負のバネ円安で経済活性化図れ
資本流入とインバウンド拡大を
急ピッチで円安が進んでいる。
9月8日の外国為替市場で円相場は24年ぶりに1ドル=144円台の安値をつけた。
日米の金利差拡大を背景に、今年に入って円相場は対ドルで29円も下落した。
円安は輸入物価の上昇を招き、家計の実質的な購買力低下をもたらす負の効果がある。その直撃を受けているのが食料品とエネルギーで、食料品価格とガソリンなど石油製品が高騰している。
わが国の食料自給率はカロリーベースで37%(2020年度)と、大きく輸入に頼っており、円安は庶民の台所を直撃する。一方でメリットも小さくない。当面、円安基調継続が予想される中、円安の利点を最大限生かす政策が重要となってくる。
ポイントは2つ。外国からの直接投資とインバウンドの拡大だ。
円安により外国企業の対日投資コストが切り下がる。それを契機に外資流入の大河をつくり、景気浮上のチャンスとすべきだ。
1980年代の円高では、わが国の製造業はコストカットのために、東南アジアなど海外に進出していった経緯がある。
経済発展の雁行形態論が出たのも、この時だ。日本の技術や資本が、まず韓国や台湾に渡り、次にタイなど東南アジアに移っていく。こうした渡り鳥の雁が飛行していくように、経済発展が継承されていく姿を表現したものだ。
だが今回は円安局面を迎えようとしている中、海外の資本流入による産業振興を図るべきだ。
円安は我が国の人件費や土地・建物といった不動産も安くなり、外国系企業が日本進出に当たってチャンスとなる。
そもそも我が国は海外からの直接投資が少ない。直接投資残高の国内総生産(GDP)比は経済協力開発機構(OECD)平均の67%と比べ8%に過ぎず、極端に低いのが実情だ。
こうした「資本の鎖国」状況を打破するには、自助努力も求められる。
進出した外国企業が必要とするグローバル人材を育てることも求められるし、外国資本と日本のスタートアップとの連携を強めることも大事となる。
外国資本の流入は雇用創出効果だけでなく、新たな産業を育成するチャンスが誕生することにつながる。新たな人材や技術流入を伴うことで、経済の活性化を促す効果が期待できる。
資本の受け入れ促進と並ぶ円安対応策は、人のインバウンド拡大だ。
世界はこぞって観光開国に動いている。
厳しい水際措置でコロナ禍に対処してきた韓国でも、多くの国からの「ビザなし観光」を受け入れ始めている。タイやベトナムなど東南アジアでも同様だ。
円安の流れは、わが国の魅力を世界に発信する絶好の機会だ。
時を失うことなく、観光開国に舵を切る世界の流れに乗るべきだ。