日本を変えるかスタートアップ企業
死屍累々の失敗の谷底にヒカリ探せ

 スタートアップ企業の伝道師ケーシー・ウオール氏が映画「スタートアップガールズ」を制作した。若者がそれまでになかったアイデアをぶつけて、新しい価値や市場を見出していこうとすることを意味する「スタートアップ」をテーマとした映画で、性格や仕事に対する姿勢など真反対の2人の女性がぶつかり合いながらも、ビジネスパートナーとして未来へ向き合っていく姿を描いたものだ。9月6日から劇場公開されている。

 ウオール氏がスタートアップ企業を広めたいと思うのは、社会を変える企業をどんどん立ち上げ、日本の企業風土そのものも変えたいと思うからだ。

 今回、映画を製作したのは、もっと広く人々にそうした考えを知って欲しいと思ったためだ。少なくとも、本より多くの人が見てくれる。

 そもそもスタートアップ企業は数が必要となる。ほとんどは挫折し失敗するからだ。技術が及ばなかったり、事業を継続する資金がショートしたりと、倒産形態は様々だが、そうした死屍累々の谷から、聳え立つ企業が生まれてくる。

 しかも、淘汰される中で生き残ったそれは社会を変える企業となる。

 ウオール氏が関心を持っているスタートアップ企業の1つは、ミドリムシを大量培養し、そのエネルギーで飛行機を飛ばしたいという夢を持っている企業だ。

 石油燃料では温暖化を促進する二酸化炭素排出を抑えることは困難で、環境問題を考えると根本から変えないといけないと、その企業は考えている。

 これも燃費問題とか大量培養技術とか、課題は小さくないが、エネルギー問題に正面から取り組もうという使命感が彼らを支えている。

 こうしたチャレンジは、人生をわくわくさせ、やりがいと不屈の魂を磨き上げてくれる業務となる。

 それは世界地図もないまま、大航海に出るような冒険心が問われてくるものでもある。

 こうしたスタートアップ企業の難題は、周りが信じてくれないことだ。

 さらに、ベンチャーに好感をもっていない人など、きつく言う人もいる。

 そうした周囲の人を、巻き込んでいくのは結構、しんどいし難しいことだ。それでもスタートアップ企業は、時間が命取りになることが多い。同じようなことはみんな考えているものだ。

 そのためにはスピード感が必要となる。その意味でも、関係者だけでなく周囲をも巻き込んでいくパワーが問われ、さらに人を信頼しないと動かなくなる懸念も生じてくる。

 何より自分の夢を追うことは、安心安全な軌道上を走る道と違って、自分らしく生きられる道でもある。そのわくわく感は、何物にも代えがたい。

 同じ人生なら、世間の役にたって、感動のあるものにしたい。