ってきたものの、このような状況に至り、誠に残念であります。大切な肉親を亡くされた御家族のことを思うと断腸の思いであります。謹んで御冥福をお祈りいたします。今回の事故は、国防の任務遂行のため、自衛官として崇高な使命感と責任感を持って、極めて重要かつ高度な訓練に従事している最中に発生したものです。原因究明と再発防止に万全を期するとともに、国民の負託に応えるべく、高い能力と即応性を維持し、一致団結して引き続き国防の任務遂行に励むよう、防衛大臣として、自らその先頭に立ち、全力で取り組んでまいります。今般の事故で殉職した隊員のこれまでの功績を称えるとともに、御霊をお送りするため、6月22日に大村航空基地において、そして6月30日に小松島航空基地において、それぞれ葬送式を実施する予定です。事後、海幕からプレスリリースをいたしますので、詳細についてはそちらにお尋ねいただけたらと思います。
日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議、いわゆるDICASの実施について報告します。本年4月の日米首脳会談において、日米防衛産業協力・取得・維持整備定期協議(DICAS)の設置に合意したところですが、これを踏まえ、6月9日、日曜日、深澤防衛装備庁長官及びラプランテ米国防次官、取得・維持整備担当ですが、この二人を共同議長として、第1回協議を開催しました。本協議では、日米間での防衛産業協力を進めるという前提について、日米双方の認識の一致を見た上で、今後具体的な協力に向けた議論を進めるために、ミサイルの共同生産、艦船及び航空機の維持整備、装備品にかかるサプライチェーンの強靭化について、それぞれ作業部会を設立することとなりました。さらに、DICASの開催に伴って、日米の防衛産業を招待し、6月10日、月曜日にラウンドテーブルを実施しました。今回の協議結果等を踏まえ、今後、防衛産業協力の深化に向け、実務者間で具体的な議論を進めてまいります。

【記者】今、御発言ありましたDICASについて、改めて開催されたことについての大臣の受け止めをお聞かせください。また、本日、今おっしゃられた艦船の整備の作業部会が開催される予定ですが、これについてどのような議論を期待をされますでしょうか。あわせて、DICAS、日米「2+2」で議論の進捗を報告するということですけれども、「2+2」開催の時期について、めどなどありましたらお願いいたします。

【大臣】まずは受け止めということですが、我が国は、国家防衛戦略等に記載していますとおり、装備品の共同開発・生産や米国製の装備品の国内における生産・整備能力を拡充する方針を打ち出してきました。また米国も、1月に国家防衛産業戦略(NDIS)を公表し、インド太平洋地域における同盟国・パートナー国との共同開発、共同生産及び共同維持整備の追求を目指しています。こうした日米の両政府の方針を踏まえ、本年4月の日米首脳会談において、DICASを設立することとされ、一昨日、第1回の協議が開催されたということです。9日の協議では、防衛産業協力を進めるに当たり、日米双方が裨益する互恵的な事業とすること等の前提を確認した上で、先程申し上げましたように、ミサイルの共同生産、艦船及び航空機の維持整備、そして装備品にかかるサプライチェーン強靭化について作業部会を立ち上げるなど、今後の具体的な議論に向けて体制を整える観点から成果があったものと考えています。それから2番目は、本日開催される、艦船整備作業部会についてですが、日本国内において米軍艦船の維持整備を行う上での課題や改善策について、充実した議論が行われるということを期待しております。それから「2+2」でしたね。開催時期につきましては、現時点では決まっておらず予断をもってお答えするというのは、相手もありますので差し控えます。