霞ヶ関ファイル

記者会見 11・14

茂木敏充外相

台湾めぐる存立危機発言

【大臣】2点、冒頭発言をさせていただきます。1点は、インドネシアとの「2+2」です。来週月曜、11月17日に、第3回目となります「日・インドネシア外務・防衛閣僚会合」、いわゆる「2+2」を東京で開催いたします。日本側から、私と小泉防衛大臣、そして、インドネシア側からは、スギオノ外務大臣とシャフリィ防衛大臣が出席いたします。2回目の「2+2」の時も、私、外務大臣として参加をさせていただきました。
 また、私、その「2+2」が終わった後、スギオノ外務大臣との間で、ワーキング・ディナー、これも開催する予定であります。
 これらの協議を通じて、一層厳しさを増す安全保障環境についての認識を、しっかりとすり合わせるとともに、日本とインドネシアの間の安全保障・防衛分野での協力の進展を確認しながら、「自由で開かれたインド太平洋」の実現に向けて、更なる連携強化について議論を行っていきたいと、こんなふうに考えております。
 それからもう一点、ガザの関係でありますけれど、大久保武氏、元々外交官でありますけれど、「ガザ再建支援担当大使」に任命することについてであります。
 今週のG7外相会合でも、表明したとおり、我が国として、ガザの復旧・復興について、積極的な役割を果たしていく。これが基本的な考え方でありますが、今般その一環として、元外交官で、現地にも駐在経験等がある大久保武氏を「ガザ再建支援担当大使」、これに任命をいたしました。
 大久保武氏にはその知見と人脈を生かして、ガザの再建や統治メカニズムの構築などに取り組んでもらいたいと思います。
【記者】台湾海峡をめぐる存立危機事態についての高市首相の答弁に関して、中国の林剣報道官は、13日の記者会見で、中国の主権に関する主張や、過去の歴史の記憶の引用をするなどして、強い言葉で日本を非難しました。また、中国外務省は、北京に駐在する金杉憲治大使を呼んで抗議するとともに、首相の発言の撤回を求めました。日本側が、首相が述べているのは、台湾海峡の不安定化が、日本の安全保障に悪影響を及ぼすということであり、政策の変更ではない上、中国の主権論でもないと推察をします。こうした日本の主張、日本と中国の主張や認識のずれや、中国の強い反応に対して、大臣は、どのように考えていますでしょうか。また、先ほど申し上げた、金杉大使を呼び出して抗議したことも含めて、受け止めを伺います。よろしくお願いします。
【大臣】中国外交部の会見での発言については承知をいたしております。また、高市総理の国会での答弁に対して、昨日、中国側から、我が方大使へ、金杉大使に対して抗議があり、これに対して、金杉大使から、高市総理の答弁の趣旨と我が国の政府の立場について、中国側に改めて説明を行い、明確に反論したところであります。この内容については、昨日の会見でも私がお話ししたとおりです。
 その上で、我が方大使から、今般の中国の大阪総領事の投稿、これは、在外公館の長の発信として、極めて不適切と言わざるを得ないと、強く抗議の上、改めて中国側の適切な対応を強く求めたところであります。
 先月末の日中首脳会談や、日中外相電話会談でも確認したところでありますが、日中関係の大きな方向性に影響が出ないように、こういう確認した内容について、大きな影響が出ないように、中国側に対して、引き続き、適切な対応を取るよう、強く求めたいと思っております。
 いずれにしても、台湾海峡、この平和と安定は、日本の安全保障はもとより、国際社会の安定にとっても、極めて重要でありまして、この点は何度も繰り返していることでありますが、台湾をめぐる問題が、対話により、平和的に解決されることを期待すると、これが我が国の一貫した立場であります。
 また、政府の台湾に対する立場、これは、1972年の日中共同声明のとおりであり、変更はございません。
