日本経営者同友会会長 下地常雄氏に聞く

政治家のサラリーマン化を憂う(2)

志あってこその政治家

 政治家の存在価値

 今回の高市早苗自民党総裁を首班指名で連立した日本維新の会の藤田共同代表は10月21日の記者会見で吉田松陰の言葉を引用し、「狂気とも言えるほどの情熱をもって常識から外れる者は、真に行動を起こしている愛すべき存在である。一方、頭だけで考えて、理屈のみを述べる人間は結局、何も行動せず恐ろしい。諸君、狂いたまえ。これこそ改革への志を持つわれわれ政治家全員が胸に抱くべき精神ではないか」と述べた。

 政治家として大いに国のために行動して欲しいものだ。

 高市早苗内閣発足以来、永田町のどんよりとした空気が秋の空のように澄み渡った気がする。

 小粒の政治家

 近年の永田町に活力が乏しかったのは、品性がなく、言いたい放題、やりたい放題の立ち回りばかりがうまい小粒の政治家が跳梁跋扈し、明治維新の志士のような狂気とも言えるほどの情熱を持って行動する政治家が少なくなったせいだ。数合わせの為に依頼され出馬した人や、テレビなどで名前が知られただけの人など、あまりにも多過ぎる。

 秘書給与の不正受給も後を絶たない。

 2025年東京地検特捜部が詐欺容疑で、日本維新の会の石井章参院議員の事務所を家宅捜索した。24年には公設秘書の給与を国から詐取した罪で、自民党所属だった広瀬めぐみ元参院議員が在宅起訴され、25年に有罪が確定した。また立憲民主党の辻元清美参院議員(当時は社民党衆院議員)は勤務実態のない政策秘書の給与をだまし取ったとして、議員辞職後の15年7月に有罪判決を受けているなど枚挙にいとまがない。

 16年に国会議員秘書給与法が改正され、議員経由で支払われていた給与は秘書本人に直接支払われるようになったが、同様の事件が後を絶たない。公私を厳格に分けて、透明性と説明責任を果たすことが政治家に求められる。

 政治家に求められる姿

 王女時代のエリザベス2世は第二次世界大戦が勃発するとイギリス軍に従軍した。フォークランド紛争でもアンドルー王子(当時)などイギリス軍に従軍している。

 有事には戦地に自発的に赴く覚悟と責任感こそが、英国で王室や貴族が敬意を払い続けられるゆえんだ。 

 我が国でも、14年前の3月11日に発生した東京電力福島第一原発事故の直後、天皇在位中の上皇さまらに京都か京都以西に避難するよう当時の政権が非公式にお伺いをたてた際、「国民が避難していないのに、あり得ない」と、上皇さまは我が身の安全を顧みず、国民や被災者に寄り添おうとされたことに感銘を覚える。

 権力を持つ立ち位置にあり、国の将来を担う政治家も然り、個人の利益ではなく社会の為にその力を使う覚悟と、謙虚で最も責任を負う者であるとの強い自覚を持ち、政治に臨んで欲しい。

 政治家は少なくとも政治に対する知識や心構えが備わっている人物であって欲しい。

 龍が天を目指して上に登るように、高い志を持って動けば自然と人が集まってくる。これから永田町で早苗龍が空を舞い珠玉の珠を掴むかどうか、大いに楽しみだ。

 高市総裁の覚悟

 高市早苗氏が総裁に選出された時の「働いて働いて働いて、、」という馬車馬宣言が波紋を呼んだ。「ワーク・ライフバランスを捨てる」と言い切ったことや午前3時に官邸入りしたことなどが、槍玉にあげられた。

 だが、これ迄の政権のどんより曇った空気を一新させるに足る高市総裁の覚悟が見て取れた。

 ただ、高市総裁の睡眠時間が「2時間から多くて4時間」というのは心配だ。

 身体を壊すほど働いては、本人のみならず国の為にもならない。首相に求められるのは、国家の舵取り役である以上、いつ何時起きるか分からない自然災害や安全保障の危機に際し、正しく判断する精神的、肉体的なパワーだからだ。根を詰めず、ほどほどにと申し上げたい。

しもじ つねお

1944年、台湾生まれ。宮古島育ちで歴代米大統領に最も接近した国際人。77年に日本経営者同友会設立。レーガン大統領からトランプ大統領までの米国歴代大統領やブータン王国首相、北マリアナ諸島サイパン知事やテニアン市長などとも親交が深い。93年からASEAN協会代表理事に就任。テニアン経営顧問、レーガン大統領記念館の国際委員も務める。また2009年、モンゴル政府から友好勲章(ナイラムダルメダル)を受章。東南アジア諸国の首脳とも幅広い人脈を持ち活躍している。関東地方更生保護事業協会理事。