霞ヶ関ファイル

記者会見 7・12

上川陽子外相

太平洋島・サミット

【大臣】私から2件ございます。
まず、1件目であります。
7月の15日から21日まで、イタリア共和国、セルビア共和国、ボスニア・ヘルツェゴビナ及びコソボ共和国を訪問をします。
イタリア共和国では、7月16日及び17日に開催されるG7貿易大臣会合に出席します。
昨年10月、私は議長として、大阪・堺でG7貿易大臣会合を主催しました。今回の会合はイタリアの下で、その議論を引き継ぐものであります。また、6月のG7プーリア・サミットにおける首脳間の議論も踏まえ、更に議論を深めるものであります。
具体的には、今次会合におきましては、自由で公正な国際秩序の維持・強化、公平な競争条件の確保、サプライチェーンの強靱化、経済的威圧への対応などにつきまして、議論を行う予定であります。
現在、国際社会は、ウクライナや、また、中東情勢、気候変動等、山積する課題に直面しており、G7が、他のパートナーとも連携して、世界経済の持続的な成長のため、主導的な役割と責任を果たす重要性は一層増しております。
私自身、昨年の議長として、積極的に参加してまいります。
西バルカン3か国への訪問では、1991年の旧ユーゴスラビア解体後、激しい民族間対立を経て、平和と安定に向けた取り組みを進める各国の政府要人等と会談を行います。
日本は、2018年(平成30年)、この地域の平和と安定のために、「西バルカン協力イニシアティブ」を打ち上げました。以来、この地域に、外務大臣が2回訪問するなど、ハイレベルの往来が着実に積み重なっております。また、近年、日本企業は製造業を中心に、現地での存在感を高めつつありますが、経済の安定こそ、地域の平和と安定の礎であります。
このように、6年前の「西バルカン協力イニシアティブ」発表から、着実に強まってきている我が国のこの地域への関与を背景に、今般、これら3か国を訪問いたします。各国との二国間関係を前に進め、日本の地域への変わらぬ関与について意見交換をし、また、女性・平和・安全保障、いわゆるWPSを含みますグローバルな課題における連携強化も、図りたいと考えております。
具体的には、まず、一点目として、近年、日本企業の投資が着実に増加するセルビアにおきましては、経済関係の強化とともに、地域の平和と安定のために、EUが仲介をするセルビア・コソボ間対話を後押しいたします。
第二に、ボスニア・ヘルツェゴビナにおきましては、政府要人との会談に加えまして、紛争の悲惨さと平和の重要性を伝えるスレブニツァ記念ギャラリーを訪問いたします。
三点目でありますが、日本の外務大臣として初の訪問となるコソボにおきましては、本年の外交関係樹立15周年の節目に、二国間関係強化を確認するとともに、セルビアとの対話促進に向けて働きかけを行ってまいります。
ウクライナ、中東を始め、紛争が各地で続く中、悲惨な紛争を経て、平和と安定を目指す西バルカン地域に直接足を運ぶことは、日本政府が国際社会の平和と安定のために、一貫して行ってきております外交努力の延長線上の取り組みとして、非常に重要な機会であります。ぜひ有意義な訪問としたいと考えております。

【大臣】2件目であります。
今朝の閣議で、外務省の幹部人事が承認されました。7月19日付で発令する予定であります。
G7やG20サミットのシェルパ等、重責を担う経済担当外務審議官には赤堀毅地球規模課題審議官、その後任には中村和彦国際法局審議官を昇任させます。
歴史的なG7広島サミットをシェルパとして支え、その他、G7やG20を始めとした多岐にわたる分野で活躍した小野啓一経済担当外務審議官は大臣官房付となります。
引き続き、新たな体制の下、外務省一丸となって、多岐にわたる外交課題に全力を尽くしていく所存でございます。
私からは、以上です。

