日本経営者同友会会長 下地常雄

強運の持ち主トランプ

ホワイトハウス訪問記

40年通ったワシントンDC
日本経営者同友会が米ホワイトハウスに招かれるようになって、かれこれ40年が経過した。

その間アメリカ大統領はレーガンからブッシュ、クリントン、ブッシュ・ジュニア、オバマ、トランプ、バイデンと変わっていったが、毎年のホワイトハウス訪問は日本経営者同友会の恒例行事となっており、世界情勢を知る上でも有意義な情報収集の機会となっている。

ホワイトハウスでのパーティーの参加者は200人程度だが、在米日本人や中国人など数人の参加者は時折、見かけはするが、東アジアからの出席者は日本経営者同友会だけだ。

今回は、バイデン大統領は息子の有罪判決が出たこともあり、体調不良の為に出席できず、急遽、ハリス副大統領夫妻がホスト役を務めた。長年、ホワイトハウスのパーティーに参加しているが、大統領の体調不良での不在は初めてであった。

戦争が起きていないトランプ大統領時代
現地のホワイトハウス担当のA記者から今秋の大統領選の展望に関する情報を得た。

彼が強調したのがトランプ大統領時代には、戦争は一度も起きていないこと、米国民は圧倒的にトランプを支持しており、トランプ嫌いの国民も、今ではバイデンよりはまだましだという人も少なくないそうだ。

片やバイデン大統領は、高齢によるマイナス点が目立ち、周囲が立候補を辞めるよう助言するも、全く耳を貸そうとしない。また民主党内でもバイデン大統領の代わりの候補者も定まらないという状況が続いている。

祝福されなかった大統領当選
A記者はクリスチャンでトランプ贔屓である為に、話題の殆どがトランプ前大統領に関するものであったが、下記のエピソードはなかなか面白くご紹介したい。

トランプ前大統領は8年前の選挙戦では全く当選するとは思ってもいなかった。単に大統領選に立候補すれば彼の知名度が上がり、彼のTV番組の視聴率が上がり、ビジネス的に大きなメリットがあると目論んだ上での出馬だったという。

メラニア夫人は出馬に大反対であったが、どうせ当選しないからと説得しての出馬であった。ところが結果はあに図らんや、当選してしまった。その日はお祝いどころか、トランプ家では夫婦喧嘩が始まったと教えてくれた。

トランプの人生観変えた地方の人々
トランプ氏は、大統領選で今まで訪問したことがない地方の人々と出会い、彼らの生活を見て、人生観が大きく変化したそうだ。それまで彼はNYに住み、富裕層の人達との付き合いが日常であった。それがキャンペーン中に出会った人たちは皆豊かではないものの、家族が支え合って生き生きと幸せそうにしていることに心底、驚いたという。そして「このような家庭から一人でも戦場に駆り出してはいけない」と強く思うようになったという。

以前、私はトランプ氏が、ウクライナとロシアの戦争についてのインタビューにコメントはせず、ただ一言、人を殺さない、殺人を止めることだと発言していたことを思い出した。

驚くばかりの強運
帰国後、7月13日のトランプ前大統領暗殺未遂事件では、トランプ氏は奇跡的に一命を取り留めた。彼の強運には驚くばかりである。会場を後にする際のトランプ氏のガッツポーズは、戦う気概と強いアメリカを彷彿させた。

その数日後開かれた共和党国民集会では、「移民でも努力し自由に生きられる国アメリカ」を称える著名人達の応援演説や、米国の国連大使であったニッキー・ヘイリー氏もトランプ大統領時代にはプーチンは侵攻も戦争もしなかった、それはトランプ氏がタフだったからだという応援演説をしている。

またその日に同じミルウォーキーで、トランプ氏の人種問題やパレスチナ問題、妊娠中絶をめぐる権利などへの政策に反対する人達の反トランプ大規模集会も開催されていた。自由の国アメリカを目指して移民してきた人々は、この光景を称える。

どの国も一国の舵取りは難しいが、世界的にみても大きな変革の時代に入っているように思う。

人間の命だけは尊ぶ世の中であってほしいと願わずにはいられない。

しもじ つねお

1944年、台湾生まれ。宮古島育ちで歴代米大統領に最も接近した国際人。77年に日本経営者同友会設立。レーガン大統領からバイデン大統領までの米国歴代大統領やブータン王国首相、北マリアナ諸島サイパン知事やテニアン市長などとも親交が深い。93年からASEAN協会代表理事に就任。テニアン経営顧問、レーガン大統領記念館の国際委員も務める。また2009年、モンゴル政府から友好勲章(ナイラムダルメダル)を受章。東南アジア諸国の首脳とも幅広い人脈を持ち活躍している。