永田町ファイル
記者会見 11・5
あべ俊子文科相
教員不足
【大臣】冒頭、私のほうからは4件ございます。先週の10月28日月曜日から11月2日にかけまして、G20の教育大臣会合及びユネスコ主催のグローバル教育会合に出席するため、ブラジルを訪問させていただきました。G20の教育大臣会合におきましては、まず学校と地域の連携、また二つ目は教師の能力向上、三つ目としましてはESDにおけるデジタル教材の共有についての方策を各国より共有をさせていただきまして、G20の首脳会合に向けたサマリーにまとめさせていただきました。また、ブラジルやカナダとバイ会談を実施いたしまして、人的交流の更なる活性化、また質の高い教師の確保など、共通の課題への対処方策を共有させていただきました。また、グローバル教育会合におきましては、持続可能な開発目標の一つに掲げられているところでございます、「質の高い教育の提供」、この実現に向けましたいわゆる取り組みを加速するため、科学技術イノベーション、またデジタル革新の教育を推進すること、そのための人材育成の方策について、世界からの参加国と議論を深めさせていただきました。今回の訪問で得た知見を活用させていただきまして、文部科学省といたしましては、引き続き、教育分野における国際貢献と、関連の施策の充実に積極的に取り組んでまいりたいというふうに思います。
次になります。2件目でございますが、先月の31日令和5年度の児童生徒の問題行動・不登校生徒指導上の諸課題に関する調査の結果を公表させていただきました。小・中・高、この学校の不登校の児童生徒数、いじめの重大事件(注)の件数が過去最多となるなど、極めて憂慮すべき状況が継続しているところでございます。また、文部科学省はいじめを積極的に認知し解消に向けた取り組みを進めることも各学校に求めているところでございますが、いじめの認知件数も過去最多となりました。コロナ禍を経て子供たちをめぐる環境が変化する中、不安や悩みを相談できない子供たちがいる可能性があること、それを一人で抱え込んだり、またコロナ前の子供たちの様子とは異なる形で現れたりする可能性があることを考慮しながら対応する必要があると考えているところでございます。文部科学省といたしましては、こども家庭庁をはじめとする関係省庁、教育委員会などの関係機関とも連携をしていきながら、いじめの防止、不登校児童生徒の学びの継続、さらには教育相談体制の充実に全力を尽くしてまいります。
3件目になります。本日、令和6年度のコミュニティ・スクール及び地域学校協働活動実施状況の調査の結果を公表させていただきます。調査結果では、本年の5月時点でコミュニティ・スクールの導入校は、2万校を超えました。これは前年度の比で2千校以上増えたところでございますが、全国の公立学校の約6割、58・7%で導入されたことになります。コミュニティ・スクールは、学校と地域が連携・協働する地域学校協働活動と一体的に取り組んでいくことで、「社会に開かれた教育課程」の実現、また学校の働き方改革など、学校や地域の課題解決に資するものでございまして、引き続き、更なる導入の加速を図ってまいりたいというふうに思います。
4件目、最後になりますが、日本からユネスコ無形文化遺産の登録を提案しておりました「伝統的酒造り」に関しまして、評価機関の事前審査の結果、無形文化遺産の代表一覧表への「記載」がふさわしいとの勧告を受けました。「伝統的酒造り」に関しましては、杜氏・蔵人などが、こうじ菌を使って、日本各地の気候風土に合わせて、経験に基づいた、築き上げてきた我が国の大切な文化でございまして、今回の勧告は大変喜ばしいことでございます。今後は、12月2日から12月7日にパラグアイで開催されるところでございます政府間委員会に正式決定される予定でございまして、引き続き、登録に向けて最善を尽くしてまいりたいと思います。
【記者】衆院選が終わりまして、与党で過半数割れという事態になりました。部分連合を模索する石破政権は国民民主党との政策協議を行っている、進めているところですけれども、文科行政に対する影響というのをどのように考えているかお聞かせください。
