霞ヶ関ファイル

記者会見 7・2

小泉龍司法相

選択的夫婦別姓制度

【大臣】今朝の閣議ですが、法務省請議案件として質問主意書に対する答弁書が9件閣議決定されました。
続いて、補完的保護対象者に対する定住支援プログラムの現場の視察について御報告させていただきたいと思います。
昨日、コルスンスキー駐日ウクライナ大使とともに、補完的保護対象者に対する定住支援プログラムの日本語のクラスを視察してまいりました。
全体で104名の方に参加していただいていますけれども、昼間の対面のクラスに行ってまいりました。昼間のオンラインのクラスあるいは夜間のオンラインのクラスと分かれていますけれども、少人数学級で日本語を習得していただくという現場を見てまいりました。
受講者の方々とまた、授業の後に意見交換をさせていただく中で、様々な意見、希望があれば出してくださいとも申し上げ、コルスンスキー大使からも受講者に対する激励の言葉、期待の言葉がありました。授業後の意見交換では、日本語を勉強してウクライナに帰国したら、ウクライナの復興に役立てたい、日本語を勉強して習得した技術、経験を母国に持ち帰って復興に役立てたい。こういう意見が出ていました。
また日本の支援は、大変手厚いという評価もいただきました。そして、制度だけではなくて、国民全体がウクライナ、ないしウクライナ人を支援してくれていると、それも感じるということを言っていました。
こうした御意見のほか、プログラム終了後も日本語教育や就労支援を続けてほしいという御要望もありました。大使からは、定住支援プログラムの提供等に関する日本政府への感謝の言葉、そして受講者の方々に対しては、日本とウクライナの懸け橋となって、日本でも求められる人材として頑張ってもらい、やがてウクライナが復興の段階に入った時には、母国で働いてもらえればありがたい。また日本からウクライナに進出する企業を向こうで稼動させるために、日本で培ったノウハウを本国で是非いかしてもらいたい、そういう話をされています。
いずれ、やがて復興という時期が、そう遠くない時期に来るだろうというようなお話をされていらっしゃいました。
個々の受講者の方々からは、授業の在り方等についても、具体的な要望がありましたので、それを踏まえて、授業の在り方をしっかりと改善していって、9月までのクラスなのですが、一定の成果を上げたいというふうに思っております。

【記者】6月28日に大臣に経団連幹部が選択的夫婦別姓制度の早期導入を求める提言を提出しました。提言では関連法案の提出などを求めていますが、制度に対する大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】6月28日の金曜日、経団連のダイバーシティ推進委員長、ほか役員の方々と面会をいたしまして、御指摘の提言書を受け取りました。御指摘の提言は、夫婦同氏制度が女性の活躍に対する障害になっているとの認識の下、選択肢のある社会の実現を目指す観点から、希望すれば、生まれ持った姓を戸籍上の姓として名乗り続けることができる制度の早期実現を求めるものです。その提言の御趣旨はしっかり受け止めたいとその場でも申し上げました。その上で現在の状況を少し整理して申し上げれば、こうした御提言がある一方で、国民の間にはまだ様々な、御意見、あるいは懸念、そういったものもあります。そういうことでありますが、また一方で、この経団連の提言のような様々な動きもあります。
こういった状況を我々は、強い関心を持って、しっかりと見極めていき、積極的に注視し、こういう立場に立って、それぞれのお考えや提言といったものに注目し、また理解して我々の知見をアップデートしようというスタンスで今いるところです。
やはり、国民の意見を代表する国会の場において議論が進むということも期待したい。政府の検討と並行して、国会でも議論が進むことを期待したいというふうに思っています。

検察の在り方

【記者】検察の在り方に関してお尋ねします。昨今、検察による不適切な取り調べが問題となっていますが、大臣は先の国会での審議で、今後、各高検に出向いて、検察の在り方について議論し、督励していきたいとの御意向を示されました。その後の進捗状況と、各高検との議論の中で、大臣が特に言及したい点を教えてください。

【大臣】先の国会では、皆様もよく御存じのように、検察に対する様々な御批判、あるいは厳しい意見というものが出されました。
国会に対して連帯して責任を負う内閣の一員である法務大臣として、誠心誠意お答えしたわけです。法務大臣が個別の案件に関わることは、これは極めて慎重でなければならないと思いますが、一般的な指揮権というものをしっかり保持しているわけですので、国会でいただいた御意見を踏まえて、検察の適正な捜査、あるいは捜査・公判の適正性の確保、更にいえば13年前に策定されました「検察の理念」の徹底といったことをただ上から下ろすだけではなくて、各高検に行って議論し、意思疎通して納得してもらい実行して、それを下に下ろしてもらうということを国会閉会中はすぐやるべきだろうというふうに考えました。まず、6月27日の木曜日、名古屋の高等検察庁、同じ建物に名古屋地検も入っていますので、地検と高検の幹部の方と率直な意見交換を行い、今申し上げた「検察の理念」の徹底、捜査・公判の適正性の確保、そしてそれを部下職員に指導を徹底してもらいたいということを話し合いながら、共通認識を作り、申し上げてきました。しっかり受け止めていただいたというふうに感じております。

「別姓」俯瞰できない経団連

記者コラム

日本経済団体連合会が選択的な夫婦別姓制(別姓)の導入に向けた法改正を求める提言をまとめた。十倉雅和会長がかねてから「女性の働き方や多様な改革をサポートする一丁目一番地」と大仰に語っていたように、別姓導入に対する経団連の力の入れようは相当なものだ。

だが、提言を読むと、熱の入れように反して、日本人にとって「姓」が何を意味するのか、その点についての洞察の深さがまったく伝わってこない。個人のアイデンティティや利便性などに矮小化されているのだ。

提言は、結婚によって改姓を強いられると(そのほとんどは女性)、個人のアイデンティティの喪失につながると指摘する。これは本当なのか。もちろん、そう感じる人はいよう。しかし、姓を変えても「自分は自分で変わらない」と、思っている女は少なくない。むしろ、夫や妻と同じ姓を名乗ることで新たなアイデンティティが加わったと、自己の成長を実感する人が多い。

姓は個人のアイデンティティであると同時に、家族を識別するものでもある。だから、結婚して改姓することは、新たなアイデンティティの付加になり、個人のアイデンティティの幅を広げる役割を果たす。

一方、選択的な別姓の導入は、これまでのように家族の呼称として姓を持つ人間に加え、個人の呼称しか持たない人間を生むことになる。また、別姓の導入は、社会の基本単位を家族から個人単位に、大きく変えることも意味する。

〝革命〟と言っても過言でない大変革による混乱を避けるため、近年は結婚前の旧姓の通称使用を認める会社が増えている。経団連の調査で、その割合は、91%に達する。ならばそれでいいではないか。戸籍上の姓との違いで少々負担を強いられることはあるだろうが、社会の基本単位を変えることによって社会混乱が起きれば、社員の不安が高まり、働く意欲にも響く。

要は、日本人にっての姓の持つ意義を俯瞰した上で、別姓を導入することのメリット・デメリットを比較して結論を出すべきなのだが、経団連は、同姓維持による女性の不利益ばかりを強調している。これは古典的なフェミニズムの発想で古い。また、提言は「現在、婚姻時に夫婦同姓しか選択できない国は日本のみ」とする。それがどうしたというのか。ある国の夫婦別姓は、女性が男性の家族に入れてもらえない、つまり女性の地位が低いことを意味している。このように、それぞれの国の文化・伝統の違いを無視し、経団連が別姓を認めない日本は遅れている、との印象操作を行うのは非常に危険である。