永田町ファイル
鈴木憲和農林水産相
米 価 11・11
【大臣】 昨日(10日)、米穀機構から公表された10月分の調査結果によりますと、いずれも50を基準値とするもので、現在の需給動向は、前月の指数が54、基準値よりもオーバーしていた状況に対して、そこからマイナス12の42であります。そしてさらに向こう3か月の需給動向は、前月が指数45でありましたのが、マイナス10の35となっており、その調査結果を見れば、いずれも大きく減少しております。これは、現状は需給が緩んでおり、向こう3か月もさらに需給が緩むと見ていて、需給が緩むというのは、需要の方がなくて、供給の方があるという状態であります。
米価水準については、現在は指数91と前月比で横ばいであり、引き続き高いとの見方であります。一方向こう3か月は、前月の指数57からマイナス18の39に大きく減少しており、今後価格が低下していくと、皆さん感じていると思っております。
私は、価格については、まさにマーケットでしっかりと決まっていくものであると考えておりますから、農林水産省としては、まずは需給の安定が来年に向かってしっかりと図られていくことを、需給見通しも含めて現場の皆さんと共有させていただいた上で、さらにこの価格の動向については、注視をしてまいりたいと思います。
【記者】生産者側に立てば、あまり下がることへの懸念はあるものの、やはりお米券のことを含めて、有権者の目線では下がって欲しいという思いが強いとは思うのですけれども、大臣としては、価格についてはコメントを避けてはおりますが、市場の原理に沿って下がるのであれば、それはそれで当然だとお考えということでよろしいですか。
【大臣】 おっしゃるとおりです。まさに価格というのが、生産の現場の皆さんに対しても、生産量を増やすか減らすかということについての一つの目安というか、ある種のシグナルだと思いますので、そういう中で我々が出す需給見通しも含めて、総合的に現場の皆さんが来年の生産をどうしようかご判断をいただけると思っています。
【記者】米の価格についてお伺いします。先週、米卸の決算が発表されて、純利益が数倍の非常に好調な内容で、上方修正が発表されております。その理由が、想定以上に米の価格高騰が長引いたこととあるのですけれども、備蓄米の放出にあたっては、その理由の一つとして、市場競争が働かなくなっているから、政府が介入する必要があると指摘している専門家の方もいたと思いますけれども、現状を、適切に市場競争が起こるのか、パニック売りのような形にならないように、正しく市場の需給に合わせた価格の推移が起こるかどうかについて、市場が過剰反応しないように、適切な価格の需給のバランスがとれるような取組についてのお考えがありますでしょうか。
【大臣】 米価の高騰が起こってしまったのは、我々農林水産省の需要の見立てが完全に甘くてというか見誤った結果、供給量不足という事態になりました。供給力が需要に対して足りないとなれば、集荷競争が激化しますので、結果として米価の高騰に至ったということです。
これから我々がやらなければならないのは、しっかりとした需給見通しで、需要の出し方も改善しますし、より実態に近いものに変わっていくと思います。そうしたことも含めて、ある種バランスのとれた需給の在り方を示した上で、そこに向かって皆さんと一緒に進んでいくことになりますから、短期で来週、再来週どうですかということを私が予想することは正直言ってすべきでもありませんし、難しいと思いますが、今年、来年というスパンで見れば、需給がしっかりと均衡して安定するように取り組み、その結果が価格の安定につながっていくと考えています。
【記者】備蓄米も放出して値段が下がると言っていたものが、想定より値段が下がるのが遅くて、下がるだろうと思っていた期間の見通しにズレがあったと思うのですけれども、今後もそういう認識のズレがあることに対するリスクヘッジをどう考えているのでしょうか。
【大臣】 私は何度も申し上げておりますが、備蓄の運用については、全体の量として足りないときには出すし、そうでない場合には放出しないということが基本になると思っています。ですから、我々が備蓄を出す、出さないによって価格がどうなるかについて、我々が何か予測をするとかは、もう今後は基本的にはないですし、そういう見立てを持つこともないだろうと思っております。
肝心なことは、要するに1年で1作でありますから、中期的に米穀機構の出したデータも、今年の新米が思ったよりも取れていたことも踏まえて、こういうご判断を取引現場の皆さん、されているというようなコメントも読みましたので、単に備蓄の出し入れどうこうではなくて、そうしたことで現場の皆さんが、需給が今どういう状況であるかをご判断いただけると思っております。
お米券 11・14
【記者】昨日、政府が党の会合で経済対策の案を示したと思いますが、お米券について、改めて農水省の対応をお聞かせください。
【大臣】 昨日開催された自民党の政調全体会議では、経済対策の政府案について議論されたというふうに承知をしています。政府案には農林水産分野に関して、物価高対応として「重点支援地方交付金」を通じたお米券を始めとする食料品の物価高騰に対する支援、そして食料安全保障の確立に向けて、農業構造転換の推進、(農林水産物・食品の)輸出などに関する施策が盛り込まれております。今お尋ねのあったお米券も含めて、今まさに食料品の値上がりについて、負担感を感じている皆さんの負担を軽減するという観点で、我々としてもしっかり実施していただける地方自治体と連携をとりまして、取組をさせていただきたいと思っております。
【記者】お米が高くて買いたくても買えない人がいるというところで、お米券を配布した場合、そういった世帯が買えるようになると思うのですが、そのあたりの需要はどれくらいを見込んでいらっしゃるのか試算がありましたら教えてください。
【大臣】 お米券で全てやってくださいという話では全くありませんで、それぞれ自治体が今まで取り組んでこられたやり方というのがあると思いますから、その中で最も負担感が少なくやりやすいやり方で、そしてできる限り消費者の皆様に早く支援が届くようなやり方でやっていただければありがたいなというふうに思っています。その上で需要がどのぐらいになるかですが、もちろん今の価格では買う量を減らさざるを得ないとかいう皆さんに対して、少なからずいい影響があると思います。ただ、それが全体量どのぐらいかということについては、今の段階で私から何か予想するということは正直難しいかなと思っています。
地域協働で農村を守る
記者コラム
食料・農業・農村基本法は農政の基本理念として①食料の安定保障②農業の多面的機能の発揮③農業の持続的な発展④農村の振興を掲げている。とりわけ人々の暮らしの場としての農村を持続可能な姿にしていくことが、農政の大きな課題である。
農業人口が減少する中、農地や農業用水などの保全管理を地域の農業従事者だけで行うのには限界があり、非農家をはじめ多様な人材の参画が求められている。例えば、農地の法面の草刈りや水路の泥上げ、農道の路面維持などで、比較的軽微で単純な作業が、現実には農業従事者の大きな負担になっている。農村の多くにおいて、これらの作業は地域の環境を守ることにほかならず、その恩恵は地域の居住者全員が受けることになる。
そのために設けられたのが農水省の日本型直接支払制度で、①多面的機能支払交付金②中山間地域等直接支払交付金③環境保全型農業直接支払交付金から成っている。地域の人たちが上記のような作業に参加すれば、それに対して日当を支払うことができ、参加意欲も向上する。
こうした作業を適度な運動ととらえれば、健康長寿型農業の実践とも言えよう。さらに、そうした協働作業を通して人々が交流することで地域共同体としての絆が深まり、地域愛が育まれれば、防災力の向上にもなり、それが持続可能な地域づくりにつながる。そんな身近なビジョンを語る政治家が出てきてほしいものだ。(T)



