霞ヶ関ファイル
記者会見 8・5
鈴木馨祐法相
不法滞在者ゼロプラン 8・5
【記者】不法滞在者ゼロプランについてお伺いします。
入管庁はプランに関して「ルールを守らない外国人に係る報道がなされるなど国民の間で不安が高まっている状況」があり、策定に至ったとホームページで説明しています。
この点について「難民支援協会」などは、「曖昧かつ汎用性の高い『ルール』という表現は、プランが対象とする非正規状態にある方のみならず、外国人一般の差別意識の助長につながる」と批判をしています。
大臣もこれまでプランの説明に伴い「ルールを守らない外国人は退去していただく」などと発言されていますけれども、こうした懸念に対するお考えをお聞かせください。
また、なぜ入管法違反者などと呼ばず、ルールを守らないという表現をされているのかについても教えてください。
【大臣】まず、このいわゆる不法滞在者ゼロプランについてですが、この点については、その背景として、一部の外国人による犯罪、あるいは迷惑行為、各種制度の不適切な利用など、国民の皆様方が不安を感じている、そうした状況が生じていることも含めて、この7月8日の記者会見において、私からも御説明申し上げたところです。
これは、こうした状況に関する認識ということで、必ずしも、入管法違反等々の法令違反には当然限られないということです。
一方で、私から申し上げたことも度々ございますが、ルールを守らない外国人には退去していただく、そういった発言については、不法滞在者等々の入管法の退去強制事由に該当する外国人、まさにこれが対象ということであり、法令に従い手続を進めた結果、退去強制令書の発行を受けた者については、我が国から速やかに退去すべきである、そういった原則について、分かりやすく説明したものです。
そうしたことから、この退去強制令書が発行された者を速やかに送還すること、これは当然のことながら、入管法の規定に定められた義務を遂行することであり、積極的に取り組むことは当然のことと、我々としては考えています。
当然のことながら、排外主義ということはあってはいけませんが、そういったことが、外国人差別意識の助長につながるといった指摘は当たらないと、我々としては考えているところです。
外国人受けれ 8・1
【記者】大臣は一昨日、トルコの駐日大使と面会し、トルコの正規在留者と比較した不法残留者の数は、ほかの国と比べて多くなっているとして深刻な懸念を伝えられました。またその一方で、知事会からは共生社会の実現に向けた提言を受け取られています。
大臣は日本記者クラブの会見で、秩序ある共生社会の実現に向けた取組の必要性について言及されておられましたが、秩序と共生のバランスの在り方について、改めて大臣のお考えを伺います。
【大臣】我が国において、日本人と外国人とが互いを尊重し、安全・安心に暮らせる共生社会を実現していくためには、外国人の方々の人権に配慮しながら、ルールにのっとって外国人の方々を受け入れ、適切な支援等を行っていくこと、同時に、ルールに違反する者に対しては、厳正に対応していくこと等が重要であると考えています。
先日の日本記者クラブの会見でも申し上げたところですが、やはり活力のある強い日本を実現していく、それをこの少子高齢化、あるいは人口減少という中で実現していくためには、やはり自由で開かれた日本、これが不可欠だと思います。
ただ同時に、その大前提ということですけれども、やはり国民の皆様方の御理解、そして御支持があるということ、まさにこれは不可欠なことだと思います。
その意味においては、国民の皆様方の安全・安心、そして、不公平感を持たれないことが、そういった日本を作っていく上での、大前提ではないかと考えています。
今、一部の外国人による犯罪あるいは迷惑行為等によって、不安等を感じている方々がおられる現状も考えれば、やはりその大前提としての、国民の皆様方の御理解と御支持をしっかりと得られるように、国民の皆様方の安全・安心、そして不公平感の問題、これをしっかりと死守していくことは大事ではないかと考えています。
そうした意味において、実態について的確に把握した上で、ルールを守らない者については、当然のことながら厳格に対応していく。そして、外国人をめぐる現下の情勢に十分に対応できていない制度・施策については見直しをしていくといった取組を、政府横断的に行っていくことが重要であると考えています。
私ども法務省としても、今年の5月23日になりますが、「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」を公表して、ルールを守らない外国人を速やかに我が国から退去させるための対応策を既に実施しているところでもあり、また、各種在留資格においても、様々な要件の適正化に向けた検討を現在進めているところでもあります。
また、私の下での私的勉強会ということで、様々な有識者の方からも、様々な御意見を承りながら、今後の外国人政策の在り方について、これも近日中にまた報告できると思いますが、そういった取組を進めているところです。
こうしたことを通じて、先ほど秩序と共生のバランスというお話がありましたが、私どもとしては、やはり外国人との秩序ある共生社会の実現、これは先ほど私が申し上げたコンセプトの下で、引き続き関係省庁と連携しながら、必要な対応を着実に推進していきたいと思っています。
【記者】毎年年初に入管庁が発表している不法残留者数の上位国籍地域別のデータがあると思いますが、そこの上位10か国について、正規在留者数と不法残留者数の比率を見ると、タイもトルコとほとんど同じぐらいの割合の不法残留者数の高さになっています。
そうした中で、先日あえて、タイも非常に高い比率がある中で、トルコ大使と面会されて直接懸念を伝えられた理由について、改めて教えていただければと思います。
【大臣】当然のことながら、私どもとしては、先ほども申し上げたところですが、ルールを守らない外国人については厳格に対応していく、こうしたことは非常に大事です。まさに先ほど申し上げた、国民の皆様方の安全・安心、そうした観点からもこのことは極めて重要だと考えています。
これまでも関係の国々とは機会をとらえて、これは当然先方があることですから、詳細に立ち入ることはできませんが、当然のことながら必要な場合には必要に応じてそうした懸念も伝えてきたところです。
そうした中で、今回のトルコの大使の方も昨年着任され、就任の御挨拶をいただくという状況の中で、私どもとしても今回、こうした機会をとらえてお伝えさせていただいたということです。
人口・移民問題の国家戦略を
記者コラム
政府の外国人政策に対する国民の不満は、先の参議院選挙と都議会議員選挙における参政党の伸長という形で表れた。同党が掲げた「日本人ファースト」を排外主義とするのはレッテル貼りにすぎない。
記者会見では、入管法違反者に限定した適正対応にとどまらず、法相が「ルールを守らない」外国人の国外退去を述べたことに排外主義の懸念が出ている、と記者が指摘した。しかし、この懸念も曖昧であり感情論の域を出ていない。
外国人による犯罪数は減っているが、人口に占める割合は日本人の倍以上になっている。また、国民健康保険料や住民税の滞納率は、外国人のほうが日本人よりも大幅に高いし、ゴミの出し方などのルールを守らないとの苦情も多い。
日本に住むなら法律遵守はもちろんのこと、日本文化やマナーは尊重すべきなのに、住民の迷惑を顧みず自国の習慣を持ち込む外国人も少なくない。これらを総合すれば、「ルールを守らない外国人には退去していただく」と述べたほうが国民の心に響く。それを排外主義と一蹴するのは国民のいらだちを理解していない。
とは言え、人口減少から外国人労働者への依存度が高まるという現実がある。その中で、問われるべきは人口・移住問題に関する国家戦略を欠いた、場当たり的な外国人政策である。
地域住民の幸福増進と日本文化の継承、そして外国人の受け入れをどうバランスを取り国益を最大化させるのか。「日本人ファースト」を掲げる参政党の伸長を、そのための国家戦略議論を深める契機とすべきである。