【記者】来週開催される太平洋・島サミットについてお伺いします。来週、東京で、太平洋・島サミットが開催されますが、岸田首相が、各国の首脳と会談する予定です。太平洋・島サミットは、約30年続く枠組みであり、歴史的にも長い関係がありますが、一方で、中国や米国など、各国が同地域への関与を強めています。10回目の節目となる今回のサミットで、太平洋島嶼国とどのような関係を築いて、日本との枠組みをどう強化していきたいか、お考えをお聞かせください。
また、ALPS処理水の海洋放出についても議題になる見込みですが、この機会に、どのように理解を得ていきたいか、お考えをお願いします。

【大臣】日本と、この太平洋島嶼国でありますが、30年近いPALMプロセスを通じまして、共通の課題に取り組んでまいりました。そして、私が共同議長を務めました2月のPALM中間閣僚会合におきましては、この長年にわたりまして築き上げられてきた「キズナ」に加えまして、共有する価値・原則に基づく信頼関係の強さを確認したところであります。
10回目の節目となる今回のサミットでありますが、こうした中間閣僚会合の成果、これも土台にしつつ、国際社会や地域情勢の変化を踏まえた議論を行い、従来の「キズナ」に加えまして、協力関係を一層強化してまいりたいと考えております。
また、PALM中間閣僚会合におきまして、太平洋島嶼国等の間におきましては、IAEAを原子力安全の権威として位置付けた上で、科学的根拠に基づく対応の重要性で一致をしたところであります。
PALM10の機会におきましても、太平洋島嶼国に対しましては、このIAEAの継続的なこの関与の下で実施されますモニタリング、この結果の提供など、科学に基づく丁寧な説明を積み重ね、安心感を高めてまいりたいと考えております。

【記者】ODAについてお伺いします。本日、大臣は、ODAの民間資金の動員を議論する有識者会議から、提言書を受け取りました。大臣は、その場で、JICA法改正に踏み込む可能性にも言及されましたが、今回の提言、特に、「サステナブル・ファイナンス」との連携も含めて、どのようにODAの在り方を見直されるのか、方針をお伺いします。よろしくお願いします。

【大臣】今次の提言におきましては、このODAを触媒として、民間企業等によります投資活動が、途上国の開発へとつながっていくような「エコシステム」、この形成が重要であると、そうした考え方が示されたところであります。
例えば、具体的な方策として、JICAのリスクテイク機能の拡充のために、途上国のプロジェクトに対して保証を提供することや、また、途上国の事業者が発行するグリーン債や、またソーシャル債、これを購入することが、提案をされているところであります。
今次の提言を受けまして、外務省といたしましては、このJICA法改正の可能性を含めまして、ODAの抜本的な見直しに向け、関係省庁とよく連携して検討を重ねてまいりたいと考えております。

【記者】ミャンマーの邦人拘束の関連で伺います。軍が実権を握るミャンマーで、統制価格よりも高く米を販売したとして、先月拘束された流通大手イオンの子会社の日本人駐在員が起訴されました。現地の日本大使館は、早期の解放を求めていますが、拘束の長期化が懸念されています。受け止めや、政府対応について伺います。

【大臣】6月30日からミャンマー当局により勾留されている50代の邦人男性が、7月11日に起訴されたと承知しております。
政府としては、現地当局に対しまして、同人の早期釈放を強く申し入れるとともに、邦人保護の観点から、同人の所属企業と緊密に連携し、できる限りの支援を行ってきており、引き続き、適切に対応してまいります。

【記者】イスラエルの国防相は、イスラエルはレバノンを石器時代に逆戻りさせるまで破壊すると述べています。
そうすると、人類の文明に多大な貢献をしたレバノンはイスラエルによってがれきの山にされてしまいます。このことについて何かコメントいただけますでしょうか。

【大臣】我が国として、このイスラエルとヒズボッラーの間の緊張の高まりにつきましては、懸念を持って注視しているところでございます。これまでも、イスラエルやヒズボッラー等に対しまして、紛争の地域への更なる拡大、これを回避する必要性につきましては、働きかけを行ってきているところでございます。