円安を逆手活用し国力増強図れ
資本と人のインバウンド拡大を

またもや円安が進行中だ。

円安は輸入物価の上昇を招き、家計の実質的な購買力低下をもたらす負の効果がある。

その直撃を受けているのが食料品とエネルギーで、食料品価格とガソリンなど石油製品が高騰している。

わが国の食料自給率はカロリーベースで47%(2022年度)と、大きく輸入に頼っており、円安は庶民の台所を直撃する。

一方でメリットも小さくない。当面、円安基調継続が予想される中、円安の利点を最大限生かす政策が重要となってくる。

ポイントは2つ。外国からの直接投資とインバウンドの拡大だ。

円安により外国企業の対日投資コストが切り下がる。それを契機に外資流入の大河をつくり、景気浮上のチャンスとすべきだ。

1980年代の円高では、わが国の製造業はコストカットのために、東南アジアなど海外に進出していった経緯がある。

経済発展の雁行形態論が出たのも、この時だ。日本の技術や資本が、まず韓国や台湾に渡り、次にタイなど東南アジアに移っていく。こうした渡り鳥の雁が飛行していくように、経済発展が継承されていく姿をいったものだ。

だが今回は円安局面を迎えようとしている中、海外の資本流入による産業振興を図るべきだ。

円安で我が国の人件費や土地・建物といった不動産も安くなり、外国系企業が日本進出にあたってチャンスとなる。

そもそも我が国は海外からの直接投資が少ない。直接投資残高の国内総生産(GDP)比は経済協力開発機構(OECD)平均の67%と比べ8%に過ぎず、極端に低いのが実情だ。

こうした「資本の鎖国」状況を打破するには、自助努力も求められる。

進出した外国企業が必要とするグローバル人材を育てることも求められるし、外国資本と日本のスタートアップとの連携を強めることも大事となる。

外国資本の流入は雇用創出効果だけでなく、新たな産業を育成するチャンスが誕生することにつながる。新たな人材や技術流入を伴うことで、経済の活性化を促す効果が期待できる。

資本の受け入れ促進と並ぶ円安対応策は、人のインバウンド拡大だ。