霞ヶ関ファイル

記者会見 9・1

林芳正外相

BRICS首脳会合

【大臣】私から2つございます。
まず、1件目ですが、9月3日から10日まで、ヨルダン、エジプト、サウジアラビア及びポーランドを訪問いたします。

最初の訪問国となるヨルダンでは、アブドッラー2世国王陛下への拝謁を始めとする要人へとの会談や、サファディ副首相兼外務大臣との間で、第4回となる外相戦略対話を実施いたしまして、今後の協力について議論するとともに、地域の安定化に向けた連携、これを確認いたします。エジプトでは、エルシーシ大統領への表敬、シュクリ外務大臣との会談を通じまして、今年の4月の岸田総理の訪問時に「戦略的パートナーシップ」への格上げをいたしましたが、この2国間関係を幅広い分野で更に深化させることを確認いたします。

また、第3回日アラブ政治対話を開催いたしまして、今後の日・アラブ協力について、アラブ連盟加盟国との間で活発な議論を行いたいと考えております。

加えて、第1回となる「日本・エジプト・ヨルダン3者閣僚級協議」にも参加して、中東地域における今後の3者の協力につきまして、各国外相と意見交換を行うことを予定しております。

サウジアラビアでは、本年7月の岸田総理訪問時に設立で一致をいたしました日・サウジアラビア外相級戦略対話、これの第1回会合をファイサル外務大臣との間で実施いたします。そして、日・湾岸協力会議(GCC)外相会合を実施する予定です。戦略的パートナーであります同国との間で、政治、経済、文化等様々な分野における協力、これを強化いたします。

ポーランドでは、ドゥダ大統領に表敬を行いまして、7月の岸田総理大臣のポーランド訪問のフォローアップを行うほか、ラウ外務大臣との間で、日・ポーランド外相会談、そして、エミレヴィッチ・ポーランド・ウクライナ開発協力担当政府全権代表と意見交換を行い、ロシアによる侵略開始以降、対ウクライナ支援のハブとしての機能を果たし、国際社会で戦略的・地政学的重要性が一層増しているポーランドとの2国間関係の強化を図る予定でございます。

2件目でございますが、北朝鮮は昨年以来、前例のない頻度と新たな態様で、弾道ミサイル発射等を繰り返すなど、一連の挑発行為、これを続けております。こうした中で、8月24日に、衛星打ち上げを目的とした、弾道ミサイル技術を使用した発射、これを強行いたしました。また、同30日にも弾道ミサイル2発を発射しました。これらは、我が国の安全保障にとって、重大かつ差し迫った脅威であるとともに、地域及び国際社会全体の平和と安全を脅かすものであり、断じて容認できません。

こうした状況のなか、米国及び韓国とも歩調を合わせて、本日の閣議において、拉致、核、ミサイルといった諸懸案の包括的解決のための、我が国の更なる対北朝鮮措置として、北朝鮮関連の安保理決議で禁止されている核・ミサイル開発等に関与した3団体・4個人を、外為法に基づく資産凍結等の対象として、追加指定することを了解いたしました。

我が国としては、拉致、核、ミサイルといった諸懸案に関しまして、北朝鮮が問題解決に向け、具体的行動、これをとるように強く求めます。引き続き、日米、日韓、そして日米韓で緊密に連携をし、国際社会とも協力をしながら、北朝鮮の非核化を目指してまいります。

【記者】冒頭発言にありました中東訪問についてお伺いします。先般、BRICS首脳会議で、今回大臣が訪問されるサウジアラビア、エジプトを含めて6カ国が加盟することが決まりました。今回2カ国、そのうち訪問されると思うんですけれども、今回の訪問だとか、今後予定される国連総会といった国際会議などで、こうしたその加盟国、中国も関係強化している国だと思うんですが、日本として、どういうふうに関係構築していくか、大臣のお考えをお聞かせください。

【大臣】先般のBRICS首脳会合におきまして、エジプトそしてサウジアラビアを含む6カ国の加盟招待が決定された旨承知しております。

第3国間の動きについて、コメントすることは差し控えますが、今回訪問するエジプトそしてサウジアラビアは、いずれも地域、そして国際社会で重要な役割を果たしている国々であります。

