霞ヶ関ファイル
記者会見 8・8
中谷元防衛相
中ロ共同パトロール
【記者】7日に茨城県沖で墜落した空自F─2戦闘機について質問です。事故原因の調査で、搭乗していた隊員から聞き取った内容など進展があれば教えてください。また、機体の引き揚げの見通しについても教えてください。
【大臣】昨日12時34分頃、百里基地所属の航空自衛隊第7航空団第3飛行隊のF─2A戦闘機が、茨城県沖の太平洋上におきまして訓練中、百里基地の北東約150キロメートル地点におきまして、エンジンの不調及び推力の低下、これを通報した後、搭乗員が緊急脱出をする事案が発生をいたしました。この搭乗員は航空自衛隊救難ヘリコプターによって収容されまして、病院に搬送しましたが、命には別状がないとの報告を受けております。また、現時点において船舶などへの被害は確認をされておりません。この事案を受けまして、私から昨日7日12時38分に、第1に、被害者の有無を確認をし、救助等の対応に全力を挙げるということ、第2に、情報収集を徹底をし、状況の把握に努めるということ、第3に、関係機関との連携に万全を期すること、以上3点の指示をいたしました。昨日、事故発生後、速やかに航空幕僚監部の監理監察官、これを長とする事故調査委員会による調査を開始をしました。事故の詳細や原因につきましては現在調査中でありまして、現時点でこれ以上の詳細については予断をもってお答えすることは困難でございます。
【記者】安保政策に関してお伺いします。15日に終戦記念日を迎えますけれども、戦後80年を振り返って、安全保障環境の変化と日本の安保政策への影響をどう捉えていらっしゃるかお聞かせください。また、足元の国際秩序の変化が著しいですが、今後どのように安保政策に臨むべきか大臣のお考えをお聞かせください。
【大臣】戦後80年ですが、自衛隊は70年近くですね、発足をして活動しておりますけれども、その時の安全保障環境に応じて、その役割と任務、これを変化をさせてまいりました。まず冷戦期におきましては、我が国が力の空白となって地域における不安定要因とならないことが重視をされておりました。そして冷戦後、これは国連のPKO活動の参加などが、様々な事態に対応することが求められるということになりまして、私が現役の頃には、まさか自衛隊が海外に派遣をされ、活動するということは夢にも思っておりませんでしたが、この2000年代には、国際テロ活動などの新たな脅威に対応するため、各種の特措法などに基づく活動を実施するようになりました。私が小泉内閣で最初に防衛庁長官を務めました2001年、アメリカで9・11テロが発生をしました。テロ対策特別措置法が成立をしまして、海上自衛隊が艦艇の派遣によりまして、インド洋で活動をしました。さらに、2010年代には、我が国を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している中で、平和安全法制により、あらゆる事態に切れ目のない対応が行えるようになりました。当時、私は安倍内閣で二度目の防衛大臣を務めることになっておりましたが、同時に安保法制担当大臣として、この法案の成立に尽力をいたしました。国会では担当大臣といたしまして、幾度となく答弁に立ちまして、国民の皆様に御理解をいただけるような内容になるように、可能な限り丁寧な説明に尽力をしたわけでございます。そして今、三度目の防衛大臣といたしまして、この間も国際情勢は大きく変化をしておりまして、ウクライナの紛争やパレスチナの問題、また我が国周辺でも、中国の力による一方的な現状変更の試み、また中国との連携を含むロシアによる軍事活動の活発化、そして北朝鮮の度重なる弾道ミサイルの発射など、我が国を取り巻く安全保障環境は、戦後最も厳しく複雑なものになっております。こうした中におきまして、防衛省・自衛隊に対する期待、これはかつてないほど高まっておりまして、より幅広い活動を平素から行うということが求められております。防衛省としましては、自衛隊の役割に対する国民からの付託にしっかりと応えることができますように、国家安全保障戦略に基づく防衛力の抜本的強化を決断したところでありまして、引き続き、切迫感を持って着実に抜本的強化を進めてまいっている現状でございます。そして、昨年末の関係閣僚会議において取りまとめられた基本方針に基づきまして、自衛官の処遇改善などの取組を強力に推進しているところであります。こうした安全保障環境の中で、我が国として主体性と主導性、これをもって、抑止力・対処力を強化するための取組を不断に検討しまして、進めていくということも当然であります。今後とも、我が国の独立と平和、国民の命と平和な暮らしを守るための取組を、我が国自身の主体的な判断に基づいて行ってまいりたいと考えております。