【大臣】お尋ねの件に関しましては、各政党間で議論されるべき事柄でございまして、文部科学大臣としてのコメントは差し控えさせていただきます。いずれにいたしましても、石破内閣の一員として、政府全体の方針を踏まえさせていただきながら、文部科学行政を前に進めてまいりたいというふうに思います。また、「教育国債」も含めた無償化でございますが、先の衆議院選挙におきまして、国民民主党が「高校までの教育の無償化」、また「教育国債」、公約に掲げたことは承知しているところでございますが、個別の党の具体の政策に関してはコメントを控えさせていただきたいというふうに思います。いずれにいたしましても、文部科学省としては、あらゆる人が最適な教育を受けられる社会、これを実現できるよう、教育費の負担軽減にしっかりと取り組むとともに、必要な教育予算を着実に確保してまいります。
【記者】先日、政府内で公立学校の教員に残業代を支払い、現状の教職調整額を廃止することの検討を始めるとの報道が一部ありました。まず、こうした事実が実際にあるのかどうかということが1点と、この報道が事実だとすると、これまでの中教審の議論というのが大きく方向修正されることになりますし、給特法も廃止ということになるというふうに思うのですけれども、文科省としての現時点でのスタンス、あるいはこうした給特法廃止の可能性といったものをどの程度想定しているのかといったところを教えてください。
【大臣】政府内でいわゆる時間外勤務手当の部分の検討が行われているということは承知をしておりません。文部科学省といたしましては、本年の8月の中教審の答申を踏まえまして、令和7年の概算要求におきまして、教職調整額の引き上げなどによる教師の処遇改善、教職員の定数の改善、また支援スタッフの更なる配置充実に必要な経費を要求しているとともに、骨太方針の2024年におきましては、中教審の提案も踏まえて、「2025年の通常国会に給特法の改正案を提出する」ということを示させていただいているところでございます。引き続き、教育の質の向上に向けて、学校における働き方改革の更なる加速化、教師の処遇改善、学校の運営・指導体制の充実を一体的に、総合的に進めていきたいところでございます。また、給特法の件でございますが、給特法は、教師の自発的・創造性に基づく勤務に期待する面が非常に大きいこと、また、どこまでが職務であるかの切り分けが難しいという教師の職務の特殊性のところから、時間外勤務手当ではなく、勤務時間の内外を包括的に評価するものとして、教職の調整額を支給することとしているところでございます。中教審の答申におきましても、教師の裁量性を尊重するこの仕組みは合理性を有しているとされているところでございまして、給特法を廃止することは考えておりません。文科省といたしましては、教育の質の向上に向けまして、学校における働き方改革の更なる加速化、また教師の処遇改善、学校の指導・運営体制の充実を一体的・総合的に推進してまいります。以上でございます。
【記者】教員不足の件で質問します。高知県で実施された小学校の教員採用試験で、合格者の7割が辞退し、予定していた採用人数を確保できない事態となっています。辞退者がかなり多いなという状況を感じる結果でしたが、このように年々深刻化する教員不足の現状について大臣の所見をお聞かせいただきたいのと、文科省としては教員採用試験の日程の前倒しを進めているところでありますが、高知県のケースのように、辞退者が増えるだけで教員の確保にはつながらないのではないかとの見方もあるかと思います。これについても合わせて大臣のお考えをお聞かせください。
【大臣】教員の確保が非常に厳しくなっているのは、実は世界中でもそうみたいでございまして、G20でもかなりの大きなトピックになりました。お尋ねのところの高知県の教育委員会におきましては、教育採用選考(注)を周辺の自治体より早く実施するということによって、できるだけ多くの受験者数を確保した上で、辞退者が出ることを見込んで、採用予定人数を大幅に上回る人数を合格者とするという方法を従来から実施してきたというふうに聞いています。
こうした取り組み方針も任命権者としてのいわゆる教師の人材確保に向けた工夫の一つであるというふうに受け止めていますが、文部科学省としては、教員不足の現状は厳しいというふうに認識をもちろんさせていただいてるところでございまして、優れた教師人材の確保に向けまして、計画的な新規採用、現職以外の
教員免許の保有者に向けての研修の実施、またさらには採用選考の工夫・改善などの取り組みを各教育委員会などに促させていただいているところでございます。