ロシアによるウクライナ侵略が、国際秩序の根幹を揺るがす中で、先般、岸田総理が、これらの国々を訪問されまして、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化することの重要性、これについて議論し、連帯していくことを確認しております。

今回の私の訪問においても、それぞれの2国間の協力関係の進展を図るとともに、ロシアのウクライナ侵略を始めとする国際情勢、これについても率直に議論をいたしまして、今後の更なる連携、これを確認したいと考えております。

【記者】岸田総理が、5日から、インドネシア、インド歴訪をして、ASEAN関連首脳会議やG20首脳会議に出席します。総理は、先日の党役員会で、「広島サミットの成果をG20の首脳会議につなげる」という発言をしています。広島サミットでは、核軍縮の文書「広島ビジョン」を出しました。更に、サミットで議論された核兵器や平和、ロシアによるウクライナ侵攻への国際対応、そういう観点で、林大臣は、今回のASEANやG20の会議で、日本は、どのような主張をして役割を果たしていくべきかというお考えを聞かせください。

【大臣】核軍縮をめぐる国際社会の分断の深まり、そしてロシアの核兵器による威嚇などによりまして、「核兵器のない世界」に向けた道のり、これは一層厳しいものになっております。しかし、こうした中であるからこそ、「核兵器のない世界」の実現に向けて、現実的かつ実践的な取り組み、これを着実に進めていく必要があると考えております。

今般、岸田総理が出席をされます、このASEAN関連首脳会議、また、G20ニューデリー・サミットにおける議論、これは余談をすることは差し控えたいと思いますが、ロシアによるウクライナ侵略が続く中で、ロシアによる核の威嚇は断じて受け入れることはできず、ましてや、その使用はあってはならない。こうした考えを訴えていく、これが重要なことであるというふうに考えております。

【記者】ALPS処理水の関連で伺います。海洋放出の開始後、中国政府が日本産の水産物の輸入を全面的に停止したことをめぐり、自民党の会合では、科学的根拠に基づかない対応だなどとして、WTOへの提訴を求める主張が訴えられ、政府内にも提訴を選択肢に入れて検討すべきだとの意見も出ています。大臣のご見解と今後の対応についてお聞きします。

【大臣】中国側が、現行の輸入規制措置、これに加えまして、科学的な根拠に基づかない新たな措置を導入したことは極めて遺憾であります。

中国側に対しては、即時撤廃を求める申し入れを行っておりますが、引き続き、科学的根拠に基づいた議論を行うよう強く求めてまいります。我が国はこれまでも、WTOにおいて、中国を含む各国の規制につきまして、早期の規制撤廃を一貫して強く働きかけてまいりました。具体的に申し上げますと、例えば、WTO衛生・植物検疫委員会において、規制の早期撤廃を求めてきております。

引き続き、WTOその他の関連協定の枠組み等の下で、何が最も効果的かという観点から、様々な選択肢を不断に検討してまいりたいと考えております。

【記者】今の関連で伺います。WTOなどの枠組み以外にも、様々な政治的な解決方法というものも念頭に入れてらっしゃるかと思うんですけれども、今後、中国の行動を今回の行動を変えさせるために、どのような働きかけが効果的と思われるか、お考えをお聞かせください。また、今月は、重要な外交日程が続きますけれども、この中で、中国側と高いレベルで対話していくというようなお考えはあるでしょうか。

【大臣】政府としては、これまでも述べてまいりましたとおり、中国が現行の輸入規制措置に加えて、日本産水産物の全面的な一時輸入止措置、これを導入したこと、極めて遺憾であります。先ほど申し上げたとおりでございます。

私自身が、7月の王毅主任との会談で、直接強く申し入れましたように、そもそも日本産食品の安全性、これは科学的に証明をされておりまして、今般の措置を含めて、今後とも、あらゆる機会を捉えて、科学的根拠に基づかない輸入規制措置の即時撤廃、これを求めてまいりたいと考えております。

中国側等のハイレベルでの対話につきましては、現時点で決まったことはございませんが、いずれにいたしましても、「建設的かつ安定的な日中関係」、これを双方の努力で構築していくためにも、中国側には、冷静かつ建設的な対応を求めてまいりたいと考えております。