編集後記
▽カボチャの黄色い花が、私は好きだ。
ちまちました花ではなく、そのダイナミックさがいい。大地に根差したカボチャの鮮烈な黄色は、夏の青空とよくマッチする。
しかも、ダイナミックとはいえ、ヒマワリのようにいつまでも居座っていない。
過酷な夏の日差しを浴びながら、長い間、咲き続けるヒマワリも実は大した花だが、思いっきり自己主張の強い強烈な黄色ながら、夏の夕立のように、さっと寿命を終える姿が何ともいとおしい。
カボチャの葉も、夏の太陽を独り占めしようと思っているかのように、ふてぶてしく大きいが、こいつも実はなかなかのやつだ。
というのも、花の側には必ず一本の葉がすっくと立っている。
これが雨に打たれる時、花を守る。
雨に立つ乙女に、そっと傘を差し伸べる紳士のようだ。
カボチャの花は最初に雄花が咲き始め、それから雌花が咲く。その交配がなければ、子孫を残せない。
太陽を一身に浴びてデンプンをカボチャの実に送り込むのも葉っぱの役目だ。
葉は働き蜂でもあり、女王を守る戦闘蜂の役割も兼務する働き者だ。
しかも黙ったまま雨に打たれ、太陽を一身に受け、虫に陰の新天地を与えている男気がいい。
永田町にも昔、こうしたカボチャの葉っぱのような逸材がいた。(T)
▽米国と旧ソ連(現ロシア)が東西冷戦下の1987年に締結したINF条約は、射程500〜5500キロの地上発射型弾道・巡航ミサイルの製造と保有を禁じた。中国は、条約で米国が持てない中距離ミサイルを多数配備している。
その中国を加えなければ、実効性ある核軍縮の枠組みとはなり得ない。
米露は6月、中国を加えた交渉の必要性で一致した。河野太郎外相は7月、INF条約失効後は、中国を含む国連安保理常任理事国5カ国が新たな核軍縮の枠組みを
議論すべきだと提唱したが、中国は「米露の核軍縮が先だ」として、話し合いに加わることを拒んでいる。
中国は謀略にたけている。共産党が国民党との内戦に勝利したのも、日本軍と国民党を戦わせ、弱った国民党を台湾に追い出す格好で70年前の天安門での建国宣言となった。
INF条約も中国にしてみれば両雄の手を縛り、自分だけは自由にミサイル拡大に手を染めることが可能だった。
こうした中国を相手にするとき、書評にも書いたが英国の英知が役に立つ。第二次世界大戦で独と対峙した英国が考えたことは同盟づくりだった。米は野蛮で厄介な独立主義者だった。それでも英国の選択は「絶対、米を離さない」という生き残りにかけた執念だった。米のひどい仕打ちにじっと耐えながら、何があっても米英同盟を解消しないという覚悟があった。さらにフランスとの関係改善に動き、ドイツ包囲網を構築に動いたのだ。我が国に問われているのも、こうした戦略と姿勢だ。(I)