【記者】話題戻りまして恐縮なんですけれども、F─2の事案について、2点お尋ねいたします。まず、1点目ですが、空自の機体としては、T─4が数か月前に落ちたばかりということで、事故が相次いで、事故といいますか、こういう事案が相次いでいるという点につきまして、国民の間では、心配や不安なども広がっているかと思います。その点を加味して、改めての受け止めを教えていただきたいのとですね、今回、空幕長の御説明ですと、訓練飛行を今のところ見合わせているということですけれども、今回の飛行見合わせによる訓練、あるいは要員の育成などに影響があるのかどうか、そのあたりを教えてください。
【大臣】今年の5月にですね、航空自衛隊の第5航空団所属のT─4練習機の墜落事故が発生をしたこと、大変遺憾なことでございますが、それに続きまして、今般、航空自衛隊のF─2A戦闘機の搭乗員が緊急脱出事案が発生をしまして、国民の皆様に再度不安を与えたということを大変遺憾に思います。このような事故が発生したことを重く受け止めまして、同型のF─2戦闘機の訓練飛行、これを見合わせるとともに、私から、航空機の安全管理の徹底に係る防衛大臣の指示を発出をしまして、点検の入念な実施、そして教育の実施など、陸・海・空全ての自衛隊において、航空機の運航に当たっての安全管理に万全を期しているところでございます。今後、しっかりと事故原因を究明をしまして、必要な対策を取ってまいりたいと考えております。
【記者】そうしますと、今回の訓練飛行の見合わせによって、特にF─2については、何かしら影響が出るのでしょうか。
【大臣】まず安全飛行、これが大前提でありますので、まずはこの原因をしっかり究明をして安全を確認をした後ですね、教育訓練に移行すると思います。
【記者】F─2の墜落の関係で大臣が冒頭におっしゃった点なのですけれども、エンジンの不調及び推力の低下を通報した後に緊急脱出した事案が発生したということで、通報をされたのは管制官にということでいいのかということと、通報した時間についても教えていただけますでしょうか。
【大臣】これは、パイロットが管制官に通報いたしております。時間については詳細を今、確認中です。
【記者】ということは、今の時点で防衛省としては、エンジンに何らかのトラブルがあったとみて調査をしているということでよろしいでしょうか。
【大臣】事故の詳細、また、原因につきましては、現在確認中でありますので、現時点でこれ以上の詳しいことについて、予断をもってですね、お答えすることは困難でございますが、いずれにしましても、しっかりと原因究明を行いまして、飛行の安全を確認をした後ですね、飛行を再開がされるのではないかと思います。
【記者】大変細かくて恐縮なのですけれども、推力の低下というのは機体の推力の低下ということでよろしいですかね。
【大臣】エンジンの推力の低下ということです。
【記者】中国とロシアの合同軍事演習と共同航行についてお伺いします。中国、ロシアは今月5日まで日本海で合同演習を行い、6日から共同パトロールを行う旨発表しました。日本近海を航行しているとみられますが、防衛省として把握していることと、自衛隊の対応、また、このような中露の動きに対する大臣の受け止めを教えてください。
【大臣】中国とロシアの両国は、中露の海軍ですね、8月1日から5日まで日本海において共同演習を実施をし、演習終了後に共同航行を実施する旨発表しているということを承知をいたしております。近年、中国とロシアの両国は爆撃機の共同飛行、艦艇の共同航行、そして各種訓練、これを実施するなど、軍事面での連携、これを強化をしておりまして、その頻度も増加をいたしております。今回の共同演習や共同航行についても、こうした中国とロシア両国の軍事面での連携強化に向けた動きの一環であると考えられます。防衛省・自衛隊としましては、我が国周辺における中露両国の軍事動向につきまして、引き続き、懸念をもって注視をするとともに、我が国周辺海空域における警戒監視活動等に万全を期していく考えでございます。