【記者】先ほど大臣も言及されましたが、中国の大阪総領事のSNS発信について伺います。与野党双方から、ペルソナ・ノン・グラータの指定を求める声が高まっていますけれども、過去に、日本政府として、ペルソナ・ノン・グラータに指定された事例、反対に相手国から指定を受けた事例をお伺いします。併せて、それらの事例と比較して、今回の大阪総領事の発信が、ペルソナ・ノン・グラータに値するのかどうか、改めて大臣のお考えをお尋ねいたします。  
【大臣】2点というか、質問があったのですが、逆の方からお話をさせていただきますと、先ほどの質問に対する答えと重なる部分もあるのですが、これまで日中間では、「戦略的互恵関係」の包括的推進と「建設的かつ安定的な関係」の構築という大きな方向を確認してきておりまして、これは先般行われた日中首脳会談や、それに先立ちます私と王毅外相との電話会談においても、改めて確認をしたところであります。
 こうした大きな方向性の下、あらゆるレベルで、幅広い分野において、意思疎通を一層強化をし、双方の努力により、課題と懸案を減らして、理解と協力を増やしていく方針であります。
 こうした中で行われた御指摘の中国の大阪総領事の投稿、これはこれまでも述べてきているとおり、在外公館の長として、長の発信として、極めて不適切であると、このように考えております。
 外務省、そして、在中国大使館から、中国側に対して、こうした投稿は極めて不適切であると、こういう申入れを行い、厳しく抗議をし、関連の投稿の速やかな削除を求めるとともに、適切な対応を強く求めております。
 その後、関連の投稿の一部は閲覧できないと、こういう状況になったと承知をいたしております。
 中国の大阪総領事によります、複数回にわたります、今回1回だけではなくて、昨年の選挙の際もありましたけれど、不適切な発信、これ遺憾であります。中国側に対して、日中関係の大きな方向性に影響が出ないよう、引き続き、適切な対応を中国側として取るように強く求めていますし、また、いきたいと思っております。
 その上で、ペルソナ・ノン・グラータの過去の事例でありますけれど、こちらが出した事例が4件、それから、相手側から出された事例が2件あります。
 具体的に申し上げますと、過去に、我が国が駐日外国大使館員に対してペルソナ・ノン・グラータを通告した事例としては、1973年に在日韓国大使館の一等書記官、2006年に在日コートジボワール大使館のアタッシェ、2012年に在日ロシア大使(注:会見最後の部分で「在日シリア大使」に訂正)、そして、22年の在札幌ロシア総領事、この4例がありました。
【記者】中国に関して、中国国内のスパイ罪の運用について伺います。北京市の高級人民法院は、13日、日本人外交官に情報提供したなどとして、スパイ罪に問われた中国共産党系の主要紙の元幹部、董郁玉氏の控訴上訴を棄却しました。懲役7年の1審判決を支持し、判決が確定したことになります。昨年11月の1審判決は、董氏と親交のあった日本人外交官らの名前の一部を列挙し、スパイ組織の代理人と認定しています。
 在中国日本大使館をスパイ組織とみなしていますが、受け止めと、中国国内のスパイ罪の不透明な運用について見解を伺います。  
【大臣】当該裁判につきましては、裁判の判決を含めて、事実関係は確認中であります。
 その上で、御指摘の事案を含めて、我が国政府の外交活動に関する個別具体的な事柄を明らかにすることは、今後の外交活動に支障を与える懸念があるため、お答えを差し控えますが、それが何か悪いことをやっていると、そういうことでは決してなくて、我が国の在外公館が行っている外交活動、これは、外交官として正当な業務であると、これは間違いないと思っております。
 また、我が国は、中国のいわゆる「反スパイ法」について、これまでも中国側に対して、例えば「反スパイ法」、最後のところに、「その他スパイ行為」とか、そういうのが入ってきたり、あいまいな部分もありますし、また、法執行、及び司法プロセスにおける透明性、こういったことの確保を求めているところであります。
 そうした透明性は、まだ不十分であることから、引き続き、関連の取組、また、申入れ等々も行っていきたいと考えております。

茂木敏充