今月の永田町
党勢低落止まらぬ公明党
石井代表落選で繋ぎの人事
ポスト斉藤に竹谷、岡本の名
公明党は11月17日、結党60周年を迎えたが、党勢の低落が止まらない。10月27日投開票の衆院選で、公示前勢力の32議席が24議席(小選挙区4、比例代表20)に激減。党代表として初挑戦となった石井啓一代表は落選して辞任し、国土交通大臣だった斉藤鉄夫氏が急きょ、後継代表に就任した。しかし、斉藤氏はすでに72歳であくまでつなぎ役だ。ポスト斉藤には早くも、竹谷とし子代表代行、岡本三成政調会長の名前が挙がっているが、人材難にも直面している。
石井代表は衆院選公示前の8日、「今回は得票数よりも議席数だ。どれくらいの議席を得られるかが最重要だ」とし、比例代表の目標得票数を掲げないと表明した。掲げないというより、掲げられないほど厳しい戦いが予想されていたからだ。
前回2021年の衆院選では「比例の目標800万票」に届かず、約711万票にとどまった。今回は、自民が発生源の「政治とカネ」問題の逆風を受けることなどを考慮すれば、前回を下回る可能性は明らかだった。実際、今回の得票数は600万票を割り、596万票。1996年以降の現行制度で最少を記録したのである。この低落傾向は、2005年の郵政選挙で約898万票を得たあと、止まらないのだ。
石井氏自身、比例北関東ブロックでの出馬をやめ、負ければ落選という背水の陣を敷いて埼玉14区から立候補したものの、敗退。重きを置いていたはずの獲得議席も8議席減の24議席に。支持母体の宗教団体・創価学会が「常勝関西」と誇ってきた大阪4選挙区でも全敗し、全国の小選挙区獲得議席は4にとどまったのである。
「確かに自民の政治資金問題の逆風をこちらも受けた。しかし、党勢の低落傾向が止まらない背景には支持母体の創価学会の衰退がある」と率直に語るのは、現職の創価学会幹部A氏だ。A氏によると、故池田大作名誉会長が健康問題で表に出なくなって以来、学会本部の求心力が低下。「池田先生の為に」「池田先生の顔に泥を塗るな」の号令が効かなくなったという。「池田先生の御顔に毎朝ご挨拶できる、とのトークで約500万部まで拡大した『聖教新聞』は300万部ぐらいに落ち込んでいる。あと1、2年すれば200万部ほどになるのではないか」「池田先生を知らない3世、4世を選挙戦で動員するのは困難になっており、現在3000人近くいる地方議員数も減っていくだろう」とも続ける。党の足腰の衰えに比例した集票力の低下は急速に進行中というのだ。
衆院選の敗北が確実となった10月28日、石井代表は「逆風をはね返す自身の力量が足りなかったと言わざるを得ない」と総括、代表辞任に追い込まれた。公明党は11月9日、臨時党大会を開催し、後任の代表に国土交通相の斉藤鉄夫氏を正式に選出した。斉藤新代表は就任のあいさつで「党の持ち味である国と地方のネットワークによる政策実現力を発揮し、一丸となって立ち上がれば反転攻勢につながる。私が先頭に立ち戦っていく」と意気込んだ。しかし、公明党には「任期中に69歳か在職24年を超える場合は原則公認しない」という内規がある。それを考慮すれば72歳の斉藤氏が長らく代表ポストに留まることはあり得ない。
公明党・創価学会の内部事情に詳しい自民党幹部は「代表になったとはいえ、斉藤さんは創価学会の政治部長とも言われる佐藤浩副会長の言いなりで、とりあえず代表にされただけ。代えるのは簡単だろう」と語る。佐藤氏は「安倍晋三政権時代、菅義偉官房長官との太いパイプを武器に公明党を事実上、コントロールしてきた。しかし、子飼いの遠山清彦衆院議員のスキャンダル発覚と議員辞職に追い込まれたことにより共同責任を取らされ、引退に追い込まれたと見られていたが、復活してきた人物」。そのため、「佐藤氏と距離感の近い人が後継者になるだろう」と指摘する。
その上で、同幹部は2人の名前を挙げた。一人は、浜四津敏子氏が務めて以来、14年ぶりに置かれた代表代行に、今回起用された竹谷とし子氏だ。竹谷氏(55)は、創価高校・大学卒の公認会計士で東京選出の参院議員(3期)。斉藤代表が竹谷氏を代表代行に起用したことについて「代表と同格の立場で、意思決定を共有していく。これからの10年で女性の国会議員を3割にする党の目標の旗振り役になってもらいたい」と述べたように、代表代行として次期代表になる準備を開始したとも見られる。
候補の二人目は、政調会長に留任した岡本三成氏。「創価大卒業生の岡本さんも佐藤副会長の強い推しで党3役に上ってきた」ものの、「米国のゴールドマン・サックス証券に勤めた金融マンのイメージ。池田名誉会長が好んで使った『大衆の中に生まれ、大衆の中に生き、大衆の中に死んでいく』というのと印象が大きく違うので、会員からあまり支持されないかもしれない」と語る。
京大卒、外務省出身の山本香苗氏も、将来性を買われていた。しかし、参院議員を辞し、今回の衆院選に大阪16区から出馬したが落選してしまい代表後継レースからは大きく後退した。
公明党は与党入りして、自民党から政治と宗教の問題や高額献金問題などで追及されずに守られてきた。与党を離脱すれば即、それらの問題を突き付けられる恐れから、当面、「下駄の雪」として自民に着いていかざるを得ない。そのスタンスを維持しつつ、党の存在感を出していくことに苦心しよう。その一例として斉藤代表は早くも、選択的夫婦別姓制度の導入を巡り、「石破首相を通じて説得したい」と述べ、法制化に向けて自民党に働き掛ける考えを示している。