「ひょうたんなまず」

俳句・川柳10月号

「夢」「テーマ自由」

俳句

合鴨の 卵八つあり 草深し
子卵に シベリア雄飛 秘めている
ため池讃岐

(枯草を集めて巣を作った合鴨の卵を、草むらに見つけた。それ自体、大自然との出会いの感動があるが、その小さな命にシベリア飛翔のDNAが入っていることにも感慨を覚える)

孫帰り 酷暑の中で 秋の風
やさしくて力なし

(孫の帰省は楽しくもあり疲れもするが、帰ってしまうと途端に寂しい秋の風が吹いてくる)

蛍飛ぶ 葬儀の帰り 友偲ぶ
 蛍の光窓の雪

(葬儀を終えた帰り道、闇に浮遊する蛍の光に亡くなった旧友の魂じゃないかと思ったという一句。今時、蛍なんてそうそう見れたものじゃないけど、それだけに友への思いは募る)

【佳作】

カープファン 炎熱ドリンク 紫蘇ジュース
赤ヘル3軍

(紫蘇ジュースなんて、紫蘇がたっぷりとれる田舎暮らしでないと飲めないが、炭酸で割るとさわやかな夏の風物詩だ。その赤色のドリンクに赤ヘル軍団カープへの思い入れをも飲んでいる)
里山の モーニングコール 草刈り機
午前4時起床

(農村の朝は鶏やキビタキの鳴き声で始まったものだが、近年は早朝の涼しい時にエンジン音をうならせる草刈り機が代役を務めるようになってきた)
布団干し 太陽の匂い 移り香に
(春先に布団を干せばふかふかになって気持ちいいが、さすがに今夏となると布団をオーブンレンジに入れたみたいに)

川 柳

雨降らず ドライフラワー 干さずとも
ウサギの尻尾

(日中温度は40度近くまで上昇の今夏、干ばつで花は立ち枯れたままドライフラワーになってしまった)

年のない 農家に理容師 うらやまし
サラリーマン人生

(定年後のサラリーマンは仕事をこなす意欲も体力もあるが機会は激減する。その点、定年なく働ける医者や美容師などパラダイスの住人に見える)

水不足 降れば洪水 ほどほどに
バランス感覚

(中庸の道は精神世界だけでなく温暖化で悩む自然界にも必要)

【佳作】

昔まれ 35度越え 今普通
三々五々

(昔の夏は33度前後で、35度以上というのはほとんどなかった。それが38度越えも日常茶飯となった)

夏異変 空を占めてる イワシ雲
オーロラ

(確かに今年の夏は、入道雲よりほうき雲やイワシ雲など秋の空が多かった)

めまいした 酷暑の真昼 蜃気楼
イルージョン

(朦朧とするほどの酷暑、蜃気楼は頭の中にも)

【応募要項】次号のお題「大地」

あなたの俳句・川柳をお寄せ下さい。お題に添ったものでなくても結構です。自作未発表のものをはがき1枚に3句程度まで。住所・氏名(ペンネームの場合は本名も)・年齢・電話番号明記の上で、ご投句願います。投句は返却しません。二重投稿厳禁。天・地・人の句には薄謝ないし粗品を贈らせていただきます。締め切りは毎月末。

住所 〒101─0052 東京都千代田区神田小川町3─7─16 報道ビル6F 「新政界往来」ひょうたんなまず係まで。