昆虫バネにイノベーション
大自然にある発明のヒント
昆虫には足で踏まれて死なないどころか、車にひかれてもつぶれずに生きている頑丈な奴もいる。
今回、こうした強力な外骨格をもった甲虫の謎を東京農工大や米カリフォルニア大などの日米研究チームが解明、英科学誌ネイチャーに発表した。
スーパーパワーをもった体長約3センチのこの甲虫は、英語で「アイアンクラッド・ビートル(鉄装甲の甲虫)」と呼ばれ北米西海岸に生息する。
アイアンクラッド・ビートルは、羽がなく飛ぶ能力を失っている。
カブトムシやコガネムシは外側に硬い羽、内側に透明で軟らかい羽があるが、アイアンクラッドは内側の羽がない。外側の左右2枚はがっちり接合して開かず、一体化した外骨格となっている。
アイアンクラッドは樹皮などに隠れひっそり暮らす森の隠者みたいなものだが、時に鳥にくちばしでつつかれたり、かまれたりしても身を守れるよう進化した模様だ。
アイアンクラッドが注目されているのは、航空機や自動車を強く、軽く造る技術に応用できる可能性があるからだ。
昆虫は子供にとって、自然から贈られたおもちゃのようなものだが、発明のヒントは「大自然」にある。大自然は実に発明の宝箱のようなものだ。
例えばムール貝によって生みだされた「接着剤」も面白い。
ムール貝は船の底や桟橋などにくっついて生息しているが、それは接着力をもったタンパク質をムール貝がつくりだしているからだ。
この接着力に注目したある企業が、このタンパク質に注目し、害のない接着剤を発明し使っている。
キッチンや風呂場など水回りで接着剤を使う場合、耐水性のものを選ぶ必要があるが、普通の耐水接着剤には毒性の強いホルムアルデヒトが含まれているものがほとんどだったことから、この製品は環境にやさしい接着剤として注目されている。
またカメラのレンズは「蛾」の眼と同じシステムを採用している。
蛾の眼の表面には無数の突起がついている。そこに入った光は突起の内部で何度も屈折することにより、反射して外側に出てしまうことがない。闇夜で敵に存在を知られないために編み出されたサバイバルのための手法が、光を反射せず吸収して内部に留めてしまうカメラのレンズに応用されているというわけだ。