霞ヶ関ファイル

記者会見 1・7

林芳正外相

日米「2+2」

【大臣】今年もよろしくお願いいたします。
私から、「2+2」でございますが、今朝、ブリンケン(国務)長官、オースティン(国防)長官及び岸(防衛)大臣と、日米「2+2」をテレビ会議形式で開催し、大変充実した意見交換を行うことができました。
日本を取り巻く戦略環境が厳しさを増す中、日米同盟は一層重要となっております。日米両政府は、それぞれ国家安全保障戦略を始め、戦略文書の見直しを進めております。日米同盟をいかに進化させるか、現在、そして将来の挑戦に効果的に対処し続けるかについて、重要な議論ができたと思っております。
本日の「2+2」で、大きく以下の3点の成果があったと考えております。
第一に、変化する地域の戦略環境に関する認識を、丁寧にすり合わせるための突っ込んだ議論を行うことができたと考えます。特に、ルールに基づく秩序を損なう中国の取り組みが、様々な課題を提起していることへの懸念を共有し、日米が地域における安定を損なう行動を共に抑止し、必要であれば対処することを決意いたしました。
地域の平和と安定を更に損なう中国の東シナ海における活動に対する懸念や、尖閣諸島に対する現状変更の試みや日本の施政を損なおうとする一方的な行動に、日米で引き続き結束して反対することを確認をいたしました。南シナ海における主張や活動への強い反対についても確認をし、また、新疆ウイグル自治区及び香港の人権問題に関しまして、深刻かつ継続している懸念を確認しました。更に、台湾海峡の平和と安定の重要性を確認いたしました。
更に、北朝鮮についても、5日の北朝鮮による弾道ミサイルの発射を始め、北朝鮮の核・ミサイル活動について、強い懸念を共有するとともに、安保理決議に基づく完全な非核化、拉致問題の即時解決等について米国と完全な意見の一致を見たところでございます。
第二に、日米同盟の抑止力・対処力の抜本的強化に向けて、具体的な議論を進めることを確認いたしました。米国から、強固な拡大抑止に対する揺るぎないコミットメントや地域における態勢・能力の強化への決意表明がございました。また、日本としても、国家安全保障戦略の改定等を通じて、自身の防衛力の抜本的強化を行う旨を説明し、米国から力強い支持の表明がありました。
更に、宇宙サイバー分野での協力深化、新興技術を取り込む技術協力の推進、情報保全の一層の強化など、日米同盟の優位性を将来にわたって維持するための基盤を整備し、投資を行っていくことの重要性につき一致をいたしました。
また第三に、日米同盟の抑止力を維持しつつ、沖縄を始めといたします地元の負担軽減を図ることの重要性についても一致をしました。普天間飛行場の固定化を避けるためには、辺野古への移設が唯一の解決策であることを改めて確認をいたしました。また、本年は沖縄返還50周年であり、沖縄統合計画に基づき、嘉手納以南の土地返還の取り組みの加速化に向けた連携を確認いたしました。
更に、私と岸大臣から、在日米軍による安全な運用、事件事故での適切な対応等についても、米側に改めて要請し、緊密な連携を確認しました。
また、最近の在日米軍の新型コロナ感染状況を踏まえ、在日米軍従業員を含めた地元の不安解消に向け、総理の指示を踏まえ、外出制限の導入を含め、感染症拡大防止の措置の強化と徹底を米側に強く求めました。
これに対し、ブリンケン長官から、日本側の要望は明確に理解をした、国防総省や統合参謀本部とともに、日本における懸念を解消するため努力をしたい、また、オースティン長官からは、既にブリンケン長官から昨日の私とのやり取りの説明を受けている、地域住民と米軍兵士の安全を引き続き重視しており、軍指導部とも協議をしている、地域住民と米軍兵士の安全ほど重要なものはなく、そのためにできる限りのことをしたいとの返答がございました。
今回の「2+2」の結果、日米同盟の今後の取り組みの方向性を示す野心的な共同発表を発出をいたしました。また、今回の「2+2」の機会を捉えて、先ほど「在日米軍駐留経費負担に係る特別協定」及び「共同研究・開発に関する枠組み交換公文」に署名を行いました。いずれも、日米同盟の更なる強化に向けて重要な基盤を提供するものでございます。
今回の「2+2」での議論を踏まえ、岸大臣及びブリンケン長官、オースティン長官とともに、日米同盟のさらなる進化に取り組んでまいります。私からは以上です。

