霞ヶ関ファイル

記者会見 1・18

末松信介文科相

佐渡金山の世界遺産推薦

【記者】外国人留学生の件について伺います。国費留学生87人の来日が、認められることになりました。留学生のみの特例となったことについて、大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】留学生を含みます外国人の新規入国停止につきましては、当面2月末まで、その骨格を維持する一方で、「特段の事情」によります新規入国につきましては、人道上・国益上の観点から必要な対応を行うこととされてございます。総理ともいろいろ話もいたしました。留学生の受け入れは、諸外国との友好関係を構築をし、我が国の教育・研究力の向上や更なる発展に資するものでございます。特に国費留学生は、より高度な外交及び教育・研究の観点から我が国が招いている方でございます。今回、そうした国費留学生の中でも、卒業・修了まで1年未満となっているなど、個別の事情を勘案した結果、必要な防疫措置を講ずることを前提とした上で、87名の方につきましては、入国が認められたところでございます。私といたしましては、外国人留学生の新規入国の停止は、外交や教育・研究分野のみならず、地域社会や経済にも大きな影響を与えているものと認識をいたしてございます。政府方針を踏まえつつですね、少しでも受け入れを進めるための対応策を検討するよう指示をいたしております。引き続き、外国人留学生の声や現に生じている課題を共有しながら、個別の事情を勘案しつつ、留学生の新規入国に向けまして、関係省庁と調整をしっかりいたしてまいりたいというふうに思ってございます。留学生の入国の機会は、そういう意味では、かなりの期間お待たせをいたしておりますし、我々、願うところでございます。

【記者】新潟県の佐渡金山と世界遺産の推薦の件についてお伺いいたします。ユネスコへの推薦状の提出期限が、来月2月1日に迫っております。以前ご回答いただいたときは、政府内での総合的な検討をされているというふうにお伺いしました。現在の検討状況について教えていただきたいです。あと、その検討は、デッドラインが決まっていますが、いつまで検討していつまでに判断を下される見通しなのかという点もお伺いします。お願いします。

【大臣】前回申し上げましたのですが、今年度、世界文化遺産の国内候補の選定につきましては、文化審議会が文化遺産としての価値の観点から検討を行いまして、年末の12月28日に、佐渡金山を推薦候補として選定する旨の答申がなされてございます。これを受けまして、今、政府内で総合的な検討を行っているところでございます。いつまでということ、2月1日は当然なんですけれども、一つのラインになってはまいりますけれども、そのことも念頭に置きまして、今、今日も政府とは関係ないんですけれども、聞き及ぶところ、ある党ではですね、今日いろんな議論も行われるというふうに聞いてございます。しかし、それとは別に、今、積極的に、関係省庁とも、その辺りのことにつきましては、真剣な検討、議論がなされておりまして、ここで今ちょっと発言をすることは控えさせていただきたいというふうに考えてございます。2月1日というのは一つのラインであることはお認めするところでございますけれども、これはやはり、出していく以上ですね、しっかりと先まで考えていく必要がございますのでね。本当に、文化審議会の答申されたことは、大変喜んでございます。

【記者】文化審議会では、今ほどおっしゃいましたが、遺産の文化的価値・学術的な価値については、もうご検討、判断がついていると思います。それ以外の総合的な判断というか検討というと、政治的な判断のことのように思われます。そうした、既に省内で認めた文化的・学術的な価値がですね、そうした政治的な事情でですね、ひょっとしたら認められないかもしれないという状況について、文科省の大臣としてはどう思われますか。

【大臣】それにつきましてはですね、世界から、当然、歓迎される世界遺産でなければならないということ、それに対する努力を惜しまないということだけ申し上げておきたいと思います。

世界遺産で首相の求心力低下か

記者コラム

文化審議会が文化的・学術的な価値を認めて、世界文化遺産の国内推薦候補に選んだ「佐渡島の金山」。日本政府はユネスコへの推薦を見送りする方針(1月21日現在、推薦期限は2月1日)だが、この筋の通らない判断によって、岸田首相の求心力が低下するかもしれない。
外務省に推薦慎重論が広がったのは、韓国政府が戦時中に朝鮮半島出身者らへの「強制労働」があったとし撤回を求めてきたからだ。今回推薦しても登録の実現は難しいからだという。しかし、推薦内容は韓国からの反発を予想して「江戸時代まで」に区切っており、強制労働とは無関係。
一方、「世界の記憶」(世界記憶遺産)の申請登録に際し、当事国による意義申立制度を設け合意しない限り申請しない制度を、日本が主導した経緯もある。その手前、韓国が合意しない推薦はできない、としてブレーキが働いたことがうかがえる。しかし、これについても記憶遺産と文化遺産とは別の枠組みで、推薦見送りの理由としては説得力がない。
結局、外務省は推薦しても登録は難しい、と現実的に判断したのだろうが、推薦を見送れば、韓国側の無理筋の話を認めたと受け取られるのだから、野党はもとより自民党の保守派からも、政府の慎重姿勢に批判が強まるのは避けられない。