【記者】先ほど発表された「2+2」の共同文書では、日本側として国家の防衛に必要な、あらゆる選択肢を検討する決意を表明したという趣旨が盛り込まれております。岸田首相は、いわゆる敵基地攻撃能力の保有について有力な選択肢だとの考えを示していますけれども、林大臣として、今後3文書の改定に向けて、どういう基本的な考えで検討されるか、お考えをお聞かせください。

【大臣】極超音速滑空兵器や変則軌道で飛翔するミサイル等、近年、ミサイル技術が急速なスピードで変化・進化をしておりますことから、我が国として、国民の命や暮らしを守るために何が求められるのか、ミサイルの脅威に対抗するための能力も含めて、あらゆる選択肢を排除せずに、現実的に検討していくこととしている旨、米国側にも説明をいたしまして、日米で、このプロセスを通して緊密に連携をすることで一致をしておるところでございます。
また、戦略3文書でございますが、この日米同盟の抑止力・対処力の抜本的強化に関する議論の文脈で、日米双方の安全保障に関する戦略文書についても議論が行われて、今後作成をされます日米それぞれの安全保障戦略に関する主要な文書を通じて、同盟としてのビジョンや優先事項の整合性を確保することで一致をしました。

【記者】「2+2」の共同文書についてお伺いしたいんですけれども、文書の中で、日本が今後、防衛力を抜本的に強化する決意を改めて表明したというふうにあるんですけれども、今回の「2+2」で文章の改定を含め、また、防衛費をこれから増やしていくような考えなどを、米国に日本側から伝えられたということがあるのかというのが1点と、もう1点、台湾海峡のところなんですけれども、昨年3月の「2+2」で、まさに台湾海峡について言及があり、そのあと国際認識として広まっていったのですが、今回、台湾海峡の問題について、今、その中国の脅威であったり、この現状について、日米双方から具体的な言及があったのか教えてください。

【大臣】中国・台湾海峡ということですが、このまず地域の戦略環境の中で議論する中で、中国についても、じっくりと議論を行いました。特に、日米間で、ルールに基づく秩序を損なう中国による取り組み、これが地域及び世界に対する政治的、経済的、軍事的及び技術的な課題を提起していることへの懸念を共有をいたしたところでございます。また、地域の平和と安定を更に損なう、中国の東シナ海における活動に対する懸念につき一致をいたしました。
また、安保条約5条が、尖閣諸島に適用されること、また、尖閣諸島の現状変更を試みる、あるいは、同諸島に対する日本の施政を損なおうとする一方的な行動に、日米で引き続き反対することを確認したところでございます。
地域の戦略環境について議論をする中でですが、台湾をめぐる状況についても議論が及びまして、米国と、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調するとともに、両岸問題の平和的解決を促していくということでも、一致をしたところでございます。

【記者】防衛関連の共同研究・開発の協定について伺います。共同文書には、極超音速技術に対抗するための将来の協力という文言が盛り込まれましたけれども、これは、極超音速ミサイルを迎撃するためのものなのか、また、そのミサイルを保有するための研究なのか、先ほど包括的に、というお言葉もあったと思いますが、改めて、その目的について伺います。

【大臣】従来、我が国政府は、我が国の防衛能力を強化するために、いわゆるMDA協定、「日本国と米国合衆国との間の相互防衛援助協定」の下で、米国との間で、共同研究・開発・生産等を実施してきたところでございます。
今回の交換公文ですが、MDA協定に基づく日米間の共同研究・開発、それから生産等の案件一般に共通する諸条件を規定する枠組みを設けておくことで、共同研究・開発・生産等に関するプロセス、これを一層合理化するものであります。日米間で協議を行った結果、先ほど申し上げましたように、本日、私とグリーン駐日米国臨時代理大使との間で、本交換公文への署名を行ったところでございます。